メニュー

2021.06.26

疲れやストレスが引き金に!口唇ヘルペスはなぜ罹る?【口唇ヘルペス・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

記事画像

長引くマスク生活で、唇や口の周りに違和感を覚える人が増えています。なかでも、蒸し暑くなるこの季節に増えると言われているのが「口唇ヘルペス」。
ヘルペスウイルスは、一度感染すると生涯体内に潜み、疲れやストレスなどによって免疫が下がった時に発症し、しつこく繰り返す事があります。
一体どんな病気で、予防することはできるのでしょうか?
「口唇ヘルペス」の正しい知識と対処法を、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院皮膚科診療科長の玉木 毅先生に伺いました。

玉木 毅(たまき・たけし)先生

記事画像

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 皮膚科診療科長・皮膚科医長
1987年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部皮膚科教室入局。米国サウスカロライナ州立医科大学研究員、東京大学医学部附属病院皮膚科医局長、同分院皮膚科講師などを経て現職。医学博士、日本皮膚科学会東京支部運営委員、東京都皮膚科医会副会長、東京大学非常勤講師。

世界人口の半数以上が感染済み!ヘルペスってどんな病気?

そもそもヘルペスとはなんなのか

Herpes(疱疹)とは、皮膚に小さい水ぶくれが集まって炎症を起こしている状態のこと。
ヘルペスウイルスというウイルスに感染したことで起こります。人に感染するヘルペスウイルスは8種類あり、かなりの人がこれらのいくつかのヘルペスウイルスに感染しているといわれています。

例えば、水ぼうそうや帯状疱疹は「水痘・帯状疱疹ウイルス」、口唇ヘルペスや性器ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス」によって引き起こされます。
ヘルペスウイルスに一度感染すると、取り除くことは難しく、症状が治まっても一生体内に住み続けるのが特徴です。

記事画像

半数以上の大人がウイルスを持っている「口唇ヘルペス」とは?

「単純ヘルペスウイルス」には1型と2型があり、なかでも、口唇ヘルペスを引き起こす「単純ヘルペスウイルス1型」には、成人の半数以上が子供の頃にすでに感染していると言われています。

⼝唇ヘルペスは、唇やその周りに、軽い痛みを伴う⽔ぶくれができる病気です。最初に唇にチクチク・ピリピリという違和感があった後、痛みを伴う⽔ぶくれが数個でき、3〜5⽇程度でかさぶたになって治るという経過をたどります。
痛み自体は弱いのですが再発しやすいという特徴があり、特に疲れやストレス、また発熱などで免疫⼒が落ちている時に症状が出ます。
頻度は個人差がありますが、一般的には1年に数回程度と言われています。
根絶するのは難しい病気です。

感染経路は?

単純ヘルペスウイルスは感染力の強いウイルスで、水ぶくれの症状がある人からの「接触感染」や、「物を介した感染」が起こります。
「接触感染」の例としては、水ぶくれがある人との、頬ずりやキス、また、水ぶくれを触った手で抵抗力のない人へ触れる行為など。
「物を介した感染」では、スプーンや、タオルの共有などがあげられます。同じスプーンで赤ちゃんに離乳食をあげるなどの行為はやめましょう。

皮膚には「バリア機能」があるため、健常な皮膚であればウイルスがついただけでは感染しません。
しかし、赤ちゃんなど抵抗力が弱い人や、皮膚に傷や湿疹などがある場合は、皮膚のバリア機能が弱まっているので感染しやすくなります。

ただし、ヘルペスウイルスは比較的熱に弱いので、お風呂のお湯を介して感染することはありません。

感染リスクの高い人は?

新生児などヘルペスウイルスに感染したことがない人や、感染したことがあっても免疫が弱い人は、リスクが高いと言えます。
新生児や、お年寄り、抗がん剤などを使用して免疫力が極端に弱っている人にはヘルペスウイルスが感染しやすい上、大変稀ではありますが、脳炎などの重篤な合併症を発症することがあるので注意が必要です。
乳幼児が感染すると、口腔内の粘膜全体に水ぶくれができたり、高熱が数日続くなどの重度の感染症を起こすこともあります。

また、アトピー性皮膚炎を患っていたり、もともと皮膚が弱い人もヘルペスウイルスがうつりやすく、非常に広い範囲に水疱が広がることもあるので、感染させないように十分気をつけましょう。

接触を極力避けるのが予防の一歩

ヘルペスが発症しているときは、他人に感染させるリスクがあります。
頬ずりやキス、口移し、食器やタオルの共有はやめましょう。

食器やタオルなどは、感染している人とは分けて洗い、洗剤を使用することも重要です。
また、万が一水ぶくれができている部分に触れてしまった場合は、しっかりと石鹸と流水でウイルスを洗い流すことが大切です。

どう付き合っていく?口唇ヘルペス対策

疲れがたまったり、熱が出たりなど、辛い時に限って繰り返す「口唇ヘルペス」ですが、残念ながら、体内に潜伏しているウイルスを排除する⽅法はありません。
しかし、適切な治療や対処法で水ぶくれなどの症状を軽減したり、出にくくすることはできます。

後半では、⼝唇ヘルペスの正しい治療法と、うまく付き合っていく⽅法を詳しくお伝えします!

■後編はこちらからどうぞ

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。