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2022.08.16

食品添加物は危険なの??医師が解説!

Lumedia

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まとめ

●食品添加物はすべて厚生労働省が安全性を検証しています。
●通常の食事では健康被害がでないような量を設定しています。
●無添加の食品が「食品添加物が含まれている食品よりも安全である」という根拠はありません。

「食品添加物」と聞いて皆さんはどのようなイメージを持たれますか?「無添加」を売りにしている食品は世間にたくさんありますが、「無添加」と聞くと身体に良さそうなイメージがわきますか?

食品添加物とはいったいどのようなものなのか、安全なのか、無添加の食品のほうが身体に良いのかといった疑問を専門医と一緒に考えていきましょう!

この記事を書いた医師の名前

大坂 貴史(Takafumi Osaka)
医師 / 糖尿病専門医 / 医学博士

『糖尿病で不幸になる人を少しでも減らす』ために Twitter、YouTubeニュースレターで医学情報を発信しています。
趣味は料理とワイン。合氣道、居合道、弓道、有段者です。健康は筋肉!

【目次】
1.食品添加物とは何か?
2.食品添加物は安全なの?
 2.1.食品添加物の一日摂取許容量
 2.2.摂取量の上限が決められていない食品添加物も!
3.添加物がない ≠ 健康・安全
4.安心して食品を選びましょう!

食品添加物とは何か?

まずは食品添加物の定義を確認してみましょう。厚生労働省のホームページを参照すると、「保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるもの」と解説されています (参考文献1) 。

食品添加物の具体例としては、キシリトールやバニラ香料、寒天などが挙げられます。これらの食品添加物は豊かな食生活を支えてくれますが、まだ歴史の浅い成分も多いです。そのため、「人の健康を損なうおそれがない」と厚生労働省が判断してから使用が認められます。発売後も国民一人あたりの摂取量を調査するなどして、慎重に安全性が確保されています (参考文献 2) 。

食品添加物は安全なの?

試しに「食品添加物」とGoogleなどで検索してみると、「避けた方がよい」「危険」などのワードが出てきてビックリしてしまいます。

ここでソルビン酸を例として、食品添加物は安全なのかどうか考えてみましょう!ソルビン酸は保存料として広く使われている食品添加物です。2008年に食品安全委員会が出した評価書 (参考文献3) には次のような報告があります。

●ハムスターの細胞に大量のソルビン酸を与えたら染色体に異常が出た (参考文献4) 。
●ラットに体重1kgあたりで約10g分のソルビン酸を与えたら、半数のラットが亡くなってしまった (参考文献5) 。

こうした話を聞くと「え、危ない!」と感じてしまいますよね。しかし、こうしたデータは「細胞」や「マウス」に関する話です。「ヒト」で実際に副作用が出たわけではないので、勘違いしないように注意しましょう!

食品添加物の一日摂取許容量

では、厚生労働省はどのようにして食品添加物の安全性を確保しているのでしょうか?ソルビン酸の例で大まかに説明すると、

①マウスなどの動物実験のデータを参考に「この程度なら摂取しても問題なかったよ!」という量 (無毒性量) を決める (参考文献3, 6) 。
→体重 1 kg あたりで 2,500 mg 分のソルビン酸を毎日摂取した動物では問題ないようだ (参考文献3) 。

②一生にわたって人が毎日食べ続けても大丈夫な量 (一日摂取許容量) を決める (無毒性量の100分の1) (参考文献3, 6) 。
→体重 1 kg あたり 25 mg 分のソルビン酸なら、人が毎日食べても大丈夫だろう (参考文献3) 。
→つまり、体重 60 kg の人なら毎日 1.5 g のソルビン酸を食べても大丈夫そうだ。

③過剰に摂取しても添加物による健康被害が生じないように、食品に入れて良い量 (使用基準) を決める (参考文献2, 7) 。
→ソルビン酸がよく使われる製品として「ジャム」がある。
→さすがにジャムを毎日 1.5 kg 食べる人はいないだろう。
→ならジャム 1 kg あたりで 1 g までのソルビン酸の使用を認めても、毎日 1.5 g のソルビン酸を食べ続けることにはならないはず。
→ジャム 1 kg あたりで 1 g のソルビン酸を使用基準とすれば、一日摂取許容量を超えないので安心!

しっかりとした裏付けにもとづいて食品添加物の「無毒性量/一日摂取許容量/使用基準」が決定され、皆さんの健康を万が一にも害さないように配慮されているわけですね!

摂取量の上限が決められていない食品添加物も!

食品添加物の中には、上限が設定されていないものもあります。例えばうま味調味料で有名なグルタミン酸ナトリウムは、安全性に懸念を生じさせる毒性は認められないとされます。つまり、たくさん食べても問題ないというわけです。こうした高い安全性が確認済みの食品添加物については、上限となる一日摂取許容量は設けられていません (参考文献8) 。

添加物がない ≠ 健康・安全

このように食品添加物の安全性は確保されています。それにもかかわらず、「添加物がない」=「健康で安全」との誤解をまねく広告が散見されます……。そこで消費者庁は「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」 (参考文献9) を発表し、次のように言及しています。

●食品添加物は安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めている。
●「無添加なので体に良い」「無添加なので安全である」などと記載することは、実際のものより優良または有利であると誤認させるおそれがあり、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高い。

「添加物がない」=「健康で安全」であるかのような内容を示唆する広告は、規制される流れにあるのですね!さらに同ガイドラインでは食品添加物は安全性が十分に評価されたものであることを強調しています。

安心して食品を選びましょう!

どんなものでも毒か毒でないかは量で決まります。たとえ水ですら、過度に飲みすぎれば健康を害します (参考文献10) 。何事も程度の問題ですね。
日本の食品は十分な検証が行われたもののみが販売できます。食品添加物入りの製品を毎日食べても危ないということはありません。安心して食品を選んでくださいね!

参考文献

5:内田雄幸, 内藤克司, 安原加壽雄, 大場栄, 佐藤千百合, 下温湯シヅ他. テヒドロ酢酸,ソルビン酸およびそれらの併用時の急性経口毒性に関する研究. 衛生試験所報告.(1985)103:166-171

COI

本記事について、開示すべきCOIはありません。

COIの開示基準については、日本内科学会の『医学研究の利益相反(COI)に関する共通指針』に準じています。より詳細はこちらをご覧ください。

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