メニュー

2022.01.20

ブースター接種はオミクロン株感染予防に有効か?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

3回目のワクチン接種(ブースター接種)の準備も着々と進んでいるようです。でも、ブースター接種をすれば急激に感染拡大しているオミクロン株への感染は防げるのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2021年12月30日ウエブ掲載されたレターですが、オミクロン株の中和抗体活性を測定した内容です。

▼石原先生のブログはこちら

従来株の抗体はオミクロン株にも有効か

オミクロン株によると思われる、新型コロナウイルスの感染が全国で猛威を振るっています。

そこで問題となるのは、新型コロナウイルス感染症の中和抗体活性の主体となる、スパイク蛋白の部位に多くの変異のあるオミクロン株が、同じようにワクチンの有効性が担保されるのかということと、従来株の自然感染後に産生される抗体が同じように有効であるのか、ということです。

感染後、もしくはワクチン接種後の検体をオミクロン株に反応させて調査

今回の検証では、新型コロナウイルス感染症に自然感染したか、mRNAワクチン接種後の47名から得られた、169の検体を利用して、元の新型コロナウイルス、スパイク蛋白に対する抗体が産生されない、20カ所の変異を実験的に持つ抗原(PMS20)、そしてオミクロン株の検体に反応させ、その反応の差を比較しています。

その結果、自然感染後1ヶ月後の中和抗体活性(NT50を指標)は、元のウイルスと比較して、20カ所のスパイク変異のあるPMS20株では60±47倍、オミクロン株では58±51倍低くなっていました。

つまり、オミクロン株は、実験的に作られたスパイク蛋白への抗体が殆ど産生されない変異とほぼ同等の中和抗体活性しか持たない、という結果です。

PMS20株で214倍、オミクロン株でも154倍の中和抗体活性の上昇が認められました。

これとほぼ同じ現象は、自然感染ではなくmRNAワクチンの2回接種後にも認められていて、ワクチン接種後の中和抗体活性も、PMS20株やオミクロン株では非常に低いのですが、それが3回目のブースター接種後には、元のウイルスの場合26倍、PMS20株で35倍、オミクロン株で38倍、それぞれ上昇が認められました。

3回目のブースター接種には一定の有効性がある

要するに中和抗体活性の主体はスパイク蛋白の部位にありますが、それ以外の場所にも免疫を誘導するような作用はあり、オミクロン株への中和抗体活性の上昇にもブースター接種には一定の有効性は間違いなくあるようです。

ただ、これは敢くまで実験室レベルのもので、その有効性については今後もより詳細な検証が必要と考えられます。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36