メニュー

2021.08.15

新型コロナmRNAワクチンの重症予防効果はどれくらい?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

ファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」は有効性が高いと言われますが、感染を防ぐだけではなく、重症化を防ぐ効果もあるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2021年7月30日ウェブ掲載された、新型コロナウイルスmRNAワクチンの、医療従事者における感染予防効果と重症化予防効果を検証した臨床データです。

▼石原先生のブログはこちら

mRNAワクチンの重症予防効果はどの程度?

新型コロナウイルスワクチンのうち、ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による2種類のmRNAワクチンが、接種後1から2か月の間において約95%という高い有効性を持つことは、ほぼ間違いのない事実です。

ただ、無症状を含めた感染の予防効果と、感染してしまっても症状が軽くウイルス量が少ないのかどうか、つまり重症化予防効果があるのかというような点については、まだそれほどデータの蓄積がないのが実際です。

mRNAワクチン接種後に感染した人などを調査

今回の検証はアメリカの複数地域において、サポートスタッフなどを含む医療従事者、トータル3975名を登録し、2020年12月14日から2021年4月10日まで、17週間の経過観察を施行。その間は1週間に一度のRT-PCR検査を定期的に施行して、それ以外にも発熱などの症状があれば、その時点で検査を行なうという対応を継続しています。

そして観察期間中の感染率を、その時点でのワクチンの接種状況と比較検証しています。接種されたワクチンは、基本的にファイザー社もしくはモデルナ社のmRNAワクチンです。

その結果、観察期間中に204名(5%)の対象者が、新型コロナウイルス感染症に罹患していて、そのうちの5名は2回目のmRNAワクチン接種後、2週間以降で感染、11名は初回接種後14日以降で2回目接種後2週間以内で感染、156名はワクチン未接種での感染でした。

32名は1回目接種後14日未満での感染のため、ワクチンの有効性の解析には不適で除外されています。

未接種と比べて少ないウイルス量で、症状も軽い

ここから関連する因子を補正して計算すると、2回のワクチン接種後14日以降の有効率は91%(95%CI:76から97)で、1回ワクチン接種後2週間以降の有効率は81%(95%CI:64から90)と算出されました。これは有症状と無症状の感染を併せた有効率です。

ここでウイルスの排泄量をワクチン接種者と非接種者の感染で比較すると、ワクチン接種者ではウイルス量が40%低下していて、38度以上の発熱などの症状の発症率も58%低く、臥床期間も2、3日短くなっていました。

これは概ねワクチン接種後1から1か月程度の期間の感染ですが、実際に有症状と無症状を併せた感染のリスクを90%以上低下させる効果があり、ワクチン接種後の感染事例においては、未接種と比べてウイルス量が少なくて症状も軽く、重症化予防効果のあることも確認されました。

信頼できるデータの蓄積を

このように、短期の有効性については非常に高い効果のあるmRNAワクチンですが、現状の問題は変異株、特にデルタ株への有効性と接種後数か月以降の時期における有効性で、今後そうした点についても信頼の置けるデータの蓄積を待ちたいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36