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2021.09.27

ワクチン3回目接種(ブースター接種)で有効期間はどれくらい延びる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナワクチンは感染予防効果が高いものの、有効期間は短いとされています。もし、ワクチンを3回接種するとどれくらい有効期間は延びるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2021年9月15日ウェブ掲載された、ファイザー・ビオンテック社新型コロナウイルスワクチンの、3回目接種(ブースター接種)の効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

3回目の追加接種は有効か?

ファイザー・ビオンテック社の新型コロナmRNAワクチンの有効性は、短期的には有症状の新型コロナウイルス感染症を、約95%予防すると報告されています。

ただ、その有効性は接種完了後半年が経過すると、かなり低下すると想定されていて、特にデルタ株などの感染力の強い変異株の感染においては、その有効性は50%程度まで低下するのではないか、という推計も発表されています。

イスラエルはファイザー・ビオンテック社製ワクチンを主体とする、新型コロナワクチンの国民への接種を、世界に先駆けて行なって来た国ですが、一旦は感染者が1日100万人当たり2件までの低下したものの、その後デルタ株の感染が拡大すると、再び増加に転じ、その原因としてワクチン接種後数ヶ月以上経過したことによる、有効率の低下が考えられました。

そのため2021年7月12日より、感染のリスクの高い対象者に、3回目の追加接種(ブースター接種)が開始され、その後60歳以上の高齢者に接種対象は拡大されました。

ブースター接種者を対象に罹患リスクを調査

今回のデータは2021年7月30日から8月31日までの間に、60歳以上で2回目のワクチン接種から5ヶ月以上経過後に、3回目接種を施行した1137804名データを解析し、ブースター接種後の感染率を、未接種と比較検証しています。

その結果、ブースター接種後12日以降の、有症状新型コロナウイルス感染症の罹患リスクは、未接種と比較して、11.3倍(95%CI:10.4から12.3)有意に低下していました。重症感染の発症リスクも、19.5倍(95%CI:12.9から29.5)有意に低下していました。

デルタ株流行後に、有症状感染の予防効果が、95%から50%に低下したと想定すると、それがブースター接種で10倍のリスク低下することで、計算上は50%のリスクが5%になり、結果として以前の95%の有効率に戻った、ということになる訳です。(上記文献の考察にある説明です)

問題はどれくらい効果が持続するか

今後の問題はこの効果がどれだけ持続するものなのか、ということで、数年有効ということであれば非常に意義のあるデータですが、これがまた半年で失速するということであれば、半年ごとに追加接種を繰り返すというのは、コスト的にもあまり現実的でないという気がします。

今後の検証を注視したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36