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2019.10.23

インフルエンザワクチンはどれくらい予防効果があるか【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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今年はいち早くインフルエンザの流行が始まっています。
ワクチンの接種をお考えの方も多いと思いますが、これはどれくらい予防効果のあるものなのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のHuman Vaccines & Immunotherapeutics誌に掲載された、日本の小中学生に対する季節性インフルエンザワクチンの有効性を、2シーズンで評価した疫学データの論文です。
宮城県で行われた小児の疫学研究のデータを活用したもので、東北大学の研究者らによる研究です。

▼石原先生のブログはこちら

インフルエンザワクチンの予防効果はどれくらい?

今年も10月から季節性インフルエンザワクチンの接種が、開始される予定です。
この季節性インフルエンザワクチンの有効性については、色々な見解があります。

不活化ワクチンでアジュバントも含有しないという性質から、あまり有効性は期待出来ないのではないか、という意見がかつては強くありました。
ただ、2009年の所謂「新型インフルエンザ」流行の時には、流行しているウイルス株から直接ワクチンを作成したので、日本の調査でも6から7割という非常に高率の有効率を示しました。
この時にはより有効性が高くなることを期待して、アジュバントを含有するワクチンも製造されましたが、その効果は実際には通常のワクチンと違いがありませんでした。
一方で変異したウイルスの流行などがあると、ワクチンの有効性は大きく低下します。

小中学生のワクチン摂取歴と罹患率を検証

接種率6割でもインフルエンザ発症リスクは低下

今回の研究では、2012年から13年と、2014年から15年の2つのシーズンにおいて、調査地域における小中学生(7から14歳)にアンケート調査を行い、インフルエンザワクチンの接種歴と、そのシーズンにおいてインフルエンザと医療機関で診断された履歴を、比較検証しています。

トータルな対象児童は、2012から13年シーズンで12742名で、2014年から15年シーズンで18489名です。
そのうち回答の得られたのは、2012年から13年シーズンで3912名、2014年から15年シーズンで3902名でした。
そして、2シーズンとも59%の児童が、1回以上のワクチン接種を行っていました。

そして、1回以上のワクチン接種によりインフルエンザの発症リスクは、2012年から13年のシーズンで23%(95%CI: 0.65から0.92)と有意に低下していて、2014年から15年のシーズンでは12%(95%CI: 0.75から1.02)と低下する傾向は示したものの有意ではありませんでした。

ワクチンと流行ウイルスとのマッチングで有効性に差が出る

これはインフルエンザ感染自体を確認したものではないので、データの信頼性は割り引いて考えないといけませんが、現行のインフルエンザワクチンの接種は、小中学生において、6割程度の接種率でも一定の有効性は認められますが、それは流行ウイルスとのマッチングによって、かなり差のある効果であるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36