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2023.09.05

脂肪細胞を分解する働きを持つサイトカインIL-15ってなに?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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運動すると脂肪が分解することはよく知られていますが、どのようなメカニズムで分解されていくかについては不明な点も多いのだとか。

今回ご紹介するのは、Am J Physiol Endocrinol Metab誌に、2015年4月28日付で掲載された、IL-15(インターロイキン15)という興味深いサイトカインについての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

脂肪細胞に影響を与えるサイトカイン

運動に脂肪を分解させる効果のあることは、運動の健康効果としてほぼ確立されている事項ですが、そのメカニズムにはまだ不明の点が残っています。

サイトカインというのは、細胞から分泌される生理活性物質の総称ですが、運動することで骨格筋が収縮することにより、骨格筋の細胞から複数のサイトカインが分泌され、それが血液を介してホルモンのように運ばれると、脂肪細胞などに影響を与えることが、最近の研究により明らかとなっています。

IL-15が持つのは脂肪細胞を分解する働き

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今回の文献において対象となっているのは、そのうちのIL-15(インターロイキン15)というサイトカインの働きです。

IL-15は脂肪細胞を分解する働きを持つサイトカインです。

このサイトカインは骨格筋細胞から分泌され、血液を介して脂肪組織に働き、脂肪を分解する作用があります。その一方でこのサイトカインは皮下の脂肪組織からも分泌され、その局所でも脂肪を分解する働きを持つことが、今回の人間での実験で示されています。

痩せている人と太っている人との比較では、太っている人の皮下脂肪からより多くのIL15が分泌されていて、運動することにより、皮下脂肪からのIL15の分泌が増加することも確認されました。

この現象からは、皮下脂肪が増加すると、身体はそれを減らすために、脂肪分解を促進するサイトカインを分泌し、そのバランスを取ろうとしていることが想定されます。運動は筋肉からのIL15の分泌を増加させると共に、直接的に脂肪細胞のIL15の分泌も増加させ、それが運動が脂肪分解に役立つ、1つの理由であると考えられるのです。

運動の効能はかなり複雑

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よく脂肪を燃焼させるにはどれだけのカロリーが必要、というような説明がありますが、それが敢くまで定常状態での話で、実際には運動時には、直接的に脂肪分解に働くサイトカインなどの働きもあり、運動の効能はかなり複雑で多岐に渡るものであるようです。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36