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2023.04.16

連休明けは五月病に注意。心を休める長期休暇の過ごし方【働く人のこころ処方箋】

kencom公式:精神科医・井上智介

令和2年労働安全衛生調査(実態調査)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に連続して1ヵ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所割合は、平均で9.2%でした。うつ病などのメンタル不調は、現代では誰にでも起こりうる身近な病です。

本連載『働く人のこころ処方箋』では、産業医・精神科医・健診医として活躍している井上智介先生に、心の健康を保つ秘訣を教えていただきます。

©️ikue takizawa

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連休明けは五月病が急増

もうすぐゴールデンウィークですね。“長期の連休”と聞くだけで、気持ちがウキウキしたりするものです。ただ、その一方で「休みをうまく過ごせないかも」と、思っている人も割とたくさんいます。

実際に、楽しいはずの連休が終わったあとから、五月病に悩まされる人も急増するので、あなたも他人事ではないかもしれません。五月病の初期症状は、何ごとにも意欲がなくなる、体全体がだるくて調子が悪い、座っていてもぼーっとする時間が増えてるなど。心当たりがある方、意外と多いのではないでしょうか?

五月病と聞いて「そんなの気持ちの問題でしょ?」と思うかもしれませんが、れっきとした適応障害という疾患ですので、軽く考えるのはやめましょう。このGWの過ごし方がいい意味でも悪い意味でも、今後の心身に影響しそうなことは、理解してもらえるのではないでしょうか。

予定は詰めすぎない、生活リズムを崩さない

では、このGWをどのように過ごしたらいいのでしょうか。まず長期の連休だからといって張り切りすぎないように注意してください。なぜなら、普段からよく遊んだり旅行することに慣れていない人が、世間の風潮に流されて、ここぞとばかりに予定を詰め込むと大きな疲労感につながるから。やはり、”遊ぶ”ためには体力がいるのです。

なかには「連休だからこそ、遊ばないのはダメだ!」と、自分にプレッシャーを与えて、無理をしてでも遊びの予定を入れている人もいます。連休に普段にはないような刺激を求める気持ちも分かりますが、普段の疲れを癒すための休養も忘れないように心がけてください。

逆に明日が休みだからといって昼過ぎまで寝ている生活を続けていると、生活リズムも乱れてしまいます。連休明けにリズムを戻すだけで、大きな疲労感を感じて仕事どころか何をするのにも億劫に感じるようになってしまいます。とくに、朝起きる時間はいつもの+2時間までにしておきましょう。もし、あなたが普段朝7時に起きているのなら、連休中も朝9時までには起きて活動するように心がけましょう。

みんなと同じ、じゃなくていい

連休のイメージで、家族や親戚、友人などと一緒にワイワイ過ごす方が良い過ごし方だと思っていませんか。もちろん、そんなルールはありません。たとえ、どれだけ仲が良い友人であっても、他人と一緒に過ごすということは楽しさだけではなく、エネルギーが消耗されることを忘れてはいけません。

連休をひとりで過ごしても、あなたが心地よく過ごせたなら、決して悪い過ごし方ではありません。家でゆっくりと読書や動画やゲームを楽しんだり、映画や音楽、絵画などの芸術鑑賞を楽しむのもいいですね。また、日々の疲れた心をリフレッシュするために森林浴もおすすめ。もし、近くに自然を感じる場所がなくても、ちょっとした樹木のある公園で20分ほど、ボーっと過ごすだけでもリフレッシュになります。

心を休めて自分らしく過ごそう

連休なら、いつもよりは自分の時間を確保できると思います。だからこそ、身近なところに自分らしく過ごせる、家でもなく職場でもない“第三の場所”を探してみることも、今後の心身のケアにとっても有意義な過ごし方になりますので、ぜひトライしてみてください。

記事情報

著者プロフィール

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井上智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医・健診医。
兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話重視の精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも注力。SNSや講演会などでも「ラフな人生をめざすこと」を積極的に発信中。主な著書に『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)等がある。

制作

文:井上智介
写真:滝沢育絵

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