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2018.09.04

感動したり悲しいときに涙が出るのはなぜ?【カラダの不思議#11】

KenCoM編集部

誰もが日々体験している当たり前の生理反応。しかしなぜ起きるかの理由を説明しようとしても、できないんですよね?!というわけで、科学的な根拠を元に解説する本連載が「カラダの不思議アルアル」です。解説していただくのは、KenCoM監修医の石原藤樹先生。

第11回目は、読書や芸術に触れる機会の多いこの時期ならではの「感動したり悲しいときに出る涙」についてです。これにはどんな意味があるのでしょうか?

感動したり悲しいときに出る涙の理由とは?

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そもそも涙ってどんな役割があるの?

石原先生「涙は、涙腺から出てきて血液から生成されているものです。

涙には粘膜成分や抗炎症成分が含まれており、主に眼球を乾燥させないためや、感染の予防のために分泌されます」

感情で泣くのは人間だけ!?

石原先生「実は、感情で涙を流すのは、人間だけの特長だと言われています。また、感情が高まることで涙が出ることは周知の事実ですが、そのメカニズムや、何のためなのかはよくわかっていないんです」

感情によって涙の味が違うって本当!?

石原先生「それは本当!とは言えないですね。

感動したり悲しいという感情による涙と、痛みや眠気などによる涙では、前者のほうがストレスホルモンが多かったという報告や、涙の成分が違うという報告はあります。しかしそれが本当にそうかどうかは定かではないからです。

涙の成分は汗と同じなので、塩分濃度が変わってしょっぱくなるなどの変化をする可能性はありますが、濃度が変わるメカニズムなどはわかっていません」

番外編!もらい泣きはどうして起こるの!?

石原先生「ちなみにもらい泣きについては、ミラーニューロンと呼ばれる神経の働きによるものだと考えられています。

これは赤ちゃんのときに頻繁に起きている学習反応で、相手が笑ったり怒ったりする表情を見て、感情に合わせた表情を学んでいくものです。

自分と同類の感情と動きを脳で真似しているので、相手の反応が“移る”という性質を持っています。しかし大人になると起こりにくくなるという側面もあります」

感情で涙が出るが原因は不明

感動したり、悲しいときに涙を流す。その当たり前の現象でも理由やメカニズムはわかっていないというのは不思議ですよね。
しかし泣いた後はなんだかスッキリします。もしかしたら、感動や悲しみというストレス感情を和らげるという目的があるかもしれません。

<監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

(取材・文/KenCoM編集部)

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