メニュー

2019.11.22

一生自分の歯で食べるために! 本当に正しい歯のセルフケアを身につけよう 【虫歯・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

記事画像

虫歯は自分で予防できるはずなのに、日本人の40代のほぼ100%の人が虫歯にかかったことがあると言います。その理由は、ほとんどの人が間違った歯のセルフケアを続けているから。
この記事では歯ブラシの握り方から歯磨き粉の使い方、正しい磨き方を長続きさせるコツまで、「本当に正しい歯のセルフケア」をお伝えします。
お話いただいたのは、日本橋あみ歯科院長の堀江幹子先生です。

歯のケアはコツをおさえて、丁寧に行おう!

まずは歯ブラシ!基本の3ポイントを学ぼう

歯のケアの基本は「歯ブラシ」です。と言っても、毎日磨いているのに虫歯になってしまう方が多いのではないでしょうか。

そこで歯を磨く際に、おさえておきたいポイントをご紹介します。これらを意識して磨くだけで、虫歯を予防する確率はグッとあがりますよ。

①歯ブラシをあてる角度

記事画像

歯ブラシは、歯と歯肉の境目や歯間などに、斜め45度にあてるのが理想です。

慣れるまでは鏡をよく見ながら歯ブラシがしっかりと境目や隙間を磨けているのか、確認しながら磨いてみましょう。歯は丸みを帯びているので、口に斜めから入れたり歯ブラシを立てた状態で先の部分が45度にあたるように調節したり、歯ブラシの角度を色々と変える必要があります。

②力加減

まっすぐ立てた状態ではかりに載せた時に、150〜200g程度の軽い力で磨くのが最適だと言われています。歯ブラシの毛先がそらず、広がらないくらい程度の力加減です。思っているよりも軽い力で汚れは落ちるのです。

歯ブラシの持ち方は、力が入りにくいペングリップがおすすめ。ペンを持つように人差し指と親指の二本の指で歯ブラシを持ち、中指は支える程度に添えます。力任せにゴシゴシ磨いても汚れが落ちないだけでなく、歯茎を痛めてしまうので、どうしても力が入ってしまう方は、親指と人差し指の2本だけで磨いてみてください。

③動かし方

シャカシャカと大きく動かすのではなく、毛先を磨きたい場所に固定させるイメージで小刻みに上下左右に振動させます。振動の幅は5〜10mm程度、1〜2本ずつ磨いていきます。大きく動かさないこと、歯ブラシを歯に強く押し付けないことがポイントです。

プラークがたまりやすい3ヵ所を重点的に!

記事画像

プラークがたまりやすい場所は、「歯と歯の間」、「歯のくぼみ(奥歯の溝)」、「歯の根元」の3ヵ所。この3ヵ所は特に意識して歯ブラシを当てる必要があります。

歯と歯の間

歯と歯の間の面積は、歯全体の5割に当たる部分。歯磨き時間の半分は、歯と歯の間のケアに充てても良いと言えます。しかし、この部分は歯ブラシだけのケアでは不十分。どうしても、フロスや歯間ブラシが必要となります。

歯のくぼみ(奥歯の溝)

奥歯にはくぼみがあり、複雑な形状をしているので磨きにくく、虫歯になりやすい場所の一つです。鏡をみながら、溝を意識して丁寧に磨きましょう。

歯の根元

この部分のプラークを落とせば、虫歯だけでなく、歯周病予防にもつながります。歯肉を傷つけないよう意識しながら、力を入れずに磨くことがポイントです。

歯周病で、歯と歯肉の境目にすでに深いポケットができてしまっている方は、自分でプラークを落とすことは難しいので、歯科医院で歯周病治療をはじめましょう。

歯ブラシは1ヵ月に1回交換を

歯ブラシは、1ヵ月を目安に交換するようにしましょう。

1ヵ月をすぎるとブラシに弾力がなくなりますし、毛先が開いて摩耗したものはプラークが落ちにくくなるだけでなく、歯茎を痛める原因にもなるので早めに交換してください。1ヵ月も満たないうちに毛先が開いてしまうようなら、ブラッシングの力が強すぎるので、軽い力で磨くことを心がけましょう。

歯磨き粉の選び方・使い方

歯磨き粉がなくても十分にプラークは取れます。泡がたくさん出る歯磨き粉を使うと、どこにブラシが当たっているかわかりませんし、汚れが落ちていなくても、ミントなどの効果で口の中がすっきりした感じになってしまうなど、むしろ逆効果になっている方が多くいます。まずは、「何もつけずに磨く」というのが理想です。

