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2024.01.04

にんじんの栄養を最大化。炒めたあとミキサーにかけて作るにんじんのポタージュ【旬野菜レシピ】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

『旬野菜図鑑』で紹介したにんじんを美味しくいただく料理を管理栄養士の前田量子さんに教えていただきました。

炒めてミキサーにかけるだけ。栄養満点にんじんポタージュ

味の濃い旬のにんじんでぜひ作って欲しいのが栄養たっぷりで素材のうまみが堪能できるシンプルなポタージュ。マイルドでありながら深みがあり、口当たりもよい一品です。今回は炒めたあとでミキサーを使うことで、より栄養を高めるレシピをお伝えします。

材料(2人分)

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にんじん 中1本(200g)
低脂肪乳 200mL
コンソメ 小さじ2
バター 10g

パセリ 少々
カレー粉 少々

主な栄養素(1人分)

エネルギー 130kcal
たんぱく質 4.9g
食物繊維 3.2g
カリウム 523mg
カルシウム 164mg
ビタミンA 676μg

作り方

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1. 鍋にバターと薄い輪切りにしたにんじんを加え弱めの中火でじっくり炒める。赤い色が濃くなったのちに透明感が出てきたら、材料がちょうど隠れるくらいのひたひたの量の水を加え、ふたをして10分ほど煮る。

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2. にんじんがやわらかくなったら、コンソメを加えてさらに3分ほど煮る。

3. 粗熱を少しとってから、牛乳と一緒にミキサーに入れ、なめらかになるまで潰す。

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4. 器に盛り付け、パセリのみじん切りとカレー粉少々を振って出来上がり。

このレシピのポイント

牛乳よりも低カロリーで飽和脂肪酸が少ない低脂肪乳を活用

このレシピでは牛乳ではなく低脂肪乳を使っています。牛乳は加工方法によって幾つかの種類があります

・生乳
・加工乳
・乳飲料

今回使用したのは加工乳の低脂肪乳。低脂肪乳は加工乳に脱脂粉乳などを加えたもののため、牛乳から脂肪分を取り除いた低脂肪牛乳より、さらにカロリーなどをおさえることが可能です。

また、低脂肪乳は牛乳よりも、血液中のコレステロールを増加させたり高血圧にしたりする飽和脂肪酸が少ないのが特徴。気になる方は低脂肪乳を上手に活用しましょう。

にんじんとカレー粉の組み合わせはフレンチの鉄板

仕上げにはカレー粉を組み合わせました。カレー粉を使うことを不思議に思われた方もいるかもしれませんが、カレーの香りの中心となるスパイスであるクミンは、フレンチでは定番で、古くから使われています。

キャロットラペなどでも、クミンやカレー粉は最後の仕上げに使います。にんじんの甘さが際立ち香りも良くなりますので、ぜひ今回のポタージュ以外にも応用してみてください。

このレシピの栄養ポイント

ポイント1. ポタージュにする前に炒めて栄養最大化

にんじんに豊富に含まれるビタミンAは、水に溶けない脂溶性の栄養素のため、油を使った料理で吸収率が高まります。

にんじんのβ-カロテンから作られるビタミンAの吸収率は、生食は20%、茹でて食べる、焼いて食べるで40%、炒めて食べると50~70%とされています。今回はバターで炒めたため、生の状態に比べ約3倍も吸収率がアップしました。

また、加熱後にミキサーで破砕することで、野菜の色の成分の吸収が飛躍的に向上することがわかっています。にんじんに含まれるオレンジ色の栄養素β-カロテンの吸収に一役買ってくれるということです。

つまり、炒めて吸収率を高めた上で、ミキサーでポタージュにすることによって、栄養価を最大化することができるのです。

ポイント2. カリウムで高血圧予防

このレシピは高血圧予防効果が期待できるカリウムが豊富です。

高血圧は生活習慣病の大きなリスク要因で、予防が重要とされています。予防の基本は減塩。厚生労働省が食塩摂取の目標値を定めており、1日あたり成人男性7.5g、成人女性6.5gとなっています。これはWHOの基準5g未満よりも高い値ですが、達成できていないのが現状です。

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。汗で排出されてしまうため、多量の汗をかくと浸透圧の調整がうまくいかず脱水症状を起こすことも。通常の健康な状態でバランスの良い食事をしていればカリウムは欠乏しません。しかし下痢・嘔吐などで大量に損失すると、浸透圧調整機能が崩れたり、食欲不振などを引き起こすこともあります。

今回のレシピは、カリウムが523mgが含まれ成人男性の1日の目標量の20%を摂ることができます。

ポイント3. カルシウムで骨を丈夫に

カルシウムは、体内に最も多く存在するミネラルで、体重の1〜2%を占めています。このうち、99%は骨や歯などの硬い組織に、残り1%は血液や筋肉、細胞に存在しています。

カルシウムは細胞の情報伝達、筋肉の収縮、神経の働きをサポートするなど大切な役割を担っています。1日の推奨量は30〜74歳の男性で750mg、女性で650mgとなっています。

しかし、日本人のカルシウム摂取量は不足傾向にあります。不足すると骨粗しょう症のリスクが高まります。特に閉経後の女性は吸収率が低くなるため、積極的に摂取してほしい栄養素です。

チーズやヨーグルト、牛乳などの乳製品、しらすや鯖缶、鮭の中骨缶などの骨ごと食べられる魚、ひじきなどの藻類、ごまやアーモンドなどの種実類、小松菜や青梗菜等の緑黄色野菜等があります。今回のレシピではカルシウムを164mgも摂ることができます。

ポイント4. 旬のみかんを添えてビタミンCをプラス

今回のレシピはたんぱく質やカルシウム、ビタミンAが豊富。この効果をさらに高める栄養素がビタミンCです。ビタミンCはカルシウムの吸収率を助けたり、ビタミンAの体内での抗酸化作用を高めたりしてくれます。

食後に、ビタミンCが豊富なみかんをいただくことで、このレシピのパワーをより高めてくれます。みかんはビタミンCの含有率が高いうえ、実が袋に入っているので、食べる直前まで酸化しません。そのため、とても効率よくビタミンCを補充できるのです。

また、みかんにはβ-クリプトキサンチンという、β-カロテンと同じ、カロテノイドに分類される栄養素が含まれています。抗酸化作用が強く老化を防ぐ栄養素で、体内にとどまる時間も長いといわれているので、冬場はにんじん料理とあわせて積極的に摂ってください。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子

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