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2021.03.31

コロナ濃厚接触者の「適切な隔離期間」とは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナの濃厚接触者になると、日本では14日の隔離が求められます。これは適切な隔離期間なのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2021年2月19日ウェブ掲載された、濃厚接触者の隔離期間についてのレターです。

▼石原先生のブログはこちら

濃厚接触者の適切な隔離期間とは?

アメリカにおいては、新型コロナウイルス感染症の患者の濃厚接触者は、14日間の隔離にて経過をみることが、現行のCDCの基準においては推奨されています。

一方でこれまでの臨床データからは、接触から症状出現までの所謂潜伏期は、成人では4~5日、子供では6~7日となることが多いとされていて、この知見から接触から9日の時点までには、多くの感染では遺伝子検査が陽性化することが想定されます。

ここで1つの考えとして、接触から9日目に一度RT-PCR検査を施行し、それが陰性であれば10日目からは隔離を解除する、という方針が成立します。

これは実際に妥当な方法でしょうか?

PCR検査のタイミングと隔離期間を検証

今回のデータはアメリカ、フロリダ州のアラチュア郡において、義務教育の学生の感染事例とその濃厚接触者のRT-PCR検査を行った事例を解析し、検査を施行するタイミングと適切な隔離期間についての検証を行っています。

この州の規定では、濃厚接触者は同時に感染した可能性のある場合には、接触後3日の時点で遺伝子検査を施行し、それ以外は9日目の時点で検査を行い、9日目の検査が陰性であれば翌日からの登校が許可されています。

ただ、実際には検査の日時は、10~14日目に遅れることもあるようです。検査が施行されない場合には、隔離期間は14日で設定され、無症状であればその翌日からは登校可能となっています。

2020年8月1日から11月30日の期間において、257名の学生がRT-PCR検査で陽性と判定されています。この257名の感染者の濃厚接触者として、2189名が隔離対象となり、そのうち134名は接触後3日に、839名は接触後9から14日後に遺伝子検査を受けています。

3日目に検査を受けた134名のうち、陽性となったのは10.4%に当たる14名で、9~14日の間に検査を受けた839名のうち、陽性となったのは4.8%に当たる40名でした。

9~14日の間に検査を受けて陰性であった799例のうち、14日を超えて症状が出現して感染が確認されたのは1例のみで、遺伝子の解析では、接触した感染事例とは別のウイルス株が同定されました。

接触後9日~14日後に陰性なら隔離解除してOK

要するに、接触の後9~4日の間で遺伝子検査を施行し、その結果が陰性であれば、その翌日から登校してもほぼ問題はないと判断されます。例外の1事例も、別のウイルスの感染が隔離期間中に起こった、と考えられるからです。

一方で全く検査をせずに9日以降14日未満で隔離を終了すると、最大で8.2%の学生は感染したまま登校する可能性がある、ということになります。

このデータを元にして、接触後9日の時点で遺伝子検査を施行して、それが陰性で無症状であれば登校を10日目から許可するという考え方と、検査はせず無症状で14日経過すれば翌日から登校を許可するという考え方を比較すると、9日目に検査をして振り分ける方法の方が、学習期間の損失を少なく出来る、と試算されました。

検査の日時や回数を規定して、濃厚接触者の負担軽減を

現状日本においては、明確に接触からの検査の期日は規定されておらず、概ね接触5日目以降の検査が保健所では推奨されていて、検査が陰性であっても、無症状で14日の隔離期間が設定されています。

この方針が現時点で誤りとは言い切れませんが、検査の日時や回数を規定することにより、より短期間での隔離解除を可能にすることは、濃厚接触者の負担を軽減する点でも有意義なことは間違いなく、今後の科学的議論を期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36