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2021.04.17

快適な老眼鏡選びや目のエイジング。「老眼」と上手に付き合う方法【老眼・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

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40歳を過ぎた頃から増える老眼ですが、ネガティブなイメージが強く、老眼鏡をかけることに抵抗がある方も多いですよね。しかし、無理をして裸眼を続けていたり、目に合わない老眼鏡を使用することは、眼精疲労をはじめとした様々な身体の不調の原因にもなります。
そこで今回の記事では、老眼最新治療、目のエイジング方法など、老眼と仲良く付きあっていく方法を、昭和大学・眼科学講座教授の西村栄一先生に聞きました。

老眼かな?と思ったら、まずは眼科で検査を!

老眼を疑って眼科を受診された場合には、まず視力を測り、近視、遠視、乱視などの屈折異常がないか検査します。つぎに細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、眼底検査などで、目に他の病気がないか調べ、必要に応じて眼圧や視野の検査などをします。こういった検査をきちんと行うことにより、老眼以外の眼病がないかを確認します。

メガネ&コンタクトレンズは眼科で処方箋を

老眼鏡やコンタクトレンズを作るときは、視力や使用目的にあったものを眼科専門医に処方してもらうことが大切です。自分の目にきちんと合っていない老眼鏡を使うと、逆に視力の低下を招いたり、眼精疲労の原因になったりします。先ず眼科で検査を行い、処方箋を書いてもらってから、眼鏡店で作るようにしましょう。検査に対応している眼鏡店もありますが、日本では視力の測定や適切なレンズ選びをする国家資格がありません。

専用の眼鏡やコンタクトで対応。老眼の治療・対処法

老眼治療はその方の視力やライフスタイルに合う、メガネやコンタクトの処方が基本です。

choice1 : 老眼鏡

これまで裸眼で生活してきた、元々目が良かったという人には、近くを見る時だけに必要な老眼鏡を作ります。老眼になった目の「ピント調節機能」をレンズが補助して、見たい距離をはっきりと見えるようにします。

ここで注意したいのは、「見たい距離」が人それぞれ違うことです。例えば、パソコンを使う距離は50cm、本を読む距離は40cmなど、生活スタイルで必要な距離にあわせて、度数を決めるのが老眼鏡の基本です。眼科を受診した際には、【仕事や趣味の内容】【どんな使い方をするのか】【何を見たいのか】などについて、見たいものやライフスタイルを医師に細かく話してください。

choice2 : 遠近両用メガネ

もともとメガネをしていた方には、遠近両用メガネをお勧めします。遠近両用メガネとは、メガネレンズの上の部分に遠くを見るレンズ、下の部分には近くを見るレンズが入っていて、視線を上下に動かすことによって、1つのメガネで遠くも近くも見えるという便利なメガネです。

老眼鏡だと使うシーンによってかけ外しが必要ですが、その面倒がないのが遠近両用メガネの良いところです。最近は、老眼鏡をかけていることに気付かれない、上下のレンズの境目がないタイプが人気です。しかし、遠くと近くを見ることができるレンズの範囲がそれぞれ狭いため、長時間近くのものを見続ける作業には向かないことがあります。医師に使い道をよく相談した上で、処方してもらったほうがいいでしょう。

choice3 : 遠近両用コンタクトレンズ

今まで主にコンタクトレンズを使ってきた方には、遠近両用コンタクトレンズという選択肢もあります。その名の通り、1枚のコンタクトレンズで対応できて便利ではあるものの、老眼が進んでしまってから遠近両用コンタクトレンズを使い始めると、視界が歪んだり、ピントが合いづらく感じたりと、うまく使えないことがあります。また、花粉アレルギーのある方や、ドライアイの方の使用もお勧めしません。

番外:老眼を「白内障手術」で治す選択肢も

最近では白内障の手術で、同時に老眼も治すことも可能です。白内障の手術は簡単に言うと、「濁ってしまった水晶体を綺麗なレンズに入れ替えること」ですが、この眼内レンズに多焦点レンズという「遠く、中間、近く、全部に焦点があうレンズ」を入れることが出来ます。すると、裸眼でも手元にピントが合うようになるため、一生老眼鏡の必要がなくなると言うわけです。

日本では主に、白内障の手術が必要な60代〜70代の方がこの手術を選択していますが、海外では、老眼の改善のために、白内障になる前の若い世代でこの手術を行っている方もいます。

目に優しい4つの習慣で、目のエイジングケアをしよう!

