2023.01.17
ジェネリック医薬品の本当のところ。知りたいのは、安い理由と安全性【おくすりコラム】
薬局に行くと「ジェネリック医薬品での調剤を希望しますか?」と聞かれることがあります。なんとなく「はい」と返事をしたものの、ジェネリック医薬品のことを実はあまり知らないということはありませんか。ジェネリック医薬品は新薬(先発品、先発医薬品と呼ぶこともあります)の特許が切れた後に製造販売される薬です。新薬と同等の有効性、安全性を有していますが、新薬より低価格です。
ではなぜ、新薬と同じ有効成分で、効き目や安全性が同等なのに安く提供することができるのでしょうか。
ジェネリック医薬品ってどうして安いの?
新しい薬を生み出すために、どのくらいのお金がかかるかご存知でしょうか。なんと、その金額は数百億~数千億円にものぼると言われています。ひとつの新薬を開発するのには、こんなにもたくさんのお金がかかっているのですね。
一方のジェネリック医薬品は、ほかの会社が開発した薬の成分を活用します。ですから、ゼロから新しい薬を生み出すのに比べると、開発費がかからない分、かなりコストをおさえることができるため、ジェネリック医薬品は先発医薬品と比べて低価格で提供することができるのです。
一番気になる、ジェネリック医薬品の安全性
「安いのはいいけど、やっぱり値段なりの品質なのでは…」「安全性は大丈夫?」と、ジェネリック医薬品の安全性について、なんとなく不安という人もいるでしょう。
結論から述べると、ジェネリック医薬品は先発医薬品と同等の安全性が確認されていますので、不安を感じることはありません。
ジェネリック医薬品は、国が定めた厳しい承認審査をクリアして、先発医薬品と同等の品質基準を備えていることが認められた薬です。
もう少し詳しく述べると、ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ速さで、同じ量の有効成分が体に吸収されることを確認する試験”生物学同等性試験”によって、先発医薬品と有効性や安全性が同等だと判断されています。さらに、薬のイヤな味を感じにくくし、飲みやすくするといった工夫が加えられています。
ジェネリック医薬品のメリット
ジェネリック医薬品のメリットは、大きく2つあります。
1.価格が安い
メリットのひとつは、なんといっても低価格でお財布に優しい点です。では、いったいどのくらい安くなるのでしょうか。アレルギー性疾患治療薬を例にとって比較してみましょう。
<花粉症でアレルギー性疾患治療薬を飲む場合>
先発医薬品:66.20円(2022年4月1日以降の薬価)
ジェネリック医薬品A:16.00円(2022年4月1日以降の薬価)
ジェネリック医薬品B:22.30円(2022年4月1日以降の薬価)
成人は1日1回の服用なので、ジェネリック医薬品を選択すれば、先進薬の25〜33%の薬価になり、1日あたりおよそ43円~50円安くなります。
※保険適用前の価格です。
2.有効性や安全性は同等
低価格なのに有効性や安全性が先発医薬品と同等な点です。しかも、先発医薬品での飲みづらさなどを飲みやすく工夫して開発されたジェネリック医薬品もあります。例えば、下記のような工夫があります。
・粒が大きすぎたり、小さすぎたりして飲みづらい錠剤を適度な大きさにする。
・苦みなどで飲みづらい薬のイヤな味をおさえて飲みやすくする。
・少量の水や唾液で溶ける口腔崩壊錠にする。
今まで、上記のような点が気になって薬を飲むのが大変だったという人にとってはジェネリック医薬品を選択することはメリットになります。
ジェネリック医薬品のデメリット
一方で、ジェネリック医薬品にはデメリットもあります。
1.先発医薬品と味や形状が違う
先発医薬品と味や見た目が異なることは、先述のようにジェネリック医薬品のメリットにもなりますが、デメリットになることもあります。たとえば、パッケージが変わって混乱してしまうことや、味があわないということもあります。
2.先発医薬品には使われていなかった添加剤が使われている場合がある
先発医薬品とジェネリック医薬品では使用している添加剤が異なることがあります。患者さんの体質によっては、特定の添加剤に対してアレルギーを起こすことが稀にあります。そのため、こうしたケースではジェネリック医薬品を使うことはデメリットと言えるかもしれません。なお、添加剤によるこのような事例はジェネリック医薬品だけではなく、先発医薬品でも起こりえます。
ジェネリック医薬品を使う方法
ジェネリック医薬品を使ってみたいと思ったらどうすれば良いのでしょうか。方法はとても簡単です。病院で診察のときに医師へ「ジェネリック医薬品を使ってみたい」と相談してみましょう。そして、薬局で処方箋を出すときに「ジェネリック医薬品を希望します」と伝えましょう。
ジェネリック医薬品を選べない場合とは?
ただし、ジェネリック医薬品を希望してもジェネリック医薬品で調剤してもらえない場合がいくつかあります。
1.ジェネリック医薬品がない場合
ジェネリック医薬品は先発医薬品の特許期間が過ぎてからでないと作ることができません。ですから、先発医薬品が発売されたばかりだと、まだジェネリック医薬品が作られていないことがあります。
2.ジェネリック医薬品の取り扱いがない場合や、取り寄せが必要な場合
なんらかの事情で薬局においてジェネリック医薬品が品薄になることがあります。こうした場合は、ジェネリック医薬品を選択できず、在庫がある先発医薬品での調剤となることがあります。
3.医師が「先発医薬品」の使用が必要だと判断した場合
処方箋を見てみると、薬の名前の左にチェックマークが入っていることがあります。この場合、医師が先発医薬品の使用が必要だと判断していますから、ジェネリック医薬品を選ぶことができません。
ジェネリック医薬品は、医療費の有効活用につながる
ジェネリック医薬品は、私たちにとってすっかり身近な存在になりました。現在のジェネリック医薬品の数量シェアは、およそ79%にのぼります。(厚生労働省『保険者別の後発医薬品の使用割合(令和3年9月診療分)』より)
こうしたジェネリック医薬品の普及の背景には、患者負担の軽減を図ること、また医療保険財政を改善するという目的があります。
少子高齢化が急速に進むなか、現在の医療保険制度を次の世代に引き継いでいくには限りある医療費を有効活用する必要があります。そのために私たち一人ひとりにできることのひとつが、ジェネリック医薬品の使用です。
もしかしたら「ジェネリックを試したいけど、一度変更したら、先発医薬品に戻せないのでは」と心配でジェネリック医薬品の使用に踏み切れない人がいるかもしれません。でも、この点については心配しないでください。ジェネリック医薬品を使ってみて、味があわなかったり、錠剤が出しづらかったりなど、何らかの理由で先発医薬品に戻したい場合には、薬局に申し出れば、再び先発医薬品をもらうことも可能です。
メリットとデメリットを知った上で、ジェネリック医薬品を上手に活用したいですね。
記事情報
引用・参考文献
著者プロフィール
高垣 育(たかがき・いく)
2001年薬剤師免許を取得。調剤薬局、医療専門広告代理店などの勤務を経て、12年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。15年に愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書『犬の介護に役立つ本(山と渓谷社)』を出版。人だけではなく動物の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行い、さまざまな媒体に寄稿している。17年には国際中医専門員(国際中医師)の認定を受け、漢方への造詣も深い。
制作
文:高垣育