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2022.09.13

もっと活用しなきゃ損!お薬手帳のメリット5つ

kencom公式:薬剤師ライター 高垣 育

©︎YOJI  IMAI

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調剤薬局に処方箋を持って行くと「お薬手帳を持っていますか?」と聞かれます。尋ねられるままなんとなく提出する人もいれば、面倒で持参しないという人もいるでしょう。でも、お薬手帳を活用しないのはもったいないです。なぜなら、お薬手帳を活用するとたくさんの利点があるからです。

今回は調剤薬局やドラッグストアにお薬手帳を持参したくなる、5つのメリットをご紹介します。

そもそも「お薬手帳」とは? 5つのメリット

お薬手帳は、医療機関で処方された薬の名前や量などを記録するための手帳です。お薬手帳を提示することで、その人が今使っている薬やこれまでに使ってきた薬を医師や薬剤師に伝えることができます。

1.薬の重複や飲み合わせをチェックしてもらえる

©︎YOJI  IMAI

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たとえば、腰痛でA整形外科を受診して解熱鎮痛薬をもらっている人が、B内科を受診しました。そのときに、同じ解熱鎮痛薬が処方されたり、A整形外科で処方された解熱鎮痛薬と飲み合わせの悪い抗生物質が処方されたとします。

お薬手帳があれば、医師や薬剤師に複数の医療機関から処方された薬の情報を伝えることができます。

すると、上記のように同じ薬が複数の医療機関から処方されるケースや、飲み合わせの悪い薬が処方されるケースに、いち早く気づいてもらえますし、病院に問い合わせて薬を変更してもらったり、調整してもらったりすることができます。

特に年齢を重ねると、病気などで医療機関を受診する機会が増え、薬の数や種類も増えていきますが、お薬手帳をきちんと活用することで「ポリファーマシー」を防ぐことにもつながります。

耳慣れない言葉かもしれませんが、ポリファーマシーとは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、必要以上の薬の投与、不必要な薬の投与、薬の副作用や間違った方法での服用などの問題につながる状態をさします。

これは医療機関からもらった薬同士だけではなく、市販薬を買うときにも活用できます。いつも病院から処方されている薬がある人が、ちょっとした不調で市販薬を使いたいときに、飲み合わせが心配だったらお薬手帳を持参して、その店の薬剤師にチェックしてもらうことが可能です。

2.自分に合わない薬が一目瞭然

お薬手帳は一方的に、医療機関側が記録するものだと思いがちですが、自分自身の体調管理にも活用できます。たとえば「湿布薬をAからBに変更したらかぶれてしまった」「Cという抗生物質を飲んだら下痢がひどかった」など、薬について気づいたことがあったらお薬手帳に記録しておきましょう。

そして、次に医療機関に受診した際、合わなかった薬を伝えてください。すると、医療機関側にも合わない薬を把握してもらうと共に、合わなかった薬の処方を避けられます。

3.災害時に役立つ

災害が起きて避難の際に薬を持ち出せなかった場合にも、お薬手帳が役立ちます。たとえば大規模災害でいつもの病院への受診が困難なときは、お薬手帳の記録を見せることでスムーズに伝えることができ、薬を処方してもらうことができます。

紙のお薬手帳だと避難時に持ち出せるかどうか心配だという場合は、お薬手帳アプリの活用や、普段は防災リュックの中に保管しておく、貴重品と常にセットにしておくなど、自分に合った方法を工夫してみてください。

4.本人以外も薬の管理ができる

本人以外の代理の人や家族が、高齢の親の薬を管理する場合や、小さいお子さん、特に2人兄弟、3人兄弟など複数のお子さんの薬を管理する場合があります。

そんなときにお薬手帳があれば医師や薬剤師との情報のやりとりに便利です。たとえば「下剤はまだ手持ちがあるので今回は処方してもらわなくても足りている」「前回もらった頓服の解熱剤を使い切ってしまったので、追加で処方してほしい」などの、薬についての希望などをスムーズに伝えるのに活用できます。

5.調剤薬局の窓口での自己負担額が安くなる場合がある

お薬手帳を調剤薬局で提示すると、自己負担額が安くなる場合があります

条件は、お薬手帳を持参し「3ヶ月以内に同じ調剤薬局を利用している」こと。実際には、2回目以降の利用時に、医療費の自己負担の割合が3割であれば40円、1割負担であれば10円、薬代が安くなります。(自己負担の割合は、ご加入されている国民皆保険によって異なります)

たとえば、先月は家の近くのA調剤薬局で薬をもらって、今月は職場の近くのB調剤薬局で薬をもらうという場合には安くなりませんのでご注意ください。

注意!せっかくのお薬手帳を台無しにするケース

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お薬手帳を活用するとさまざまなメリットがあることが分かりました。ただし、せっかくお薬手帳を活用しても、それを台無しにしてしまう残念な使い方があります。

それは、複数のお薬手帳を使っている場合です。

たとえば、病院ごと、調剤薬局ごとにお薬手帳を分けて記録して、A調剤薬局にはB調剤薬局での記録は見せないという風にしてしまうと、飲み合わせなどの確認が口頭でのやりとりになるため、情報の伝え漏れが生じたりする恐れがあります。そのため、全ての薬の記録をひとまとめにするのが大切です。

また、お薬手帳アプリを使っている場合は、充電切れに注意です。加えて稀なことではありますが、サーバーのトラブルなどで肝心なときに起動できないことがあるかもしれません。いざという時のために、バックアップとして紙のお薬手帳も持っておくと安心です。

お薬手帳を、健康記録をしるす「日記帳」にしよう

お薬手帳は、今までに使った薬の情報がつまった自分の健康記録です。

これまでお薬手帳を活用してきた人は、医療機関からの記載だけにとどまらずに、日々の体調の変化などを書き込み、自分の健康に関する情報をとりまとめて管理する日記帳のようにしてみてはいかがでしょうか。そうすれば、普段の生活における自分が体調の変化を医師や薬剤師に素早く、的確に伝えることができます。

こうした記録は、たとえば「血圧がなかなか下がらない」「薬が変更になってから薬を飲むと眠気を感じる」といった問題が起きた際の解決のための大切な情報となります。

また、お薬手帳を持っていない人は、この機会にお薬手帳を作ってみるのはいかがでしょうか。お薬手帳は調剤薬局で申し出ると無料で作ることができます。上手に活用すれば無料で大きなメリットを受けることができるのですから、活用しないのはもったいないです。ぜひ健康管理のために役立ててください。

▼参考文献

著者プロフィール

■高垣 育(たかがき いく)
2001年薬剤師免許を取得。調剤薬局、医療専門広告代理店などの勤務を経て、12年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。15年に愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書『犬の介護に役立つ本(山と渓谷社)』を出版。人だけではなく動物の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行い、さまざまな媒体に寄稿している。17年には国際中医専門員(国際中医師)の認定を受け、漢方への造詣も深い。

(イラスト:今井ヨージ

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