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2021.04.17

早い人は30代後半から始まる!押さえておきたい老眼の基礎知識【老眼・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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誰もがいつかはなるものだけど、認めたくない「老眼」。何歳ごろから始まると思いますか?

なんと早い人では30代後半から老眼は始まります。今回の記事では、ほぼすべての人がなるであろう「老眼」を正しく理解し、長く付き合うための方法や、目のエイジングケアなどをお伝えします。お話を伺ったのは、昭和大学・眼科学講座教授の西村栄一先生です。

西村 栄一(にしむら・えいいち)先生

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昭和大学 眼科学講座 教授
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 眼科 診療科長 

【プロフィール】
1995年 昭和大学医学部卒業後、昭和大学藤が丘病院眼科助手、講師を経て、2010年より University of Utah, John.A.Moran eye center Post Doctoral Research Fellow、 2012年に昭和大学医学部眼科学講座 講師 、2013年に昭和大学藤が丘病院眼科 講師 、2014年に昭和大学藤が丘病院眼科 准教授を勤めたのち、2015年より現職。

【資格】
日本眼科学会 眼科専門医、日本眼科学会 眼科指導医、公益社団法人日本白内障屈折矯正手術学会 理事、公益社団法人日本眼科手術学会 理事、日本白内障屈折矯正手術学会雑誌 編集委員長

なぜみんな老眼になるのか?

まずは、目の仕組みを知ろう

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目の中には「水晶体」という、カメラのレンズのような役割をしている部位があり、厚さを変化させることで、遠くのものや近くのものにピントを合わせる働きをしています。近くのものを見るときには、水晶体を吊り下げている「毛様体筋(もうようたいきん)」という筋肉がゆるみ、水晶体が薄くなります。反対に、遠くを見るときは毛様体筋が緊張して水晶体が厚くなります(※)。

私たちの目は、カメラレンズのオートフォーカスのように、水晶体の厚みをスムーズに変えることで、ピントを合わせています。

※2021.4.19 水晶体の動きについて修正しました。

「毛様体の筋肉の老化」と「水晶体が硬くなる」

ところが、歳をとると脚や腕の筋肉が衰える様に、毛様体の筋肉も弱くなり、水晶体の厚みをスムーズに変える力が衰えます。加えて、水晶体自体も加齢によって硬くなり、弾力がなくなるので、毛様体筋が緊張しても水晶体の厚みが変わらなくなってしまいます。この二つの原因によって、ピントが合いづらくなり、老眼が起こります。

老眼の症状を解説

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主な症状としては、上記のようなものがあります。

初期の老眼では、これらのはっきりとした症状が起きる前に、スマホや本などを長時間見ていて、ふと顔をあげると遠くがかすんで見え、じっと見ていると、だんだんはっきりしてくるというような症状が自覚されます。そのうちに、新聞や辞書などの小さい字を読むときに、以前よりも目から離さないと読みづらくなったり、少し暗くなる夕方頃から、ものが見づらくなっていきます。

個人差はあるのか?

老眼は、加齢による生理現象のためどんな人にも起こりますが、始まる年齢には個人差があります。早い人は30代後半から、多くは40歳ごろから老眼の症状を自覚し始め、45歳くらいで老眼鏡が必要になります。しかし、パソコンやスマホなどを長時間使用したり、普段から細かい手仕事をする人、いろいろな距離を見る必要がある人などは、目を酷使しているので、早くから老眼に気がつく傾向があります。

目が良かった人ほど、老眼が早く始まるのは本当?

これまでメガネとは無縁だったような「目が良い人」ほど、老眼を早く感じる傾向があります。

視力の高い人は、遠くの文字も手元の文字も無理なく読めますが、遠くのもの、近くのものに焦点を合わせるために「毛様体筋」を頻繁に使うことで、目に負担をかけています。近視の方は、遠くのものが見えにくいため、遠くのものはメガネの力を借りて焦点を合わせますよね? もともと近くのものにピントが合っている状態なので、近くを見るために水晶体の厚さを変える必要がなく、老眼を感じにくい傾向があるようです。

老眼を放っておくとQOLが低下する

老眼は、放っておくことで失明につながる病気ではありませんが、老眼が始まっているのに老眼鏡などを使わずに、無理して裸眼を続けていると、老眼の症状に眼精疲労が重なって体調が悪くなることがあります。例えば気分が悪くなったり、頭痛、肩こり、食欲がなくなるなど、いろいろな症状がでてきます。視界のピントが合わない状態で生活をするのは、身体にとってもあまりいいことではないのです。

老眼としっかり向き合ってQOLを維持しよう

「最近、近くが見えない」「夕方、運転がし辛い」「目が疲れる」など、老眼を疑うような症状を感じたら、まずは眼科で検査を受けましょう。自分では「老眼だろう」と思っていても、実は他の病気による視力低下の可能性もあります。「近くだけが見えない状態なのか?」「視野が欠けていないか?」などの検査をして、本当に老眼の症状なのかどうかを診断する事は非常に大切です。目の病気の中には、失明に繋がるものもありますので、自己判断をしないようにしましょう。

なかなか認めたくない「老眼」ですが、裸眼で無理を続けることは、目を疲れさせ、結果として老眼をより進行させてしまいます。後悔しないためにも、老眼は早めの対処が大切です。後編では、老眼と仲良く付き合うための、快適な「老眼鏡」の選び方や、最新老眼治療、目のエイジングケアなどをお伝えします!

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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