2023.01.16
全身疾患とも関係が?歯の喪失原因の1位とされる歯周病を防ごう【病のトリセツ#15】
自覚症状がないままに歯ぐきが蝕まれ、気が付いたら歯が抜け落ちてしまうこともある歯周病。歯の喪失原因の1位とされる病気です。
歯周病が怖いのは、口内の影響にとどまらず、糖尿病などの全身疾患にも強く影響するところ。今や、歯周病の予防は健康寿命を延ばすために欠かせないものになってきています。この機会に、歯周病の基礎知識と正しい予防法を確認しましょう。
歯周病とは?
歯周病とは、歯を支えている歯ぐきや歯ぐきの中にある骨(歯槽骨)の病気です。過去の調査では国民の8割が歯周病といわれるほど罹患者が多く、歯を失う最大の原因とされています。
歯周病は、歯周ポケットといわれる歯と歯ぐきの隙間から細菌が侵入して、歯肉や歯槽骨に炎症を起こすことで起こります。はじめは歯茎が腫れる、出血しやすくなるといった症状ですが、炎症が進むと歯がグラグラしてきたり、歯肉が下がってきたりもします。最悪の場合、歯が抜けることもあります。
よく混同されますが、歯が溶けて穴が空く虫歯とは全く違う病気です。虫歯は歯の病気、歯周病は歯の周りの病気になります。ただ予防法は同じですので、正しいセルフケアを身につけましょう。
▼予防法について詳しく知りたい方はこちらから
歯周病の原因
歯周病の最大の原因は、歯の表面に付着するプラーク(歯垢)というネバネバしたもの。食後の歯磨きが十分でない時や、糖分を摂取しすぎた時に増えていきます。
実は、このプラークは細菌の塊。プラーク1mgの中には約10億個の細菌が住みついているといわれます。これらの細菌が様々な毒素を出すことで、歯肉に炎症が起きてしまうのです。
プラークは適切に歯磨きをすれば取り除けますが、そのまま放置しておくと、唾液に含まれるカルシウムやリン酸と結合して歯石になり、歯の表面にこびり付きます。
細菌はその歯石を足がかりとして、更に歯周ポケットの奥深くまで潜り込み、歯周病を進行させる毒素を出し続けます。そのためどんどん炎症が進んでいくのです。
歯周病の症状
歯周病は虫歯とは違いほとんど痛みがなく、気がつかない間に進行してしまうのが怖いところです。
歯周病は、①歯肉炎、②歯周炎という順番に進行します。
①歯肉炎
歯と歯ぐきの隙間から細菌が侵入し、歯肉に炎症が起きた状態を歯肉炎といいます。歯茎が腫れ、堅いものを噛んだり歯磨きをしたりする時に出血が起こったりします。
②歯周炎
歯肉炎が進行し、歯周ポケットの奥深くまで入り込んだ菌は、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしはじめます。これが歯周炎です。歯周炎は進行具合によって、初期、中等度、重度に分けられています。
歯周炎が進行すると歯槽骨が破壊されて歯が支えられず、歯がグラグラになってしまいます。歯槽骨が完全に溶けてしまうと歯は抜けおちます。
リスクが高いのはどんな人?
