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2016.08.10

糖尿病はなぜ怖い?失明・透析もありうる糖尿病の合併症とは

KenCoM公式ライター:守城美和

「健康診断でメタボだって言われちゃってさぁ…」「血糖値注意されちゃったよ」こんな会話を会社の同僚や友人としたことがある人は多いのではないでしょうか。「このままだと糖尿病になってしまいますよ!」とお医者さんから注意された経験がある人もいますよね。
しかし「糖尿病に注意しなきゃなぁ」と頭では思っていても、実際に糖尿病になるとどんな健康への影響があるのかと、知らない人が多いため、なかなか本気で取り組めていない人が多いのも現状です。
そこで今回は「糖尿病がどうして怖いのか」「糖尿病が進行するとどのような状態になるのか」について見ていきたいと思います。

糖尿病はなぜ怖い?

高血糖が続く「糖尿病」だと、血管が詰まりやすくなる

そもそも「糖尿病って何が悪いの?」と思っている人もいますよね。
簡単に言ってしまえば糖尿病は「摂取したブドウ糖が利用されない」という点に問題があります。ブドウ糖が適切に細胞で利用されない状態が続くと、体は栄養失調になり、利用されないブドウ糖は、おしっこから排泄されます。このために、おしっこに糖が沢山出るのです。糖尿病という名前の由来はここにあります。

排泄されるブドウ糖の量には限界があるので、血液中にもどんどんブドウ糖が溜まっていってしまいます。この状態がいわゆる”高血糖”です。
高血糖になると、体は糖を沢山おしっこに出そうとするので、おしっこの量が増えて脱水状態になります。口が渇くので飲み物の量が増えますが、この時に糖分を含むジュースなどを飲んでしまうと、よけいに血糖値が上がるので、更にのどが渇くという悪循環になってしまうのです。

一度糖尿病になると一生治らない?

「糖尿病は一度なってしまうと一生治らない病気だから怖い」と思っている人も多いのではないでしょうか。確かにすい臓の病気でインスリンが出なくなるタイプの糖尿病(1型糖尿病)は自然に治ることはありません。しかし、多くの糖尿病は食べ過ぎや肥満などの生活習慣の乱れが元にあるので、一度糖尿病と診断されても、まだそれほど悪い状態になっていなければ、治療や生活習慣の改善で、血糖値を正常な状態に近づけることは可能です。

糖尿病で本当に怖いのは”合併症”

糖尿病で本当に怖いのは合併症です。糖尿病の状態が数年以上と長くなると、高血糖が血管の異常を起こすようになるのです。これが糖尿病の合併症です。合併症が起こってしまうと、体の一部や機能を失ってしまったり、生活に厳しい制限が課せられたりします。
そんな糖尿病の合併症には、3大合併症と呼ばれる小さな血管の合併症と、動脈硬化による大きな血管の合併症の2種類があります。

それでは実際に合併症や、糖尿病患者の生活についてみていきましょう。

本当に怖い糖尿病の3大合併症とは?

1、悪化すると失明も ~糖尿病性網膜症~

高血糖の状態が続くと、血管がもろくなったり詰まりやすくなったりするような変化が起こります。その症状が目にあらわれたものが「糖尿病性網膜症」です。目の網膜という部分の血管に、出血などの変化が起こり、症状が進行すると、緑内障などを併発して、最終的には失明に至ってしまうこともあります。

現在の医学では、一度失われた網膜の機能を完全に元に戻すことはできません。健康診断はサボらず受けるようにし、糖尿病と診断されたら定期的に眼底検査を行って進行予防に努めることが最大の治療となります。

2、最悪手足の切断も ~糖尿病性神経障害~

糖尿病のために、足を切断する、というような怖い話があります。なぜそんなことが起こるのでしょうか?
糖尿病の状態が長期間続くと、神経の働きが弱くなります。この影響は全身におよぶのですが、足先のような場所の細い神経が特に影響を受け、しびれが出たり、痛みを感じにくくなったりします。
痛みを感じにくくなるということは、ケガをしてもそれに気がつきにくい、ということを示しています。特に多いのが、気がつきにくい足のケガです。糖尿病では動脈硬化の影響で足の血行も悪くなります。また感染症にもかかりやすくなり、治るのにも時間が掛かります。

そのために足のケガに細菌感染を起こして、それが悪化したり、血管が詰まったりして、細胞が死んでしまう「壊死」の原因となるのです。

現在の医学では、壊死した部分を完全に再生することはできません。できることは壊死した部分をできるだけ早く切断し、それ以上壊死が広がらないようにすることだけなので、予防や早期発見が最も重要となります。

3、最終的には透析が必要に ~糖尿病性腎症~

血糖値が高い状態が続くと、血液中の老廃物をろ過する働きを持つ腎臓に負担がかかってしまいます。この状態が長期間続くと腎臓の働きが低下してしまいます。これが「糖尿病性腎症」です。

糖尿病性腎症は、進行するとやがて”腎不全”に陥り、人工透析を受けないと尿毒症で命を落としてしまう状態になることもあります。
現在の医学では失われた腎臓機能を完全に回復させる手段はありません。”腎臓移植”という方法はありますが、それが出来る患者さんは限られています。したがって、糖尿病性腎症もその予防が何よりも大切なのです。

糖尿病の大血管合併症とは?

今説明した3大合併症は、小血管合併症とも言われています。これは目や腎臓などにある小さな血管に起こる異常だからです。
糖尿病の合併症にはもう1つ、もっと大きな血管に起こる合併症があります。それが大血管合併症です。大血管合併症というのは動脈硬化のことです。糖尿病が長期間続くと、全身の血管に動脈硬化が進行します。

そして、脳卒中や心筋梗塞、足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症などの原因となるのです。心筋梗塞は心臓の病気で、糖尿病とは関係ない、と思っている方も多いのではないでしょうか?実はそうではなく、糖尿病は心筋梗塞の大きな原因なのです。

健康診断で”注意”の段階から気をつけましょう

糖尿病のかかりやすさは、生活習慣だけでなく”体質”や”遺伝”などの影響も指摘されていますが、多くの人は「健康診断で注意された」という段階であれば、食生活や生活習慣にちょっと気を使うだけで、血糖値を下げることは可能です。

将来の合併症を予防するためにも、「よく噛んで食べる」「腹八分目にする」「3階以下は階段を使うようにする」など、本当にちょっとした生活改善を、意識することからはじめてみませんか?

参考サイト

<著者プロフィール>

■守城 美和(かみしろ・みわ)
介護福祉士として、老人・障がい者(児)介護の仕事に携わってきたが、結婚・妊娠を機に離職。現在は「インターネットで検索しても答えがなかなか見つからない」という自身も体験してきたもどかしさを一人でも多くの人に解消してもらえるよう、子育てをしながらWebライターとして活動中。得意分野は”医療”と”福祉”

<監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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