避けられないとはいえ、少しでも遅らせたい「老眼」。目を酷使して、老眼を進行させないように、日常生活で気を付けるべき対策を聞きました。

テレビ・パソコン・スマホの連続使用は30分〜1時間まで

「朝はものがよく見えるが、夕方になると見えなくなる」とお困りの患者さんが相談によくいらっしゃいますが、この見えにくさは、まさに目の疲労から来ています。目が疲れると、老眼が強くなるのです。

「近くのものを長時間凝視する」「テレビやパソコンなどから、常に情報を得ている」といった習慣は、現代人にはよくあること。しかし、目のためには、こうしたデジタル機器の使用時間を減らす努力が必要です。例えば、「30分〜1時間に一度は、画面から目を離して休憩する」「目を機器から50cm以上離す」などのルールを作り、なるべく目の負担を減らしましょう。

まばたき&目薬で乾燥予防

パソコンやスマホの利用時には、画面に集中しているためまばたきの回数が減ってしまいます。すると、目の表面の脂分が減って、涙が蒸発しやすくなる「ドライアイ」になりがちです。目の表面が乾くと、傷つきやすくなったり、疲れの原因になります。パソコンやスマホを見る時は、まばたきの回数を意識したり、たまに目を閉じて休ませると良いでしょう。また、目薬を使って、潤いを保つことも有効です。

紫外線から目を守る

紫外線が眼球に入ると、老化を促進する活性酸素が体内に大量発生します。これは目を酸化させることに繋がるので、老眼が進行してしまうこともあります。日差しの強い季節は、日傘やサングラスなどでしっかりと紫外線から目を守りましょう。

目を疲れさせない光を心がける

スマホやパソコンの過度に明るい画面は、眼球にとってストレスになります。スマホを見る時は、文字が見えにくくない程度に照度を落とすといいでしょう。周囲の明るさに応じた画面照度の自動調節機能を使うと便利です。(機種によっては出来ない場合があります)

また、細かい文字を見るときは、部屋の照明にも気を配るようにしましょう。暗い部屋での使用を避けるのはもちろんですが、本やスマホが影になってしまわないよう、天井灯と電気スタンドを併用して、部屋の中全体と見るものの両方を明るくすることが大切です。

定期的な眼科検診で老眼のチェックを!

目に良い生活をしていても、老眼は加齢と共に進行していきます。2年に1回程度は、眼科で老眼鏡が目に合っているかどうかを確認してもらう必要があります。他の目の病気のチェックも兼ねて、定期検査を心がけましょう。

人生100年時代と言われる今は、ほとんどの方が「老眼」を経験します。生涯現役で仕事や趣味に妥協をしないためにも、早いうちから「老眼対策」に取り組んで、「100歳になってもよく見える」を目指していきましょう!

西村 栄一(にしむら・えいいち)先生

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昭和大学 眼科学講座 教授
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 眼科 診療科長 

【プロフィール】
1995年 昭和大学医学部卒業後、昭和大学藤が丘病院眼科 助手、講師を経て、2010年より University of Utah, John.A.Moran eye center Post Doctoral Research Fellow、 2012年に昭和大学医学部眼科学講座 講師 、2013年に昭和大学藤が丘病院眼科 講師 、2014年に昭和大学藤が丘病院眼科 准教授を勤めたのち、2015年より現職。

【資格】
日本眼科学会 眼科専門医、日本眼科学会 眼科指導医、公益社団法人日本白内障屈折矯正手術学会 理事、公益社団法人日本眼科手術学会 理事、日本白内障屈折矯正手術学会雑誌 編集委員長

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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