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2021.03.24

疲れやストレスが引き金に!よく聞く帯状疱疹ってどんな病気?【帯状疱疹・前半】

kencom公式ライター:森下千佳

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長引く新型コロナ対策で、なんとなく心や身体が疲れていませんか? 
そんな疲れやストレスなどで免疫力が落ちたときこそ気をつけたい病気の一つに「帯状疱疹」があります。最近では「政治家や著名人が罹患した」というニュースが相次ぎ、病名をご存知かもしれません。ですが、皮膚がどうなるかがよくわからない人も多いはず。
今回はそんな「帯状疱疹」の基礎知識を、国立国際医療研究センター病院皮膚科診療科長・皮膚科医長の玉木毅先生に教えていただきました!

※皮膚の出来物など、ご覧になる方によっては不快になる画像が一部含まれております。ご注意ください。

玉木 毅(たまき・たけし)先生

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国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 皮膚科診療科長・皮膚科医長
1987年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部皮膚科教室入局。米国サウスカロライナ州立医科大学研究員、東京大学医学部附属病院皮膚科医局長、同分院皮膚科講師などを経て現職。医学博士、日本皮膚科学会東京支部運営委員、東京都皮膚科医会副会長、東京大学非常勤講師。

よく聞く帯状疱疹ってどんな病気?

水ぼうそうのウイルスによって発症する帯状疱疹

帯状疱疹は、「水痘帯状疱疹ウイルス」、つまり水痘(水ぼうそう)のウイルスによって発症する病気です。
子どものころなどに、水ぼうそうにかかったことがある人は、誰でも発症する可能性があります。

代表的な症状は、皮膚に現れる発疹や水ぶくれです。身体の左右どちらか片側に帯状に集中して現れるため「帯状」疱疹と言います。
また、発症直後はあせもに似た発疹が見られますが、あせもと違い、かゆみだけでなく「強い痛み」をともなうのが特徴です。

発症を抑えるには「免疫力」がカギ!

国立感染症研究所HP【年齢/年齢群別の水痘抗体保有状況 ,2017年】よりhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/8132-varicella-yosoku-serum2017.html

国立感染症研究所HP【年齢/年齢群別の水痘抗体保有状況 ,2017年】よりhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/8132-varicella-yosoku-serum2017.html

2017年に国立感染症研究所で行われた感染症流行予測調査によると、日本では成人の9割以上が水ぼうそうのウイルスを保有しています。
つまり、ほとんどの人が、「帯状疱疹を発症する可能性がある」ということです。

子どもの頃にかかった水ぼうそうは、治ってもウイルスが死滅するわけではなく、感覚神経の神経筋に残っています。
本来は、一度水ぼうそうにかかるとウイルスに対して免疫力が働くので、体内に残っていても特に症状は出ません。しかし、何らかの要因によって免疫力が低下してしまうとウイルスが増殖し、神経に炎症を起こして帯状疱疹を引き起こすのです。
つまり、免疫力を保てるかどうかが、重要な鍵になります。

発症のキッカケは加齢やストレスなど

水ぼうそうのウイルスが再活性化する仕組みはまだ詳しくはわかっていませんが、加齢やストレス、過労などが誘因になります。
特に患者さんが増えやすいのは、夏バテの出る夏から秋の連休後やお盆、年末年始など。日頃の疲れやストレスがたまり、一時的に免疫力が低下することでウイルスの再活性化を招くと考えられています。

また、がんや糖尿病など免疫の働きが低下する病気に罹ったり、抗がん剤治療など免疫の低下を引き起こしやすい治療を受けている際に帯状疱疹が出てしまうという事もあります。

「こんな症状があれば、帯状疱疹を疑え!」3つのポイント

疑うべき3つのポイント

帯状疱疹は、いきなり発疹や水ぶくれが出来るわけではなく、まずは患部にかゆみや、痛み、ピリピリ、モゾモゾするような違和感が出るのが特徴です。
多くの場合「前駆痛」と言って、痛みが数日から一週間続き、そのあとに小さな赤い発疹が現れます。その後、痛みがだんだんと強くなっていき(急性痛)、赤い虫刺されのような発疹が現れ、最終的には水ぶくれになります。

発疹は、身体の左右どちらか片側に生じて、進行すると発疹は帯状に広がります。発症しやすい部位は、胸、背中、腹部、顔などです。
症状には個人差があり、前駆痛がほとんどない人もいます。一方で、患部に衣類が触れる程度の軽い刺激でも強い痛みを感じる場合や、激痛が続いて眠れないなど日常生活に大きな影響を与えることもあります。

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この表のような症状が出ている場合は、早めに病院やかかりつけ医に診てもらうようにしましょう。

重症化すると神経障害に繋がるケースも

帯状疱疹の怖いところは、治療開始が遅れることで重症化し、目や耳、腹部などの神経に障害が起こったり、合併症を生じたりする場合があることです。
首から上に帯状疱疹ができた場合はウイルスが脳にまで移り、髄膜炎や脳炎などを発症する恐れがあります。
また、そこまでいかなくても、運動神経に影響が出てしまった場合は、腕が上がらなくなったり、難聴や顔面神経まひなどが起きることもあります。

他にも、陰部や臀部の帯状疱疹の場合には、「膀胱直腸障害」と言って尿や便が出にくくなることがあります。これは、神経の炎症によって、排泄機能に障害が出るためです。

後遺症が残る事もある

一般的に帯状疱疹は皮膚の発疹が治るのに合わせて痛みも次第に治っていきます。
しかし、なかには疼くような痛みが続く「神経痛」が長期間残るケースもみられます。これを帯状疱疹後神経痛と言います。

帯状疱疹後神経痛は数ヵ月で治ることもありますが、長い人では数年以上におよぶこともあるのです。
医学的には、帯状疱疹が発生してから3ヵ月以上痛みが続く場合に「帯状疱疹後神経痛」と診断されます。
高齢になるほど発症するリスクが高くなるうえに鎮痛薬が効かないことも多く、特殊な薬を処方しても痛みが完全に取り切れないときもあります。
帯状疱疹後神経痛は初期に適切な治療ができなかった人に多いので、早期に抗ウイルス薬による治療を開始すれば回避できることが多いです。
そのため、上記に挙げたような3つのポイントがある場合はできるだけ速やかに病院を受診するようにしてください。

帯状疱疹を長引かせないポイントと予防法は、後半で!

帯状疱疹の辛い後遺症や合併症に長く苦しまないようにするためには、とにかく早く医療機関を受診して、適切な薬物療法を受けることが大切です。
先ほどご紹介した「帯状疱疹を見分ける3つのポイント」を参考に、当てはまった方はすぐに皮膚科など帯状疱疹の治療を行っている医療機関を受診しましょう。

後半では、帯状疱疹と診断された後の治療の流れや、予防方法などを紹介します。今治療を受けている方にも、是非知っておいて欲しい基礎知識です。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。