歯周病のリスクが高まる方は以下の通りです。
・喫煙している方
・妊娠中の方
・糖尿病にかかっている方
・歯磨きのしかたが悪い方
・中年期以降の方
・ストレスなどで免疫が下がっている方
・飲酒習慣のある方
また歯周病は、痛みなどの強い症状がありません。しかし気がつくポイントがいくつかあるため、以下の記事を参考にセルフチェックを行い、ひとつでも当てはまる場合は、早めに歯科を受診してください。
▼あなたは大丈夫?歯周病のセルフチェックリストはこちらから
歯周病は全身の病気とも関連する
歯周病が影響するのは歯や歯ぐきだけではありません。全身の健康をも脅かします。
歯周病菌が血管を通って体内に取り込まれると、糖尿病や心疾患、慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、がん、早産などさまざまな全身疾患と関連していることが報告されています。
特に糖尿病とは密接な関係が認められています。歯周病を予防・治療することは、全身の健康維持に非常に重要であるといえます。
歯周病の検査方法
歯周病の検査では、口内の状態を大まかに確認した上で、X線写真撮影や歯周ポケットの測定を行います。
プラークが口内にどれくらい存在するか、歯肉の腫れの程度はどの程度なのか、歯周組織の破壊がどの程度まで進んでいるかなど調べます。
歯周病の治療法
歯周病治療には、大きく分けて①歯周病菌を減らす、②噛む力をコントロールする、2つの方法があります。
①歯周病菌を減らす
歯周病治療のメインは歯周病菌を減らすこと。以下の治療を行って、プラークを作らせない環境を作っていきます。
・歯磨き指導
歯並びや歯磨きのクセを踏まえた上で、キレイに磨ける方法を指導します。根気良く正しい歯磨きを続けていれば、歯茎の溝が引き締まっていくため、歯周病菌が住みつきにくくなります。
・歯石除去
歯石は軽石のようにたくさんの穴があるため、細菌が住み着いて歯周病菌増殖の温床となります。歯石はセルフケアでは取り除けないため、歯科の専用器具で除去します。
・手術
歯石を除去した後の再検査で改善がみられない場合は、歯科外科手術を行うこともあります。
メスで歯茎を切開してポケットの奥深いところにある歯石を取り除くフラップ手術や、人工の特殊なタンパク質などを使って、歯を支える骨の組織を再生する歯周組織再生療法などがあります。
②噛む力をコントロールする
歯周病の治療には、他にも噛む力をコントロールすることがとても大切です。歯にかかる力が分散するように、歯並びや噛み合わせを調整したり、歯と歯をつなぐなどの治療を行います。歯ぎしりや噛みしめのクセがある方は、夜間に歯を保護するマウスピースを着ける場合もあります。
▼詳しく知りたい方はこちらから
歯周病を予防するには?
全身の健康にも影響する歯周病は、どのように予防をしていけばいいのでしょうか。
①口の中に食べかすを残さない
食べた後は毎回歯磨きをするのが理想。でも、どうしても時間が無いときは口の中に食べかすを残さないように気をつけましょう。
食後はうがいだけでもする、緑茶を飲んで口内を洗い流す、キシリトール入りのガムを噛むなどして、口の中をキレイに保つことを心掛けて。
▼歯周病予防のコツはこちらから
②正しい歯磨きを身につける
本人は磨けていると思っても、正しく歯磨きが出来ていないケースもあります。
おすすめは、歯科医院でご自身の歯並びに合わせた歯磨きの方法の指導を受けること。歯間ブラシやフロスの併用も効果的です。
▼正しい歯磨きのコツはこちらから
③電動歯ブラシを使う
短時間で効率的に歯磨きができる電動歯ブラシは、優れたお手入れ道具です。ぜひ上手に活用しましょう。
ただし、普通の歯ブラシとは歯に当てる角度などが異なるので、説明書をよく読んでから使うのがおすすめです。
▼有効な歯周病予防法はこちらから
④運動習慣をもつ
一見関係がなさそうな歯周病と運動習慣。でも実は、定期的な運動習慣があると、特別な治療をしなくても歯周病が改善する可能性があることが証明されています。
運動がダイエットと歯周病改善を同時に叶えてくれるのです。まさに一石二鳥ですね。
▼詳しく知りたい方はこちらから
毎日のケアで、健康な歯肉を維持しよう
歯周病は口の中だけにとどまらず、全身疾患のリスクを上げる怖い病気。ですが、セルフケアだけでは完全にケアできないことも多いため、3ヵ月に一度を目安に歯科医院で検診を受けて予防するようにしましょう。
ここ近年、オーラルケアの重要性に注目が集まり、昨年10月から歯科健診の結果報告がすべての事業場に義務化されました。また、全国民に対して毎年の歯科健診を義務付ける方針が昨年話題となり、今後も注視していく必要があります。たかが歯周病と軽視せず、早期発見・早期治療を心がけましょう。
本記事は過去のkencom記事をもとに再編成したものです
記事情報
引用・参考文献
制作
文:kencom編集部