2023.04.27
ごまはその昔、薬として重宝されていた!?和歌山県のごま豆腐【ニッポン地元メシ#43】
近畿地方に属し、紀伊半島の南西部に位置する和歌山県。
海側には、海外のリゾートを思わせる美しい砂浜、南紀白浜があり、山側にはおよそ1200年前に弘法大師・空海が開いた、真言密教の聖地の高野山があります。この他、熊野古道や熊野三山など世界遺産に登録されている場所も多く、自然と歴史が残っています。
南北に長い和歌山県は、海の幸、山の幸、そして川の幸を味わうことができますが、今回は精進料理に欠かせない料理のひとつ、ごま豆腐を紹介します。
精進料理にかかせない、ごま豆腐
出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/goma_toufu_wakayama.html)
高野山は、弘法大師が唐で学んだ真言密教を日本に持ち帰り、修行の場として開いた場所です。多くの修行僧が訪れ、金剛峯寺をはじめとする117もの寺院があります。
仏教の教えを反映した食事といえば、精進料理です。
精進料理は、殺生を避けるという意味からだし汁を含めて動物性の食材を一切使わずに作ります。さらに植物性の食材を使う際は、無駄を出すことなく使い切り、食べる時も残すことなく命に感謝するなど、作ることも修行、食べることも修行とされています。
精進料理には様々な料理がありますが、中でも欠かせないのがごま豆腐です。材料に用いられるごまは、その昔、中国で薬として重宝されていたとされるほど栄養価の高い食材です。
ごまを日本に持ち帰り、日本で初めて栽培したのは弘法大師と言われています。
ごま豆腐の材料は、ごま、葛粉、水の3つのみ。ごまの扱いは家庭によって違いはあるものの、現在の作りやすい方法としてはごまを煎って油が出るまでしっかりとすり潰します。
その後、水を加えてこし袋に入れてこし、葛粉と共に鍋に入れて混ぜ、葛粉が溶けたら火にかけ練り上げます。練り上がったのち、型に流し入れ、冷やして切り分けたらお好みでワサビ醤油などを添えていただきます。
ごま豆腐の栄養
栄養価の高いごまは、小さな一粒からでも、こすと油が出てくることからもわかるように脂質を多く含みます。
精進料理は動物性の食材を使わないことから、エネルギーが低くなりがちですが、ごまから大切なエネルギー源である脂質を適量摂ることは満足感にもつながるでしょう。
また、ごまはビタミンEも豊富に含まれます。ビタミンEは強力な抗酸化作用があり、細胞膜の構成成分である多価不飽和脂肪酸が酸化されてしまうのを防ぎ、細胞膜を正常に保つ役割があります。そのため、老化の予防や生活習慣病の予防に重要な役割があると考えられています。
ビタミンEは脂溶性のビタミン。ごまは脂質を含むため、吸収もスムーズです。
材料の葛粉は、つる性の植物である葛の根を乾燥させて粉にしたもの。加熱するととろみが出て、ごま豆腐のプルンとした食感に欠かせない役割を持つほか、糖質を多く含むため、効率の良いエネルギー源となります。
その他にもごまには、エネルギー代謝に欠かせないビタミンB1やB2、たんぱく質を含みます。
シンプルな材料ながら、栄養価の高い食材を使うことで体に嬉しい栄養素を取り入れることができるのです。
海の幸からフルーツまで楽しめる和歌山
写真提供:公益社団法人 和歌山県観光連盟
精進料理はもちろん、海の幸も見逃せません。和歌山県は太平洋に面している部分も多く、黒潮の影響で豊かな漁場として知られています。那智勝浦町の生マグロ、箕島漁港の太刀魚、和歌山市加太沖で獲れる真鯛など鮮度抜群の美味しい魚介を使ったグルメが各地で楽しめます。
写真提供:公益社団法人 和歌山県観光連盟
また、温暖な気候を生かして様々な質の良いフルーツが豊富。箕島漁港のある有田町は、有田みかんでおなじみです。梅、柿、はっさく、セミノールオレンジ、いちじくなど、数多くの果実の収穫量が全国上位を占めています。
和歌山県の豊かな食文化を、季節によって楽しんでみてはいかがでしょうか。
記事情報
引用・参考文献
1.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/goma_toufu_wakayama.html)
2.公益社団法人 和歌山県観光連盟(https://www.wakayama-kanko.or.jp/)
3.和歌山県 和歌山県の農業(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020300/kids/wakadata/nogyo.html)
4.『栄養学総論』林淳三・編著 建帛社
著者プロフィール
磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。
制作
文:磯村優貴恵