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2024.02.09

帯状疱疹の予防に不活化ワクチンは有効か?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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体内に潜んでいる水痘ウイルスが原因で発症する帯状疱疹は、放置すると後遺症も残る怖い病気。ワクチンを適切に接種して、なるべく発症を防ぎたいものです。

今回ご紹介するのは、Annals of Internal Medicine誌に、2024年1月9日付で掲載された、帯状疱疹予防ワクチンの有効性についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

帯状疱疹予防ワクチン、シングリックスはどの程度有効か?

帯状疱疹の予防ワクチンとして、現状最も有効性が高いと考えられているのが、遺伝子工学的手法を活用して作られた、シングリックスという名称の不活化ワクチンです。

その効果は臨床試験のデータにおいては、97%の高い予防効果が確認されています。

ただ、これは敢くまで臨床試験のデータであって、実際にこのワクチンを一般の不特定多数の人に使用した場合に、同じ有効性が確認されている、という訳ではありません。

シングリックスの予防効果を検証

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今回の研究は、アメリカの医療保険の大規模なデータを活用して、実地臨床でのシングリックスの帯状疱疹予防効果を、検証しているものです。

トータルで200万人近い一般住民データを解析したところ、シングリックス1回接種の累積の有効性は64%、2回接種の累積の有効性は76%でした。

シングリックスを1回のみ接種した場合、1年以内の有効率は70%でしたが、2年目には45%に低下し、3年目は48%、3年目以降では52%と算出されました。

2回接種を施行した場合、接種後1年以内の有効率は79%、2年目の有効率は75%、3年目と4年間は73%でした。

2回以上接種することで高い有効性を維持できる

このように、帯状疱疹予防ワクチンの有効性は、臨床試験のデータよりは低いものの、高いレベルで保たれていました。

その一方でワクチンを1回のみ接種すると、その有効性は1年でかなり低下していて、このワクチンは2回接種を必ず行うことが、必要であることが確認されたと思います。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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