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2023.12.17

通院の負担が減る?いつもの薬を手軽に受け取れるリフィル処方箋ってどんなもの?【おくすりコラム】

kencom公式:薬剤師ライター・高垣 育

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毎月同じ薬をもらうので、2回目以降は診察を受けなければ時短になるのに、と病院の待合室で思ったことはありませんか。症状によってはそれが可能になることをご存知でしょうか。今回は、一定の条件を満たせば同じ処方箋を何度か使えるリフィル処方箋について説明します。

そもそも処方箋とは

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そもそも処方箋とはどのようなものなのでしょうか。リフィル処方箋について知る前に、一般的な処方箋のことについて確認しておきましょう。

処方箋には何が書いてある?じっくり見てみよう

病院や医院で診察を受けて薬が必要と判断された場合、その場で診察料と共に代金を支払って薬の現物を受け取ることがあります。しかし、現時点では多くの場合は処方箋を受け取って調剤薬局に行って渡し、薬剤師の説明を聞いたうえで薬をもらいます。

もらった処方箋について、なんとなく手にしているだけで、じっくり眺めたことがない人もいるでしょう。もし、次に処方箋を入手した際には、何が書かれているかをよく見てみてください。

処方箋には、医師や歯科医師が患者さんを診察して、治療に必要と判断した薬の種類、量、飲み方などが記載されています。これを調剤薬局に持参すると、薬剤師がそれをみながら指定された薬を準備し、どのようなものか説明しながら渡します。

処方箋の期限は4日間

通常、処方箋の使用期限は交付された日を含めて原則4日以内で、その期間内に調剤薬局へ持参しなければなりません。これは、時間が経つと診察したときとは症状が変わり、処方された薬が適切ではなくなるおそれがあるためです。

処方箋の4日という使用期間には土・日・祝日も含みます。ゴールデンウィークや年末年始などの大型連休前に処方箋をもらったときには使用期限切れにならないように注意する必要があります。なお、医師や歯科医師が別途使用期限を記載している場合は、その日まで有効です。

リフィル処方箋とは?知っておくべきポイント

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医療機関に支払う費用は厚生労働大臣が定めており、2年ごとに改定されます。また、これに合わせて仕組みが変わることがあります。2022年の診療報酬改定から、新たに導入されたのがリフィル処方箋の仕組みです。

病院に行く手間が省けて便利なリフィル処方箋

一般的な処方箋は1度しか利用できませんが、リフィル処方箋は、一定期間内であれば反復利用することができる処方箋です。

リフィル処方箋については、次のようなことが定められています。

・使用回数の上限は3回までとする。
・量に限度が定められている薬には使えない。
・リフィル処方箋による1回目の調剤を行えるのは通常と同じ4日以内。
・2回目以降の調剤は1回目の薬が終わる日を予定日として、その前後7日以内。

リフィル処方箋を使えば、2回目以降は医師の診察が必要ありません。ただし、薬をもらうときに薬剤師が体調などを確認することが義務付けられています。処方箋をなくす心配がある人は、薬局に処方箋を預けておくこともできます。

たとえば、忙しくて定期的に通院するのが難しい場合、医療機関が遠方で時間や交通費を負担に感じる場合、一人で通院ができず家族に仕事を休んでもらって付き添ってもらっている場合などの通院するのが大変という人にとっては魅力的なシステムではないでしょうか。

リフィル処方箋は誰でももらえるわけではない

しかし、残念ながら誰もがリフィル処方箋を出してもらえるわけではありません。

リフィル処方箋を出してもらえるのは医師から「症状が安定している」と判断された患者さんです。患者さん自身がリフィル処方箋の発行を希望したとしても、医師が定期的に通院してもらって診察したり、検査したりする必要があると判断した場合は、リフィル処方箋を出してもらうのは難しいでしょう。

患者側が制度を知って活用することも大切

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リフィル処方箋が始まったのは約1年前。2022年、厚生労働省が行なった調査『リフィル処方箋の実施状況調査報告書(案) <概要>』によると、「リフィル処方箋を交付されたことがある」と答えた患者は、50代で11.0%、60代で9.2%で約1割。制度に内容を知っている人も世代ごとに10〜40%前後で、まだ半数以上の方はこの制度について詳しく知らないのが現状です。

同じ調査における、病院・診療所への調査結果では、リフィル処方箋の今後の課題として「患者への制度の周知」が挙げられました。通院する私たちがこの制度を知り、理解し、求めることで、医療機関もリフィル処方箋を利用しやすくなると考えられます。

医療費の削減にもつながりますので、制度を知って上手に活用することが重要です。

薬のもらい方は今後も変化していきそう

リフィル処方箋の存在自体をまだ知らない人も多いようです。もし、自分や家族に適用されるのかなど、関心がある方はかかりつけの医師や薬剤師に相談してみてください。

なお、マイナンバーカードを利用した電子処方箋も2023年1月から始まっています。こちらもまだ対応する医療機関が少なく、周知が進んでいませんが、リフィル処方箋と合わせて、薬のもらい方はこれから変化していく可能性があるといえるでしょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

高垣 育(たかがき・いく)
2001年薬剤師免許を取得。調剤薬局、医療専門広告代理店などの勤務を経て、12年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。15年に愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書『犬の介護に役立つ本(山と渓谷社)』を出版。人だけではなく動物の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行い、さまざまな媒体に寄稿している。17年には国際中医専門員(国際中医師)の認定を受け、漢方への造詣も深い。

制作

文:高垣育

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