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2023.11.13

肉を食べなければ消化器の癌を防げるのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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赤身肉や加工肉をたくさん摂ると胃癌や大腸癌のリスクが高まると言われています。では逆に、肉を食べないベジタリアンの食生活を送れば、癌は予防できるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、European Journal of Gastroenterology誌に、2023年9月18日付で掲載された、消化器癌と食事との関連についてのレビューです。

▼石原先生のブログはこちら

肉を食べないことが癌の予防につながる?

胃癌や大腸癌などの消化管由来の癌は、食生活との関連が強いことで知られています。

特に関連が強いとされているのは、赤身の肉やソーセージなどの加工肉の摂取量で、こうした食品を多く摂ることが、胃癌や大腸癌のリスクを高めることは、多くの疫学データで確認されています。

それでは、通常に肉を食べる生活をしている人と比較して、ベジタリアンのように肉を一切摂らないと、どの程度胃癌や大腸癌の予防に繋がるのでしょうか?

ベジタリアンの癌リスクを検証

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今回のメタ解析では、そうした肉を一切摂らないという食事が、消化管由来の癌のリスクに与える影響を、これまでの主だった臨床データをまとめて解析する手法で、検証しています。

ベジタリアンダイエットにも、色々な制限の種類がありますが、今回の研究では、肉とその加工品のみを摂らない食事を、その対象としています。

これまでの8つの臨床研究に含まれる、686691人の臨床データをまとめて解析し、他の癌リスクに繋がる喫煙、飲酒などの因子を補正した結果、肉を一切摂らない食生活は、普通に肉を食べる生活と比較して、消化管由来の癌のリスクを23%(95%CI:0.65から0.90)、有意に低下させていました。このリスク低下は胃癌で最も顕著で、59%(95%CI:0.28から0.61)のリスク低下に結び付き、大腸癌でも15%(95%CI:0.76から0.95)の有意なリスク低下を示していました。

このリスク低下には、興味深いことに性差と地域差とがあり、男性では顕著に見られた一方、女性のみでは有意な差はなく、アジアと北米のデータでは認められた一方で、ヨーロッパでのデータでは有意な差は検出されませんでした。

癌リスクは下がるが、その効果には性差や地域差がある

このように、肉食は消化管由来の癌、特に胃癌との関連が深く、その制限はリスク低下に結び付く可能性があります。

ただ、その効果には性差は地域差があり、今後どのような因子がその違いを生んでいるのが、より詳細な検証が必要と考えられます。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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