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2019.07.03

砂糖を控えめにした場合の健康効果とは【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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ダイエットのために甘いものを我慢している方も多いはず。では、砂糖を控えると、どれくらいの健康効果があるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、イギリスの砂糖減量政策の健康効果を検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

肥満の多い国、イギリス

イギリスはヨーロッパの中では肥満の多い国として知られています。
特に小児の肥満が深刻で、4から5歳の年齢層の10%、11から12歳の年齢層の20%が肥満児である、というデータがあります。

この事態への対策として、2016年にイギリス政府は、2020年までに砂糖を多く含む食品の砂糖の含有量を、2割削減するという方針を打ち出しました。
今回の検証はこの政策が着実に実行に移された場合に、どの程度の健康上のメリットが得られるかを計算したものです。

食品の砂糖含有量を減らすとどうなるか

肥満率が減少し、多くの生活習慣病が予防できる可能性が

それによると、現状流通しているお菓子やシリアルジュースなどに含まれる、砂糖の量が20%削減されると、4歳から10歳の年齢層においては、1日の摂取カロリーは平均で25キロカロリー減少し、11から18歳においても25キロカロリー、大人においては19キロカロリーが削減されます。

これにより、4から10歳における肥満の比率は5.5%、11から18歳における肥満の比率は2.2%、大人でも5.5%減少します。

そして結果として10年間で、154550人の糖尿病と、3500人の心血管疾患、5800人の大腸癌の発症が、予防される計算となるのです。

砂糖減量政策にどれだけ効果があるかに期待

これはあくまで推測に過ぎませんが、報道でも取り上げられた「砂糖税」のようなものを含めて、イギリスの砂糖減量政策は本気度の高いもので、今後の進捗と実際の効果が、報告されることを待ちたいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36