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2019.09.19

元気なのに糖尿病?見逃してはいけない健康診断の重要性

kencom編集部

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何年か前から血糖値が高いとはいわれていたけど、ついに糖尿病の精密検査がきた……。
身体は元気なのになぜだ!?

糖尿病には幼少期に発症することが多い1型糖尿病と、中高年になってから発症することの多い2型糖尿病という2つのタイプがあり、いわゆる生活習慣病としてあげられるのが2型糖尿病です。
糖尿病患者全体のうち、約95%がこの2型糖尿病だといわれています。

現在の日本では約2000万人の方が、糖尿病もしくは糖尿病予備軍だと言われていますが、なぜこれほどまでに多くの人が罹患してしまうのでしょうか。

今回、kencom監修医である石原藤樹先生に、自覚症状は?治るのか?など、糖尿病にまつわる疑問を聞きました。

糖尿病のサインはあるのか?

初期段階では自覚症状なし

病気であるならば早い段階で身体になんらかの異変が起こると感じられるかもしれません。
しかし、糖尿病はゆっくりと進行していく性質上、自覚症状が現れるまでに長い年月がかかると言われています。

(石原先生)「糖尿病の代表的な自覚症状は、多尿、口渇、多飲といわれています。糖尿病になると血糖をコントロールするインスリンというホルモンが不足したり、その働きが悪くなるため、高血糖状態が続きます。身体は尿と一緒に糖を排出するので尿の量が増えます。尿は身体の水分を使うため、すぐに喉が乾き、脱水を防ぐために水を沢山飲むようになるのです。

他にも尿から甘い匂いがするようになった、泡がでるようになったなどとありますが、これらの自覚症状は糖尿病の状態がかなり悪くなってから生じます。

つまり、初期段階では自覚症状はありません。だからこそ、予防のためには健康診断や特定健診が重要になるのです」。

比較的症状の進行が遅いとされる糖尿病ですが、特に怖いのは副次的におこる合併症にあります。

糖尿病の怖さは合併症

血管の異常から様々な病気を引き起こす

健康診断でもアラートが上がる糖尿病において、怖いのは病気そのものだけでなく合併症に注意が必要だといいます。

(石原先生)「糖尿病に罹患された方がどんな病気が亡くなられたのかが調査された結果、心筋梗塞や脳卒中などの血管の病気が多いことが分かっています。糖尿病では全身の血管が障害され、結果として様々な病気を引き起こしてしまうのです。糖尿病で起こる血管の病気には、昔から三大合併症と呼ばれている、比較的小さな血管の合併症と、動脈硬化による大きな血管の合併症があります。

【糖尿病の三大合併症】
・糖尿病網膜症……視力の低下、失明のリスクがある
・糖尿病神経症……手足の感覚が低下し、刺激を感じにくくなる。ちょっとした怪我によって足が壊疽することも
・糖尿病腎症……腎機能が低下して血液中の毒素が腎臓で濾過できなくなる。進行すると人工透析が必要になることも

これらは、傷つきやすい小さな血管がダメージを受けることで起こる病気です。中には合併症の症状から糖尿病が発覚する方もいらっしゃいます。
三大合併症はQOLを著しく下げるだけなく、完治することがありません。健康寿命の観点から見ても、早期発見・早期予防が重要なのは間違いありません。
また、最近注目されているのは、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による大きな血管の合併症です。糖尿病は動脈硬化を強力に進行させる原因になるのです」。

こうした病気の他にもがん、感染症、歯周病、認知症など、様々な病気を引き起こすとも言われています。
非常に怖い糖尿病ですが、どんな人がなりやすいのでしょうか。

※糖尿病の三大合併症については以下の記事でも詳しく紹介しています。

日本に多いのは普通体型での糖尿病

「太ってないから大丈夫」というわけではない

甘いものばかり食べていたり、肥満気味の人が糖尿病になるかというと、最近の傾向では少し違うようです。日本では普通体型の人が増えていると石原先生はいいます。

(石原先生)「糖尿病の初期症状は太りやすくなるため、特定健診(通称:メタボ検診)にもあるように体重や腹囲は検査項目のひとつです。世界的には肥満体型の方が糖尿病を発症している傾向にありますが、日本では痩せ型の方も糖尿病になります。痩せ型の人が発症する場合は、20〜30代でも発症する場合があり、インスリンを出しにくいなどの体質が影響している可能性があると言われています。

前述した通り糖尿病の悪化は数年〜10年ぐらいかけて進んでいきます。もし若いうちから、健康診断で血糖値やHbA1cの値にアラートが出るようであれば、再検査を受診しましょう。若いからまだ平気だ、と、たかをくくって放置するのはあまりいい選択ではありません」。

初期の高血糖状態や糖尿病であれば、生活習慣によって改善が望めます。
どのようなアクションが適切なのか、基本的な考え方をお伝えしていきます。

予防・改善の鉄則は生活習慣

食生活の改善と運動、体重コントロールが鍵

生活習慣の改善は、食事・運動に加えて、肥満気味の方は体重コントロールが予防の鍵となります。
偏りのある食生活を送っている場合はバランスを見直し、運動習慣の無い方はウォーキングやストレッチなどの続けやすい運動を生活に取り入れていきましょう。

(石原先生)「若い方で糖尿病の可能性がある場合は、偏った食生活に加えて糖分を多く含むペットボトル飲料などにも注意しましょう。『ペットボトル症候群』と呼ばれ、毎日甘いペットボトル飲料を飲んでいると、血糖値が上昇してのどが渇くので、またペットボトル飲料を飲んで、更に血糖が上昇する、という悪循環になるのです。

もし職場検診等で、生活指導を受けられるようであればぜひ受けてみましょう。

具体的なアドバイスが受けられる上に、自己負担がかからないので生活改善のチャンスとポジティブに捉えられたらいいですね。
改善の具合によっては、医療介入ではなく、自己管理に切り替わる方もいらっしゃいます。

一度かかると一生付き合っていく病気なので、目を背けず身体を大切にしてくださいね」。

現状完治する薬はなし。毎年の健康診断結果とじっくり向き合って

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なぜこんなにも糖尿病が増えているのかが見えてきたでしょうか。
自覚症状のなさと進行の遅さがこの病気の厄介なところです。

日本だけでなく、世界的にも増えており、2014年時点で4億人もの方が糖尿病であるという報告もあります。
運動習慣をいきなり始めるのも難しく、ヘルシーな食生活は味気ないため難易度が高いこともあるかと思います。

まずは今日から少し歩いてみたり、脂っこい食事をさけてみたり、間食を減らしたり、身近にできることからコツコツとトライしてみてはいかがでしょうか。

(取材・執筆/kencom編集部)

参考文献

監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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