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2019.11.22

20歳以上の80%以上が罹患!? 生涯自分の歯で食べるための歯周病対策【歯周病・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

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歯周病は口の中の問題だけでなく糖尿病や心疾患、早産など全身に悪影響を及ぼすことがわかってきています。
口の慢性感染症である歯周病を放置することは万病の元。今回は早期発見し悪化させないために、歯周病治療と再発防止のためのコツをお伝えします。
解説していただいたのは、『日本橋あみ歯科』院長の堀江幹子先生です。

■口を蝕む怖い病気『歯周病』を記事で丸裸に!

歯周病はこう治す!治療と対策の最前線

歯周病の検査方法

まずは、口内の状態を大まかに把握するために、現在どのくらい歯が残っているか、また過去に詰め物や被せ物などの歯科治療が行われているかを調べます。次に、歯周病の症状がある場所の細かな検査に移ります。
検査では、プラークが口内にどれくらい存在するか、歯肉の腫れの程度はどの程度なのか、歯周組織の破壊がどの程度まで進んでいるかなどを細かく検査していきます。主に行われるのは下記の2つの検査です。

①X線写真撮影

見た目の歯茎の状態に問題がなくても、実は中の骨が破壊されている可能性があります。歯槽骨の破壊状態をX線写真で確認し、歯周病の進行度を確認します。

②歯周ポケットの測定

次に、歯と歯の隙間(歯周ポケット)に目盛りのついた器具を挿入してポケットの深さと出血の有無を確認します。この検査で「炎症の存在」と「歯周病の進行度」が分かります。一般的にポケットの深さが3mmい以内であれば正常。4mm以上の場合は歯周病の可能性があります。
また、X線写真だけでは把握できない頬舌側の歯槽骨吸収などもこの検査で探ります。

歯周病はコントロールが要

基本的に歯周病を治しても減った歯槽骨や歯茎を元の状態に戻すことは難しいです。しかし、症状を改善したり、悪化したりしないようにコントロールすることはできます。
歯周病菌は常に口の中にいるのものなので、上手に付き合っていくことが大切です。

このコントロールは、もちろん治療を受けるだけではできません。たとえ歯科医院で歯石の除去をしても、日常的にプラークが口の中で作られ、留まらせる状況を作っていては何度も再発し悪化をしていきます。歯周病の治療は日々のセルフケア=歯磨きが非常に重要です。歯医者さんと二人三脚で治していこうという、積極的な気持ちが不可欠なのです。

歯周病の治療

では、どのように治療を進めていくのかをご説明します。歯周病治療は、大きく分けて2つの方法があります。

①歯周病菌を減らす
②噛む力をコントロールする

歯周病治療のメインとなるのが、歯周病菌を減らすことです。歯石の除去と歯磨き指導を行いプラークを作らせない環境を作っていきます。また、歯周病により歯を支える骨が溶けてしまっている方は、噛む力をコントロールすることが非常に重要です。噛む力に負けて歯周病が悪化しないよう、歯並びを調節したりして噛み合わせのバランスを整えていきます。

以上のような治療ののち、再評価を行って改善が見られない場合は歯科外科手術を行うこともあります。

歯周病菌を減らす治療

①歯磨き指導

毎日、歯を磨いているのにもかかわらず、なぜ歯周病になるのでしょうか?それは、「正しい磨き方を知らない」からです。歯科で人それぞれの歯並びに合わせた歯磨きの方法の指導を受けて、できるようになるまで練習し続けることが非常に大切です。
根気良く正しい歯磨きを続けていれば、歯茎の溝が引き締まり、浅くなっていきます。歯茎の溝が浅くなると、歯周病菌が居つくスペースはどんどん小さくなり、たとえ少し菌が残ってしまっても、大量に増えることはできなくなります。コツコツ積み重ねていけば、着実に歯周病が発症しにくい環境を作り出せるのです。正しい磨き方は、一度で身につくものではありません。何度でも歯科に磨き方のチェックに来て欲しいと思います。
多くの人に当てはまる一般的な歯磨き方法はこちらで詳しく紹介しています。参考にしてみてください。

虫歯へのリンク飛ばす予定

②歯石の除去

プラークがミネラルを吸着して石のように硬くなった歯石は専用の機械で除去していきます。歯石は軽石のようにたくさんの穴があって汚れが停滞しやすく、そこに細菌が住み着き歯周病菌増殖の温床となるため除去が必要です。
歯石はスケーラーという器具で取り除きます。手用スケーラーで削り取る場合と超音波スケーラーで粉砕する2つの方法があります。

③歯科外科治療

歯石を除去した後の再検査で改善がみられない場合は、外科手術が行われることがあります。
主なものには、メスで歯茎を切開してポケットの奥深いところにある歯石を取り除く「フラップ手術」や、人工の特殊なタンパク質などを使って、歯を支える骨の組織を再生する「歯周組織再生療法」などがあります。

ただし、歯槽骨の状態によっては行えない場合もあるので、担当医に相談するのが良いと思います。

噛む力をコントロールする治療

歯にかかる力が分散するように、噛み合わせのバランスを整えることも歯周病治療には重要です。歯並びを調整したり、歯と歯をつないだり、噛み合わせを調整するなどの治療を行います。

また、歯ぎしりや、噛み締めによって歯に力が加わると、歯が揺さぶられ、歯と歯を支えている骨の間に隙間ができることがあります。その隙間に歯周病菌が感染すると、歯周病が急激に進行する可能性があるだけでなく、顎関節症や、歯の破折、肩こりなどを引き起こすこともあるので注意が必要です。

これらの兆候が見られる方には、夜間にマウスピースをつけていただくことをお勧めしています。マウスピースは、歯に加わる力を分散するので、歯周病の悪化を防ぐ効果があります。
思い当たる方は、一度歯医者さんに相談してみてください。

3ヵ月に一度は歯医者に行こう!

私たちの口の中には、常時歯周病菌がいるので、治療によって一旦は歯周病の状態がよくなっても、普段の歯磨きの状態が悪いと高頻度で再発することが知られています。治療が終わって長期間が経過すると、お口の中の清掃状態はどうしても悪くなる傾向があります。

ぜひ、3ヵ月に一度を目安に定期的なメンテナンスとして歯科医院を訪れ、歯周病の状態と磨き残しや磨きグセのチェックをしてください!

自分の歯で生涯美味しいものを食べられることは、幸せな人生につながります。
無くなった歯は取り戻すことができません。後悔しないためにも今できることを今日から実行し、健康な歯肉を維持していきましょう!

堀江幹子(ほりえ・みきこ)先生

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日本橋あみ歯科院長
鶴見大学卒業後、同歯科にて勤務。その後都内歯科にて勤務後2014年4月に日本橋あみ歯科を開業し、現在に至る。
歯科の雰囲気が苦手な患者もリラックスして治療を受けられると評判。特に予防歯科に力を入れている。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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