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2023.11.20

コレステロール値が異常だと認知症リスクがあがる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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血液中のコレステロールの値が異常だとさまざまな病気のリスクにつながりますが、どうやら認知症にも関連がありそうです。

今回ご紹介するのは、Neurology誌に2023年10月4日付で掲載された、血液中のコレステロール値と認知症リスクとの、関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

コレステロール値と認知症リスクの関係は

心血管疾患や高血圧、糖尿病が、その後の認知症リスクと関連していることは、多くの精度の高い疫学データにおいて、立証されている事項です。

血液のLDLコレステロールの高値や、HDLコレステロールの低値は、動脈硬化性疾患のリスクと直結している検査値なので、その観点からはそうしたコレステロールの異常値と、その後の認知症リスクとも関連があることが想定されます。

しかし、実際には他のリスク因子との関連と比較して、コレステロールの異常値と認知症との関連については、一定の関連があったとするデータがある一方で、無関係であるとするデータもあり、その関連はそれほど明確とは言えません。

HDLコレステロール値が異常だと認知症リスクが増加

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今回の研究はアメリカの大手健康保険会社である、カイザー・パーマネント社の医療データを活用して、55歳以上の184367名のコレステロール値を複数回測定し、その後の認知症の発症との関連を検証しています。

その結果、俗に善玉コレステロールと言われるHDLコレステロール値が、平均的である場合と比較して、65mg/dLを超える最も高い群では、その後のアルツハイマー型認知症のリスクが、15%(95%CI:1.11から1.20)、11から41mg/dLと最も低い群では、7%(95%CI:1.03から1.11)、それぞれ有意に増加していました。

一方でLDLコレステロールと認知症との関連においては、明確な関連性は認められませんでした。

コレステロールと認知症には複雑な関係がありそう

このように、今回の大規模な疫学データにおいては、LDLコレステロールとアルツハイマー型認知症リスクとの間には、明確な関連性が認められず、HDLコレステロールについては、それが高値でも低値でも認知症のリスクになり得るという、かなり意外な結果が得られました。

これが何を意味しているのかについては、今後検証が必要ですが、コレステロールと認知症との関連は、それほど単純なものではないと、そう考えておいた方が良いようです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
© DeSC Healthcare,Inc.

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