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2021.05.27

ファイザー社の新型コロナワクチン、感染予防効果は高いのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルス感染症のワクチンは、世界中でたくさんのメーカーが製造しています。その中でも大手のファイザー・ビオンテック社のワクチンはどの程度効果があるのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2021年5月6日ウェブ掲載された、ファイザー・ビオンテック社の新型コロナウイルスワクチンのイスラエルにおける医療従事者での感染予防効果を、有症状と無症状の感染に分けて検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

ファイザー社の新型コロナワクチンの有効性とは?

ファイザー・ビオンテック社の新型コロナウイルスワクチンの有効性は、有症状の感染を予防する効果は95%程度と、臨床試験などのデータから算出されていますが、無症状の感染にどの程度の有効性があるかは、まだ必ずしも明確ではありません。

今回の臨床データは、このワクチンの接種が急ピッチで進行しているイスラエルのもので、単独の医療施設の6710名の医療従事者を対象とした調査です。

平均年齢は44.3歳で66.5%が女性です。88.7%に当たる5953名は1回以上のワクチン接種を受けていて、82.2%に当たる5517名は2回のワクチン接種を受けています。11.3%に当たる757名はワクチン接種を受けていませんでした。

中間値で63日の経過観察を行っています。この医療機関ではRT-PCRによる感染のスクリーニングが、その感染リスクに合わせて定期的に施行されていたので、無症状の感染についてもチェックが可能であったのです。

有症状の感染を95%、無症状の感染を86%予防

その結果、有症状の新型コロナウイルス感染症はワクチン接種群(2回接種)の8名と、未接種群の38名に認められ、ワクチンは有症状の新型コロナウイルス感染症を、97%(95%CI: 0.01~0.06)有意に低下させていました。

無症状の感染については、ワクチン接種群(2回接種)の19名と、未接種群の17名が、無症状の新型コロナウイルス感染症に感染していて、ワクチンは無症状の新型コロナウイルス感染症を86%(95%CI:0.07~0.31)有意に低下させていました。

無症状感染でも高い予防効果を発揮

このように、現行日本でも接種が行われているファイザー・ビオンテック社のワクチンは、有症状の感染にはやや劣るものの、無症状感染でも高い予防効果が確認された、というデータが出揃いつつあり、日本でも同様のデータの蓄積に期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36