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2024.01.04

色が濃いほど身体にいい?β-カロテン豊富なにんじんを徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

1月の旬野菜は“にんじん”です。関連記事では、にんじんを美味しくいただくレシピもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

通年手に入る定番野菜の旬は秋から冬にかけて

Adobe Stock

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鮮やかなオレンジ色が目を引くにんじんは、緑黄色野菜の代表格。にんじんは、アフガニスタン、イランの北部あたりが原産地で、日本では江戸時代末期から明治時代にかけて広まったとされています。

料理に彩りを与えるワンポイントとして使われることも多いにんじん。スーパーなどでは通年売り場に並んでいますが、本来は夏に種まきをして秋から冬に収穫され、寒い時期を旬とする野菜です。

【栄養】β-カロテンからビタミンAを作り出す

β-カロテン

β-カロテンは小腸壁でビタミンAに変わる、前駆体(ぜんくたい)と呼ばれる物質です。抗酸化力を持ち、有害な活性酸素を消去するため、老化やガンの抑制効果が期待できます。

にんじん100gにはβ-カロテン7600μgが含まれており、そのうちビタミンAの主要な成分であるレチノールの活性等量は630μgです。ビタミンAの1日の摂取推奨量は30歳から64歳の成人男性で900μg、成人女性で700μgなので、にんじん100gから必要量なビタミンAのおよそ60%以上を摂取できるとても優秀な野菜です。

β-カロテンをもとに身体の中で変換されるビタミンAは、皮膚や喉、鼻、肺、消化菅などの粘膜を正常に保つ働きをします。そのため、感染症予防や免疫力の向上に役立っています。不足すると感染症にかかりやすくなったり、夜間など暗いところで目が見えづらくなる夜盲症になりやすくなったりすることが知られています。

β-カロテンは脂溶性で水に溶けない性質で、摂りすぎると体内で蓄積して過剰症を起こしてしまうため、耐容上限量が設定されている栄養素です。しかし、β-カロテンから作られるビタミンAに関しては、過剰症は起こらないとされていますので安心して摂取してください。

効率的に吸収する方法

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂) イラスト:Adobe Stock

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂) イラスト:Adobe Stock

β-カロテンは水に溶けない脂溶性という栄養素なので、油を使って料理することで吸収率が高まります。油炒めや揚げ物にすると、β-カロテンを効率良く摂ることが可能です。

にんじんのβ-カロテンの含有量は、生で食べたときを1とすると、茹でる(焼く)とプラス15%、炒めるとプラス 60%も上がることがわかっています。適度に油を使いましょう。(2024年1月9日:内容を一部修正しました)

カリウム

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。特筆すべきはナトリウムの排出を促す作用。日本人のカリウム摂取量は不足傾向にあります。積極的に摂ってほしい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。

健康な人の場合、摂取量を増やすことによって血圧低下、脳卒中予防につながることが様々な実験や疫学調査によりわかってきています。

カリウムの1日の摂取の目安量は18歳以上の成人男性で2,500mg、成人女性で2,000mg、目標量は18歳以上の成人男性で3,000mg以上、成人女性で2,600mg以上です。にんじん100gにはカリウムが300mgも含まれています。

食物繊維

にんじんは100g中に2.8gの食物繊維が含まれています。一方でエネルギーは、同じく食物繊維が多いとされるさつまいもの5分の1と低カロリー。

食物繊維は摂取することで腹持ちが良くなり、食べすぎ防止、空腹を感じにくくなる効果も期待できます。ダイエット中の食物繊維摂取に向いている食材と覚えておきましょう。

【選び方】濃いオレンジ色が栄養豊富な証。切り口にも注目

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【美味しいにんじんの特徴】
・オレンジ色が濃く鮮やか
・茎の切り口の軸の部分が小さいもの
・軸の色が緑色のもの(春夏にんじんの場合)

