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2020.08.28

糖尿病予防法を学ぼう!感染拡大に備えて今日からできる事【新型コロナと糖尿病・後編】

kencom公式:ライター・森下千佳

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自粛期間に、いわゆる「コロナ太り」になっていませんか?
糖尿病の一歩手前の予備軍であっても、合併症が進み始める人はいます。糖尿病の合併症を防ぐためにも、そして、万が一新型コロナウイルスに感染した時に重症化しないためにも、セルフケアで血糖値のコントロールを始めましょう!
今日からできる糖尿病予防法を慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科教授 伊藤裕先生に聞きました。

まずは、目標値を知ろう!

糖尿病を予防・改善するためには、血糖値を始め、体重、血圧、血中脂質のコントロールが必要です。中でも、手軽に自宅で測れる体重と血圧の目安をご紹介していきます。(※体重計、血圧計が必要です)

まずは、具体的な基準値を知ってください。それを目標値に定めることで持続してコントロールしやすくなります。
体重増加は糖尿病を増悪させるので、目標値に向かって減量していきましょう。

糖尿病のある人は、高血圧を伴うと動脈硬化や腎症の悪化が起こりやすくなるため、血圧の管理は特に大事です。できれば毎日測定し、自分の努力を客観的に評価してモチベーションを高めていきましょう。

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食事の改善で糖尿病リスクを軽減しよう!

空腹を感じる時間を持つ!

肥満が原因で糖尿病、糖尿病予備軍になっている人は、食べ過ぎや飲み過ぎといった食生活に原因があります。
食べ過ぎないためには、一日のうちで「ものすごくお腹が空いた!」と感じる時間を持つことが大切です。空腹を感じられるということは、「規則正しくご飯を食べている」「運動などでカロリーが消費できている」「食事が適量」ということの表れ。
小腹が減ると、ついつい何かつまんでしまいますよね。まずは、その習慣を止めること。しっかりと空腹を感じる事ができたら、それだけで成功です!

毎日、同じ時間に食事をする

毎日、同じ時間にご飯を食べる事も大切です。食事が規則正しいと、食事が来る時間帯に合わせて身体が準備出来るようになります。満腹を感じるホルモンの分泌や、腸内細菌の動きなどが活発になるので、食べ過ぎを防ぐことにも繋がるのです。
不規則な生活を続けていると、食べ物の代謝に影響したり、夜食やつまみ食いなどで食事回数が多くなって、摂取エネルギーが増えすぎて太りやすくなります。
また、寝る直前にご飯を食べると身体に負担がかかるので、出来れば就寝前2時間は食事を取らないように心がけてください。

食事のバランスに気を配る

食事バランスに関しては、次の3つのことをまず気にしてみるといいでしょう。

■炭水化物を控える
ご飯や、うどん、パンなどの炭水化物は、糖質が多いので減らすように意識すること。
日本人は、「ご飯がないとおかずが食べられない」という方も多いので、おかわりをしないなど、続けられる範囲で心がけるところからはじめましょう。

■脂肪分の少ないタンパク質をとる
満腹感を持続させるタンパク質は、糖質が少ない上に身体の中でゆっくりと消化されるので、血糖値の上昇と低下がゆるやかになります。豆類などといった植物由来のタンパク質のほか、魚、たまご、鶏肉、脂肪の少ない赤身の牛肉などを積極的にとっていきましょう。

■根菜類などの野菜をとる
野菜に含まれる食物繊維と水分が満腹感をもたらすのに一役買ってくれます。また、野菜類を先に食べると食品に含まれる糖の吸収を遅らせ、食後の血糖値の急激な上昇を防ぐ働きがあります。
特に、人参、大根、ごぼうなどの根菜類は腸内細菌の働きを活発にするので意識してとりましょう。

積極的に取り入れたい食べ物

納豆、ヨーグルトなどの発酵食品や、海藻類、きのこ類、根菜類などは食物繊維が多く、腸内環境を整えて太りにくい身体を作ってくれます。
まずはこれらの食品を、いつもの食事と代替するのではなく、「普段の食事に、納豆を加えてみよう」といった具合に、気軽に一品加えてみてください。ストレスがなく、長続きすると思います。
厳しすぎるやり方をして途中でくじけないように、楽しんで取り入れていきましょう。

効果的な運動で、血糖値や血圧を改善!

運動は万病の薬。メリットは?

運動には、様々なメリットがあります。血糖値や血圧、血中脂肪を改善するだけでなく、インスリンの効きがよくなったり、動脈硬化による合併症の進行や発生を防ぐ効果もあり、糖尿病予防には大切です。
また将来的には、加齢による筋力低下、骨粗鬆症の予防、そして認知症の予防にも繋がるので、まさに万病の薬と言えます。
ただし、合併症がある人や糖尿病が悪化している人は、運動療法が制限される場合があるので、医師に相談してください。

決まった時間に動く癖をつける

外に出なくなることで、運動量が大きく減ってしまった人も多いかと思います。しかし、「家の中にいる時間が長いということは、家の中での運動は確実にできる」はず! といっても、自発的に運動を続けるのは難しいものですよね。

そこでオススメするのは、決まった時間に運動を促してくれるプログラムに乗ってしまうこと。テレビの「ラジオ体操」でも良いですし、最近は運動をサポートしてくれる質の良いアプリが沢山あります。
実際に、私も自粛生活をきっかけに「7ミニッツ ワークアウト」というアプリを使い始めました。これは、7分間に30秒間のワークアウトを12種類、日替わりで教えてくれるというもの。運動時間はたった7分間ですが、効率の良い運動なので大抵の方には十分な運動量です。
こういったアプリの良いところは、あらかじめアラームが鳴るように設定しておけば、運動をする動機付けをしてくれること。
数日頑張って続けていれば習慣化していき、「やらないと気持ちが悪い」という気持ちになるものです。「動機付けをして習慣化」。これが、運動を長続きさせるコツです。

感染拡大に備えて、予防すること

自分が糖尿病や糖尿病予備軍などと言われたら、気分は良くないものです。しかし、それは自分の健康をチェックするチャンスでもあります。
糖尿病を闇雲に恐れる必要はありませんが、放っておけば突然命に関わることもある病気。ぜひ、これを健康になる為のきっかけを与えてもらったと捉えて、自分の身体に興味を持って健康になることを楽しんで欲しいと思います。それが延いては未知のウイルスにも対抗することにも繋がっていくと思います。

伊藤 裕(いとう・ひろし)先生

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慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 教授

【プロフィール】
1983年京都大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科博士課程修了。米国ハーバード大学医学部博士研究員、スタンフォード大学医学部循環器内科博士研究員、京都大学大学院医学研究科臨床病態医科学講座助教授を経て現職。日本高血圧学会、日本心血管内分泌代謝学会理事長。日本糖尿病合併症学会Expert Investigator Awardなど、受賞多数。主な著書は、「臓器は若返る メタボリックドミノの真実」(朝日新書)、「なんでもホルモン」(朝日新書)、「「超・長寿」の秘密-110歳まで生きるには何が必要か」(祥伝社新書)など多数。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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