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2024.01.05

ソーシャルメディアは子どもの健康リスクになる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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多くの人が利用しているソーシャルメディア。新型コロナが流行したこともあり、その年齢はどんどん若年化し子供でもソーシャルメディアに触れる機会が多くなっています。そういったソーシャルメディアを使うと子供の身体にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に、2023年11月29日付で掲載された、ソーシャルメディアの使用の青少年への健康リスクについての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

急速に普及するソーシャルメディア

ソーシャルメディア、今回対象とされているのは主にインスタグラムやフェイスブックですが、こうした双方向の情報交流サービスなしでは、社会生活は成り立たないと言って良いほど、その普及は進み、影響力は絶大です。

予防医学のような観点で見ても、多くの企業が、ソーシャルメディアを利用した健康増進のソフトを開発し、その利用を行っています。食事を画像に撮るだけで、その内容やカロリーを即座に計算、健康的な食生活に向けて個別な指導を行ったり、歩行数や運動量などもウェアラブル端末から自動的に記録して生活改善のアドバイスも可能です。脳トレのようなソフトもあれば、認知行動療法などの手間の掛かる心理療法も、ネットで簡単にゲーム感覚で行えるソフトもあります。同じ病気の人同士で情報交換をしたり、専門家のアドバイスを受けることも、ネットを通じて簡単に出来るようになりました。

このように良いこと尽くめのようなネット社会ですが、その反面いい加減な情報や、意図的に人を騙すための情報、犯罪に結び付くような情報もネットには蔓延していて、そうした情報が瞬く間に拡散してしまうのも、ソーシャルメディアの特徴です。

それは健康情報についても同様で、非科学的な情報に振り回されて健康を害する結果になったり、ドラックなど依存性のある習慣に、関わってしまうというリスクもありそうです。特に多感な時期である10代の青少年は、そうした悪影響を受けやすいとされています。

青少年のソーシャルメディア使用と健康への関連を調査

今回の研究は健康への悪影響の懸念される行為として、アルコール、薬物の使用、喫煙、ギャンブルなどを想定し、10歳から19歳の青少年における、そうした悪影響とソーシャルメディアの使用との関連性を、これまでの主だった臨床研究のデータをまとめて解析する、メタ解析の手法で検証したものです。

トータルで73本の文献に含まれる、1431534名のデータを元に解析しています。

その結果、ソーシャルメディアをあまり使用していない人と比較して、毎日のように頻繁に使用している人では、飲酒習慣のリスクが1.48倍(95%CI:1.35から1.62)、ドラッグ使用のリスクが1.28倍(95%CI:1.05から1.56)、喫煙のリスクが1.85(95%CI:1.49から2.30)、性的逸脱行動のリスクが1.77倍(95%CI:1.48から2.12)、暴力などの反社会的行動のリスクが1.73倍(95%CI:1.44から2.06)、ギャンブル習慣のリスクが2.84倍(95%CI:2.04から3.97)、それぞれ有意に増加していました。

ただ、実際にソーシャルメディアを利用している時間と、そのリスクとの間に相関のあったデータは少なく、飲酒習慣のリスクは、ソーシャルメディアの1日2時間未満の使用習慣と比較して、2時間以上の使用で2.12倍(95%CI:1.53から2.95)の増加が認められましたが、他の健康リスクについては、そうした関係は明確ではありませんでした。

このように多くの健康リスクに結びつく行為が、ソーシャルメディアの利用と一定の関連が認められたのですが、その一方で本当にそれがソーシャルメディアによるものなのか、それともそれ以外の因子が関連しているものなのかについては、現時点で飲酒習慣以外は明確ではないようです。

利便性と健康への影響を理解して活用

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これまでの歴史を紐解いても、生活に利便性をもたらす新しい機器や習慣が、健康影響という面では諸刃の剣であったことは間違いがなく、ソーシャルメディアもそうしたものとして、その功罪を理解した上で活用する必要がありそうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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