にんじんがオレンジ色をしているのはβ-カロテンの色素によるものです。色による味の違いはありませんが、色が濃いほど栄養価も高い傾向にあるので、せっかくなら濃い色のものを選びましょう。色が濃くても茎の切り口が茶色く変色しているものは、収穫から時間が経って古くなっている可能性があるので、注意が必要です。春から夏にかけて出回る春夏にんじんの色は、冬のものに比べて全体的に薄く、成長から収穫までが早いため、軸が緑色のものが新鮮です。

季節によって違いがありますが、1年を通じて黒ずみや皮のしわがないもの、張りがあってみずみずしいものが好ましいもの。美味しいにんじんを選ぶ目を養いましょう。

【保存法】濡れたままにしないで保存前にしっかり拭こう

冷蔵保存する

にんじんは湿度や水気に弱く、濡れたままにしておくとそこから腐敗してしまいます。旬の時期に出回る葉つきのにんじんの場合は、まず葉を切り落としましょう。泥付きのものは泥を落とします。その後水分をよく拭き取ってから、キッチンペーパーや新聞紙等で包んでポリ袋に入れて、冷蔵庫で保存しましょう。保存期間の目安は2週間程です。

冷凍して保存する

にんじんは冷凍に不向きとされていますが、実はそれほど不向きでもありません。ただ、一切れが大きいと食感の変化が大きくなる傾向にありますので、冷凍するならば薄切り、千切りなどのほうがおすすめです。

美味しい解凍方法は?

冷凍にした時の使い勝手の良さなども考えて、冷凍実験をしてみました。にんじんは、全て同じ店で購入した同じ袋に入っていたものを使用しています。

左上から時計回りに、乱切り、斜め薄切り、千切り、輪切り

左上から時計回りに、乱切り、斜め薄切り、千切り、輪切り

4種類の切り方をしたにんじんを48時間冷凍庫に入れておきました。

48時間冷凍したもの。左上から時計回りに、乱切り、千切り、輪切り、斜め薄切り

48時間冷凍したもの。左上から時計回りに、乱切り、千切り、輪切り、斜め薄切り

色の変化など、見た目の違いは特にありませんでした。千切りや乱切りは固まってしまいほぐすのが困難になるかと予想していましたが、解凍後も扱いやすかったのが印象的でした。

流水後自然解凍

水分の流出がいちばん大きく、しゃきしゃき感が出ました。特に乱切りは加熱なしでは食卓に出すのが難しい印象を受けました。千切りはドレッシングの味染みがよく、マヨネーズあえなどに向いていると考えられます。

茹でる

流水後自然解凍に次いで水分の流出が大きく、特に乱切りで目立ちました。もっとも、茹でる時間が長くなると違和感は少なくなっていきました。凍ったままお味噌汁や炒めものに入れるのに適しています。

レンジ加熱

今回試した中ではいちばん甘味を強く感じられ、生での加熱調理に近い印象でした。煮物やシチューなど、電子レンジで加熱調理するものであれば、冷凍であっても遜色ありません。

【豆知識】にんじんは品種によって色も大きさも栄養素も違うって知ってる?

記事画像

日本で作られているにんじんには、大きく分けて2種類あります。西洋にんじんと東洋にんじんです。私たちがよく目にするのは、日本で人気がある西洋にんじんの五寸にんじん。それ以外にも、お正月に出回る真っ赤な金時にんじんや、ミニにんじんなど、色や形、味わいが異なります。

五寸にんじんは、カロテンが多いのが特徴です。普段から使われているなじみ深さもあり、食べ慣れている方がいちばん多いのではないでしょうか。くせがなくサラダや炒め物、煮物、揚げ物などどんな調理でも使いやすい万能にんじんです。

お正月のおせち料理用に出回り、京にんじんともいわれているのが金時にんじん。細く、鮮やかな赤い色が特徴で、この赤みの正体はリコピンです。強い甘味が特徴で、おせちの煮物やお雑煮、紅白なますにも使われます。また、炒め物、揚げ物など普段の料理にも向いています。

ベビーキャロットで親しまれているミニにんじんは、10cmほどの小型種。見た目のかわいさから、そのままサラダや肉や魚料理の付け合わせなどによく使われています。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

『からだにいい食事と栄養の教科書』本多京子・監修 永岡書店

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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