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2023.12.08

カロリー制限と食事時間制限。2型糖尿病患者の減量に効くのは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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2型糖尿病患者の食事療法と言えば、摂取カロリーを減らしたカロリー制限食が一般的でしたが、最近は食事時間を制限した時間制限食も有効だと言われるようになりました。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に、2023年10月27日付で掲載された、2型糖尿病の患者さんにおける食事制限の方法についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

2型糖尿病患者にはどんな食事療法がいいのか

過食や運動不足がその経過に大きく影響する、2型糖尿病においては、適切な食事療法がそのコントロールに重要と考えられています。

私が大学や医局で学んだ食事療法は、全体のカロリーを制限しつつ、栄養素を過不足なく摂り、毎日3食をきちんと食べるという方法です。そうした食事療法の有効性は確認されていますが、実際には個々の患者さんがそれを実践することは、それほど容易いことではありません。食事内容や量などを詳細に毎日記録し、それを元に指導を重ねる必要があるからです。

近年特にカロリー制限は指導せず、食事時間を昼間の6から10時間くらいのみに制限することにより、1日の摂取カロリーは200から500カロリー抑制され、体重減少効果のあることが報告され、注目を集めています。

これは元々民間のダイエット法から、始まった試みだと思いますが、食事の時間を制限するだけで、特に食事内容には制限を加えないので、非常に続けやすいという利点があります。

これまでに成人糖尿病患者を対象として、時間制限食の有効性を検証した臨床研究は2つあり、この方法によって体重は1から4%HbA1cが1.5%低下したという結果が得られています。
ただ、研究はいずれも3から12週間という比較的短期間のもので、通常の食事指導とは比較されていない、という限界が指摘されています。

カロリー制限と食事時間制限の減量効果を検証

そこで今回の研究では、アメリカの単独施設において、年齢が18から80歳で糖尿病があり、BMIが30から50という肥満の患者、トータル75名をくじ引きで3つの群に分けると、それまでの生活をそのまま続けるコントロール群、食事量をカロリーで25%制限するカロリー制限指導群、カロリー制限はせず食事時間を午後0時から午後8時の、8時間に制限する時間制限食群の3群に分けて、その経過を半年間観察しています。

その結果、6か月後における摂取カロリーは、時間制限食では平均313キロカロリー低下し、カロリー制限指導群では197キロカロリー低下していましたが、コントロール群では16キロカロリーの低下に留まっていました。

6か月後における体重は、時間制限食では-3.56キログラム(95%CI:-5.92から-1.20)、コントロール群と比較して有意に低下が認められましたが、カロリー制限指導群では有意な低下は確認されませんでした。

HbA1cの低下は、時間制限食では-0.91%(95%CI:-1.61から-0.20)、カロリー制限指導群では-0.94%(95%CI:-1.59から-0.30)と、コントロール群と比較して、どちらも有意に低下していました。

カロリー制限よりも時間制限のみの方が痩せる

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今回の検証では、カロリー制限よりもむしろ時間制限のみの方が、体重減少効果は高く、血糖コントロールの改善効果も同等に認められました。

これはカロリー制限の指導を行っても、実際には患者さんはそれほど指導を継続的に守ることは出来ず、むしろ食事の時間のみを制限した方が、結果としてカロリー制限に繋がっている、という点が影響しているものと考えられます。

今後介入試験など、より厳密な方法による検証を行うことで、糖尿病の一般臨床における食事指導はどうあるべきなのか、その具体的な改善に繋がることを期待したいと思います。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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