メニュー

2020.01.08

食物繊維とヨーグルトで肺癌が予防できる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

近年、腸内環境が健康に大きく関係あることが明らかになっています。
さらに、腸内細菌叢のバランスによっては癌予防の効果も見られるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のJAMA Oncology誌に掲載された、食生活と肺癌のリスクとの関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

腸内細菌が癌予防にも関係している?

食事習慣と癌との関連については、色々な報告がありますが、最近とみに注目されているのが腸内細菌叢のバランスと、癌予防効果との関連です。

食物繊維は便通を良くする効果ばかりではなく、腸内細菌のバランスを調節するような働きがあり、ヨーグルトの乳酸菌にも、腸内細菌のバランスを改善するような作用があるとされています。

肺癌の発症リスクと、食物繊維・ヨーグルト摂取量の関係を検証

今回の研究は、世界各地のトータルで1445850名という、10の疫学研究のデータを集積して、肺癌の発症リスクと食物繊維、およびヨーグルトの摂取との、関連を検証したものです。

その結果、食物繊維の摂取量を5分割して検証すると、最も少ない群と比較して多い群では、肺癌の発症リスクが17%(95%CI:0.76から0.91)有意に低下していて、ヨーグルトを食べる習慣のない群と比較して、多く摂る群では、肺癌の発症リスクが19%(95%CI:0.76から0.87)、こちらも有意に低下していました。

更に食物繊維が最も多く、ヨーグルトも多く摂っているグループは、どちらも最も少ないグループと比較して、肺癌リスクの低下が33%(95%CI: 0.61から0.73)と、より低下幅が大きくなっていて、食物繊維とヨーグルトの摂取の相乗効果が示唆されました。

今後、腸内細菌叢と癌リスクとの関連に注目

こうしたデータはこれまでにも多く存在していて、結果もそれぞれ違っているので、何とも言えないところがありますが、今回の疫学データはこれまででも最も大規模なもので、今後腸内細菌叢と癌リスクとの関連は、今まで以上に注目されることになりそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36