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2023.01.27

低糖質ダイエットは2型糖尿病のコントロールに役立つか【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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最近ダイエットの主流となっている糖質制限食ですが、糖尿病のコントロールにも役立つのでしょうか。

今回ご紹介するのは、Annals of Internal Medicine誌に、2022年12月13日ウェブ掲載された、低糖質ダイエットの2型糖尿病の患者さんへの有効性を検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

糖尿病に糖質制限は有効か

僕が大学から研修医の頃に学んだ常識としては、糖尿病食はカロリーの50〜60%は糖質にする、というのが教科書的な記載でした。総カロリーを調整する時も、主に糖質の量で調整を行うのです。

それがカロリーを変えずに糖質のみを制限する、いわゆる糖質制限ダイエットの登場によって、栄養指導のトレンドは大きく変わりました。

ただ、糖尿病のコントロールにおいて、通常の糖質比率と比較して、低糖質ダイエットにどのような有効性があるのかについては、それほど精度の高いデータがあるという訳ではありません。

2型糖尿病患者の低糖質ダイエットの有効性を調査

今回の研究はデンマークにおいて、165名の2型糖尿病患者をくじ引きで2つの群に分けると、一方は糖質を総カロリーの20%未満に制限して、50〜60%を脂質にする、というかなり厳しい低糖質ダイエットを指導し、もう一方は糖質は総カロリーの50〜60%にして、脂質を20〜30%に制限するという低脂質ダイエットを指導して、半年間その方針を継続しています。

両群とも特にカロリーの制限は指示されていませんが。実際の患者さんの摂取カロリーは概ね1600〜1800キロカロリーとなっていて、それなりにカロリーは自己的に制限されていることを示しています。

その結果、6か月の介入により、高糖質低脂質ダイエットと比較して、低糖質高脂質ダイエットにより、HbA1cは-0.59%(95%CI: -0.87から-0.30)低下し、体重は-3.8キロ(95%CI: -6.2から-1.4)低下していました。

そして、介入終了後3か月での検証では、両者のダイエット群に有意な差はありませんでした。

低糖質食は従来の食事療法よりも優れている

このように2型糖尿病の血糖コントロールや体重管理において、従来の食事療法よりも低糖質ダイエットが優れていることが、比較的長期の臨床試験で確認された意義は大きく、今後のより大規模でより長期の検証にも期待したいと思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36