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2020.10.07

罹患率2位!早期なら治癒率は90%以上の胃がんを知る【胃がん・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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日本では肺がんに次いで罹る人が多いのが「胃がん」です。しかし、日本は世界的にみても手術技術が優れていることに加え、検査技術が目覚ましい進歩をとげていることから治癒率が大幅にアップしており、「胃がんは、早期で発見できれば9割以上の方が治る時代」になったと言われています。

早期で発見するために…、そして、そもそも胃がんにならないために私たちが出来ることはあるのでしょうか?
胃がんの基礎知識を、国立がん研究センター東病院・消化管内科の設楽紘平医長に聞きました。

設楽 紘平(したら・こうへい)先生

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国立がん研究センター東病院消化管内科医長 同センター先端医療開発センター新薬臨床開発分野併任
2002年東北大学医学部卒業。2002年より亀田総合病院、三沢市立三沢病院、愛知県がんセンター中央病院を経て現職。
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医。日本内科学会 認定内科医。

胃がんを知って正しく検査・治療しよう

罹患率第2位!胃がんとは?

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(人口動態統計)及び(全国がん登録)を元に図化

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(人口動態統計)及び(全国がん登録)を元に図化

日本人の罹るがんで二番目に多い胃がんは、中高年以上に発症することが多く、特に40代後半から急増します。罹患者数、死亡者数は共に男性の方が多いのが特徴です。(男女比は、男性:女性=2:1)

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胃がんはまず胃壁の粘膜に発生します。進行するにつれて胃壁の中に入り込み、さらに深部へ進行すると、大腸や膵臓などの臓器にも及びます。
胃がんの進行度は、がん浸潤(広がり)の深さや大きさ、転移の有無などで判定されますが、がんが粘膜や粘膜下層にとどまっているものを「早期がん」、粘膜下層を超えて深く達している場合を「進行がん」と言います。
一般的に、がんが粘膜にできてから、粘膜下層に到るまでは2〜3年かかると言われています。早期の胃がんの場合、自覚症状はほとんどありません。

早期に発見できれば9割以上が完治!

出典:全国がんセンター協議会・生存率共同調査(2007〜2009年診断症例、2018年集計分)を図化

出典:全国がんセンター協議会・生存率共同調査(2007〜2009年診断症例、2018年集計分)を図化

罹患率の高い胃がんですが、日本はX線の検査や内視鏡検査の診断技術が目覚ましい進歩を遂げていることから、検診によって早期で発見されることが多いため(検診の6割~7割は早期がんで見つかる)、治療により90%を超える方が完治しています。

残りの方は進行した状態で見つかりますが、進行がんであっても手術を受ければ6割以上は完治しています。早期がんから進行がんに進むには2〜3年程度かかるため、毎年検診を受けていれば、それだけ早期にがんを発見できる可能性が高くなるのです。

胃がんの原因は長期の炎症

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胃がんの発生の道筋はいくつもありますが、一つ言えるのは「慢性胃炎を患っている粘膜が、がん化しやすい」ということです。
長く炎症が続いていると細胞が傷つきやすく、変化しやすいからです。したがって、「胃がんの危険因子」=「慢性胃炎を引き起こす原因」と考えられるため、例えば喫煙や辛い物などの刺激物、塩分の取りすぎなどが複合的なリスクになります。

ピロリ菌と胃がんの関係性

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なかでも近年、胃がんのリスク因子として注目を浴びているのは、「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」という細菌。ピロリ菌は、幼児期に家庭内で感染することが多く、日本の場合、衛生環境が十分に整っていなかった時代に生まれた60歳以上の人の約7割がピロリ菌に感染していると見られています。ピロリ菌が胃の中に生息していると、胃炎などの病気を引き起こし、胃がんの発生に繋がるのでは?と盛んに研究がされています。

しかし、ピロリ菌に感染しているからといって誰もが胃がんになるわけではありません。ピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べてがんになるリスクが5倍になるという研究結果もありますが、実際にはピロリ菌感染者のなかで胃がんになる人は、1割にも満たないとされています。

早期で見つけるために欠かせない年1回の検診では何を見る?

検診での胃がん検査はどんなもの?

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早期で胃がんを見つけるために欠かせない胃がん検診には「X線検査」と「内視鏡検査」の2種類があります。
以前までの自治体の胃がん検診は「40歳以上の男女は年に1回のX腺検査」が一般的でした。しかし、50歳以上から胃がん患者が増加傾向であることから、2016年からは「50歳以上の男女は2年に1回内視鏡検査」も加わっています。

ただ、自治体などの検査では効率よく胃がん検診を進めるため50歳以上とされていますが、胃がんは30〜40代の方にも発生します。何か症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

それでは以下でそれぞれの検査方法について説明します。

X線検査(バリウム検査)

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胃のX線検査は、バリウム(胃部造影剤)を飲んだ後、検査台の上で身体の向きを上下左右に回転させて、体外からX線を当てて胃の粘膜の状態をフィルムに撮影します。バリウムはX線を通さないので、胃にぴったりくっついたバリウムの形状を見れば、ちょっとした窪みや、しわ、ヒダといった胃の粘膜の細かい状態までチェックできます。また、バリウムが食道や胃を流れる動きは、実際に食事中に食べ物が体内を通る動きと同じなので、上部消化管内が狭くなっていないかどうかの異常も確認することができます。

ただ、この検査では胃潰瘍、ポリープ、胃線などの良性の病気とがんを識別できない場合もあり、がんでなくても「要精密検査」と判断されることがあります。
内視鏡検査が必要となった人の多くは良性の病気で、実際にがんという診断が確定されるのはわずかなので、心配しすぎず精密検査に臨みましょう。

内視鏡検査(胃カメラ検査)

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内視鏡検査は胃カメラを口か鼻から通して直接胃の中を観察する検査で、小さな病変を見つけられるため、早期がんの発見が得意です。検査自体は10~15分ほどで終了しますが、苦痛を和らげるために喉の局所麻酔剤を使用します。また、場合によっては鎮静剤を使うことがあります。

ただ、内視鏡検査が必要と言われていても、5〜6人に1人ぐらいは検査を受けていないという報告もあります。
胃カメラの小型化や検査技術の進歩によって、痛みや苦痛は想像するよりはるかに小さいものです。早期発見のためにも怖がらずしっかりと検査を受けましょう!

治療方針を決めるための検査

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X線検査や内視鏡検査で胃がんが見つかった場合は、胃がんがどんな状態なのかを詳しく調べる必要があります。その際の主な検査としては、病変部を拡大して観察できる精密な内視鏡検査やCT検査、病変の一部を切り取って調べる「生検」などがあります。それらの検査を行うことで、がんの種類や進行度合い、周囲のリンパ節への転移や他の臓器への転移などを確認して治療方針を決めていきます。

最新治療を詳しく後編で!

ここまでは胃がんの基本的な仕組みと検査法を解説してきました。
後編では世界中で注目を浴びる最新胃がん治療法と、胃がんのリスクを下げる方法などを中心にお伝えします。

■胃がんの最新治療法と予防方法はこちらから

参考文献

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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