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2023.09.19

血圧を下げるのに最も有効なトレーニングとは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ジョギング、筋トレ、水泳……。いろいろな種類の運動がありますが、血圧を下げるのに一番効果のあるのはどんなトレーニングでしょうか。

今回ご紹介するのは、British Journal of Sports Medicine誌に、2023年掲載された、血圧降下に最も有効な運動法を検証したメタ解析のレビューです。

▼石原先生のブログはこちら

血圧を下げるにはどんなトレーニングが有効?

高血圧などの生活習慣病の予防や治療には、適切な運動が有効であると言われています。

しかし、それではどのような運動をすれば良いのでしょうか?よく言われているのは、ジョギングなどの有酸素運動です。また意識的に運動をしなくても、1日5000歩以上歩くことで、心血管疾患リスクの低下など、生活習慣病の予防効果があるとする報告もあります。

ただ、生活習慣病と言っても様々です。高血圧に対する運動療法と、糖尿病に対する運動療法、高コレステロール血症に対する運動療法は、果たして同じで良いのでしょうか?

こうした点についての科学的検証というのは、実はあまり行われていません。

さまざまな運動法と血圧の降下作用の関係を検証

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今回の研究は、これまでの主だった臨床試験結果をまとめて解析したメタ解析ですが、血圧の降下作用のみに力点を置いて、個々のトレーニング法の有効性を比較したものです。

これまでの270の介入試験に含まれる、トータル15827名の臨床データをまとめて解析したところ、高強度インターバルトレーニングや、有酸素運動などよりも、アイソメトリックトレーニングが、最も血圧低下作用が強い、という結果が得られました。

アイソメトリックトレーニングというのは、たとえば両手の掌を胸の正面で合わせて、両側から力を加えて10秒くらい維持する、というような運動を各筋肉で繰り返すもので、関節を動かさずに筋肉を収縮させる、というトレーニングの方法です。

従来は高血圧の運動療法には、ジョギングのような有酸素運動が良いとされ、推奨されていましたから、その常識とは違った結果となっていました。

最も効果が高いのはアイソメトリックトレーニング

今回のデータはメタ解析ですから、また単独の研究結果で別個に確認される必要がありますが、今後病気の予防や治療のための運動療法については、再検証され、これまでの常識が覆る、ということがあるかも知れません。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36