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2018.12.05

盲腸が再発しにくい治療法とは【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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「盲腸」と呼ばれることも多い急性虫垂炎。罹ってしまったら即手術というイメージの方も多いと思いますが、最近は薬で治療することも多いのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

本日ご紹介するのは、2018年のJAMA誌に掲載された、急性虫垂炎の初期治療についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

急性虫垂炎(盲腸)の初期治療は、手術か抗菌剤の二択

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急性虫垂炎(盲腸)の初期治療は、以前は手術治療が第一選択でしたが、抗菌剤の進歩と高解像度のCT検査などによる診断の進歩により、抗菌剤による治療も第一選択として検討されるようになりました。

急性虫垂炎の合併症で最も問題となるのは、炎症部位の穿孔です。要するに虫垂に穴が開いて腹膜炎になることです。

画像診断の進歩がある前には、診察や検査をしても、穿孔や腹膜炎が起こっていないかどうかを、100%判断することは困難でした。そのために疑いがあれば、手術が選択されることが多かったのです。

ただ、CT検査などでほぼ確実に、穿孔の有無が診断されることを前提にすると、穿孔や腹膜炎のない単純性急性虫垂炎は、抗菌剤で様子を見る方針でも、大きな問題はなさそうです。

しかし、本当にそうであるかどうかは、精度の高い臨床試験において検証する必要があります。

抗菌剤での治療でも、72%の方は1年間再発なし

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上記文献の著者らはフィンランドにおいて、フィンランドにおいて、18歳から60歳の単純性急性虫垂炎の患者さん、トータル530名を、くじ引きで2つのグループに分け、一方は虫垂切除術を行ない、もう一方は抗生物質による治療を行なって、その後1年間の経過観察を行なっています。
抗生物質による治療で、虫垂炎の再燃が認められた場合には、もう一度抗生物質を使用するのではなく、原則として手術を行なうという方針になっています。

その結果、抗生物質が選択された患者さんのうち、72.7%では1年の観察期間において、手術が必要となることはありませんでした。
この結果は2015年のJAMA誌に論文化されています。(※2)

ただ、これはあくまで1年間のみの結果で、より長期の予後についてはまだ明らかではありません。

ただし5年の経過観察では、抗菌剤使用群の4割弱が再発

今回のデータはより長期の5年の観察期間の、抗菌剤使用群の予後を検証したものですが、その間に虫垂炎の再発の事例は、最初の登録の39.1%において認められました。

この結果をどう考えるかは微妙なところで、単純性急性虫垂炎の診断が確定的なものであれば、抗菌剤の治療によりそのうちの6割は、5年間再発なく経過するのですから、抗菌剤を第一選択とする判断は概ね妥当なものだ、というようにも言えます。
その一方で4割が再発していることを考えると、患者さんによっては手術の方が良い、という選択があっても良いようにも思います。

治療の際は正しい知識を持って選択を

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いずれにしても、こうしたデータが得られた意義は大きく、今後の急性虫垂炎の治療においては、こうした知見を元にして、個々の患者さんにおいて検討し、患者さんにも説明した上で、治療を選択する必要があると思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36