その上で、フッ素入りの歯磨き粉を最後に添付すると、歯の石灰化を促す作用もあるので効果的といわれています。

歯のホワイトニングのため、毎回研磨剤が入っている歯磨き粉でゴシゴシ磨く歯磨きはすぐにやめましょう。歯のエナメル質が傷ついてしまうため、どうしても歯の着色が気になるときだけ、使うようにしましょう。また、研磨剤に頼らずとも、ホワイトニングをするジェルを定期的に使用したり、歯科医院の定期検診でクリーニングをすることで、歯の黄ばみを落とすことができます。

また、電動歯ブラシの場合は、電動歯ブラシ専用のものを使いましょう。

歯間ブラシとデンタルフロスも取り入れよう

正しい歯磨きをいくら頑張っても、残念ながら歯ブラシだけではプラークを6割程度までしか落とすことができません。デンタルフロスや歯間ブラシも取り入れて、歯の隙間に溜まった汚れを流すことを習慣にしていきましょう。

デンタルフロスは、歯と歯の間が狭い部分に適しています。また、歯と歯肉の境界ギリギリのプラークまで除去できます。歯と歯の間に隙間がない方は、フロスのみで十分だと思います。しかし、歯と歯の間の隙間が年齢とともに大きくなっていたり、歯の表面にデコボコがある場合には、歯間ブラシとフロスを合わせて使うのが効果的です。

日本歯科保存学雑誌,48,272(2005)より抜粋、改変

日本歯科保存学雑誌,48,272(2005)より抜粋、改変

寝る前の歯磨きだけは完璧に

毎食後に完璧な歯磨きとフロス、歯間ブラシをしなくてはいけないと思うと疲れてしまいますよね。

私は1日に1回しっかりとプラークを取り除ければ良いと思っています。一般的に、プラークは食後8時間ほどで作られ、48時間で歯石になると言われています。ですから、それまでの間に一度、完璧にプラークコントロールできれば、虫歯や歯周病の予防につながります。

プラークが爆発的に増えるのは、唾液の少ない夜間の眠っているとき。ですから、寝る前の歯磨きだけでも、しっかりと頑張ることを心掛けてください!

歯磨きで疲れてしまい、フロスや歯間ブラシをするのが億劫だと言う方には、お手入れの順番を変えてみることをお勧めしています。

はじめに、鏡の前でフロスや歯間ブラシで歯間をしっかりと綺麗にしてから、歯磨きをします。その時の歯磨きは、お風呂に入りながら、テレビを見ながら、音楽を聞きながらなど「ながら磨き」でも良いと思います。リラックスしながら楽しんで歯磨きすること、これが長続きさせるコツです。

定期検診に行くことで、歯に安心を

ここまで、正しい歯の磨き方をお伝えしてきましたが、どんなに丁寧に磨いても、本当に磨けているかどうかは自分で確認することはできません。また、人によって歯並びや、口の中の形態、唾液の量などにも違いがあるので、その方にあった磨き方や、歯ブラシ、その他の器具などを知ることは本当に大切です。そこで、利用していただきたいのが、歯科での定期検査。

定期検査では多くの場合、虫歯の検査、歯周病の検査、歯石の除去などに加え、歯のケアの指導をします。その方の歯並びにあった正しい歯磨き方法が身につくまで、何度でも確認に来ていただきたいと思います。

虫歯は年に1~2回、歯周病は約3ヵ月おきに定期検査を受けるとよいといわれています。自治体で歯科検診が行われている場合もあるので、積極的に利用してください。

健康寿命延伸にも重要な歯磨きを見直そう

何十年も毎日歯を磨いているのに、実は間違っていた!そんな方は、少なくないはずです。

正しい歯のケアを一度覚えてしまえば、虫歯は予防でき、歯周病でも約9割は予防できるそうです。一生自分の歯で美味しいものを食べることは、心と体の幸せにもつながります。健康寿命を伸ばすためにも、今日から正しい歯のケアを始めてみましょう。

堀江幹子(ほりえ・みきこ)先生

記事画像

日本橋あみ歯科院長
鶴見大学卒業後、同歯科にて勤務。その後都内歯科にて勤務後2014年4月に日本橋あみ歯科を開業し、現在に至る。
歯科の雰囲気が苦手な患者もリラックスして治療を受けられると評判。特に予防歯科に力を入れている。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

この記事に関連するキーワード