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2023.06.04

コミュ力が低いと悩むあなたへ。会話が楽しくなる“おもてなし”の意識とは【働く人のこころ処方箋】

kencom公式:精神科医・井上智介

令和2年労働安全衛生調査(実態調査)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に連続して1ヵ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所割合は、平均で9.2%でした。うつ病などのメンタル不調は、現代では誰にでも起こりうる身近な病です。

本連載『働く人のこころ処方箋』では、産業医・精神科医・健診医として活躍している井上智介先生に、心の健康を保つ秘訣を教えていただきます。

©ikue takizawa

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コミュ力が低いと悩むあなたへ

“コミュ力。”

コミュニケーション力の略称ですが、この言葉にどのようなイメージがありますか。大切だと分かっているものの「私はコミュ力が高いです」と堂々と言える人は、かなり少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、コミュニケーションに苦手意識をもつ人が、何を意識すれば人間関係がうまくいくかについてお話します。最初はコミュニケーションが苦手な人の特徴を紹介するので、ご自身がどのくらい当てはまっているか確認してみてください。

コミュニケーションが不得意な人の3つの特徴

1つめの特徴は、“話すことに苦手意識がある”です。

コミュニケーションが苦手な人ほど「何を話せばいいか?」という考えに縛られています。そのため、いざ会話の本番では焦りから無理に自分の考えを挟んだり、無意識に相手の話を遮ってまで自分の話をしてしまいます。しかし、これらの行為は、相手からすれば気持ちはよくなく全然話を聞いてもらえないと感じるだけです。

2つめの特徴は、“非言語コミュニケーションが不足している”です。

非言語コミュニケーションとは言葉そのものではなく、表情やジェスチャー、間、うなずき等の言葉以外を指しています。きちんと返事をしていても、非言語の要素が少ないと、相手にはあなたが上の空のように見え「関心がないんだな」と感じさせてしまいます。

3つめの特徴は、“共感性が不足している”です。

とくに日本人は、すべてを口にせずに暗黙の了解やその場の空気を読みながら会話をします。たとえば、あなたが友人を今日の夜の食事に誘ったとき「週末にテストがあるんだよね」と返答されたらどう感じますか。一般的には、断られていることが分かると思いますが、もしあなたが「今日は空いていてよかった。何時に集合しようか」と話を進めてしまえば、まったく話は弾まないでしょう。

コミュ力に自信がなくても大丈夫

その一方で、コミュ力が高い人は相手が話しやすい工夫する、“おもてなし”の意識があります。具体的には次のようなことを意識しているのです。

まずは、自分が話をするよりも、相手の話を聞くことに集中しています。もし会話に苦手意識があるなら、最初のうちは無理して話をしようとせず、聞くと話すの割合は、8:2を意識しましょう。

さらに話を聞いた時には、些細なことでもいいので、質問してみてください。質問というのは、相手の話に興味があることを示す最も簡単な方法です。

このとき5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)を意識した、オープンな質問をすると、話に広がりと深みが出ます。ビジネスの側面では、何かを相手に伝える時はダラダラと前置きはせずに、結論から相手に分かりやすくシンプルな言葉で伝えるようにしましょう。

次に、話を聞くときこそ非言語コミュニケーションを意識してください。たとえば、驚いた時には目を見開いてみたり、納得した時には大きくうなずいたり、少しのけ反るだけでも、相手はかなり話しやすくなります。

最後に、話を聞くときには、一旦相手の立場になってそのときの感情や思考を理解しようと努力してみてください。相手の立場になってはじめて、今の自分とは違った景色を感じることができ、相手の感情により深く共感もできるようになるので、相手も話をすることが楽しくなり安心感が得られるのです。

大切なのは“おもてなし”の意識

もし今、あなたがコミュ力に自信がなくても大丈夫です。あくまでもコミュニケーション能力というものはスキルの1つなので、今からでも時間をかけて磨けばかならず上達します。ぜひ今日だれかと会話するときに、相手への“おもてなし”の意識をもってみてください。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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井上智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医・健診医。
兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話重視の精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも注力。SNSや講演会などでも「ラフな人生をめざすこと」を積極的に発信中。主な著書に『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)等がある。

制作

文:井上智介
写真:滝沢育絵

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