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2022.02.26

日本でも報告が!?ヨーロッパで流行中のオミクロン株BA.2変異の特徴【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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日本で今流行しているオミクロン株はBA.1という亜種ですが、ヨーロッパでは別の変異であるBA.2という亜種が流行中なのだそう。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、査読前の論文を公開している、medRxivに2022年1月30日公開された短報ですが、新型コロナ、オミクロン株の、BA.1とBA.2 という変異の特徴を比較したものです。

▼石原先生のブログはこちら

ついに日本でも報告が出始めた、変異種BA.2とは?

オミクロン株の流行が続いていますが、現行日本で流行しているBA.1という亜種以外に、別個の変異を持つBA.2という亜種がヨーロッパなどで流行しており、その亜種が日本でも報告されるようになって、注目を集めています。

クリニックが提携しているRT-PCR検査機関でも、ウイルス量の多い陽性検体ではゲノム解析を行っています。

最初にスクリーニング検査として、デルタ株に特徴的な変異の有無のみが確認され、その後ゲノム解析でタイプが同定されるという流れです。と言っても、現状デルタ株のスクリーニング陽性例は、1月初旬の1例のみでしたから、あまりこのスクリーニングに意味があるとは思えません。

さて、ゲノム解析は2週間以内に届く、という予定なのですが、現状はそれが遅れに遅れていて、結果が届くまでには1か月くらいが掛かっています。現状判明している中では、今年の検体ではデルタ株が1例で、それ以外は全てオミクロン株のBA.1という結果でした。

ステルスオミクロン、という物騒な呼称がありますが、これは欧米のオミクロン株のスクリーニングで陽性とされないため、スクリーニングを擦り抜ける可能性がある、という点からのネーミングで、日本ではそもそもオミクロン株のスクリーニング自体がそれほど行われていないのに「全ての感染はオミクロン株として対応する」という行政の通達のみが活きているという奇怪な状態なので、あまり日本の臨床では意味のない名称です。

BA.2亜種は感染力が強く、ワクチンの予防効果は弱い

下記文献ではオランダの解析データが報告されています。

これは2021年12月下旬から2022年1月初旬のものですが、8541名の家族内感染の1例目の経過を追い、そのうちの2122例がBA.2由来、1から7日の経過観察中に17945例の家族内二次感染事例が疑われ、そのうちの5702例が確定事例とされています。

ここから二次感染率を算出すると、BA.1が29%に対してBA.2は39%となっています。

BA.2はBA.1と比較して、ワクチン未接種者への感染感受性が2.19倍(95%CI:1.58から3.04)、ワクチン2回接種者への感染時感受性が2.45倍(95%CI:1.77から3.40)、ブースター接種完了者への感染感受性も2.99倍(95%CI:2.11から4.24)と、それぞれ有意に増加していました。

ワクチン未接種の感染者からの家庭内二次感染リスクも、BA.2はBA.1と比較して、2.62倍(95%CI:1.96から3.52)有意に増加していました。

このように、BA.2亜種はBA.1と比較して、感染力は強くワクチン接種による予防効果も弱い、ということが推測されました。ただ、ワクチン接種を2回以上施行して感染したケースでは、そこからの感染拡大は従来亜種と同等でした。

日本での検査が進むことに期待

BA.2については、まだ査読前のデータくらいしか情報はなく、日本での検査の遅れは腹立たしくは感じますが、その性質についてはまだ不明の点が多いので、慎重に経過をみたいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36