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2023.05.11

必須脂肪酸に加えてたんぱく質も豊富!大阪の船場汁【ニッポン地元メシ#44】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

東、北、南の3方を山に囲まれ、西は海に面し、中央には肥沃な平野が広がる大阪府。1年を通して穏やかな気候で、海の幸にも山の幸にも恵まれています。

16世紀の終わりに天下統一をはたした豊臣秀吉が城下町を作り、物流の中心として商業が栄えました。江戸時代になってからも、交通の発達、経済や商業の重要な拠点として、各地の食材が行き交う場でもあったことから、“天下の台所”と呼ばれるようになりました。

今回は、商業の中心地として賑わった問屋街で生まれた郷土料理、船場汁(せんばじる)を紹介します。

まかない料理として誕生した船場汁

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船場汁とは、明治から大正にかけて大阪の商業の中心地として賑わった問屋街、船場で家庭料理として親しまれてきた汁物です。塩サバの身を切り出したあとに残る中骨などのアラと大根を煮るため、船場煮と呼ばれることもあります。

サバは昔から庶民の味として親しまれてきましたが、生のままでは傷みやすい食材。そのため長期保存ができるよう塩サバに加工して出回りました。

船場汁に使用するのは、塩サバのアラの部分。身の部分は主人が食べ、残ったアラを使い、奉公人をまかなう料理の1つとして船場汁が生まれたと言われています。魚のアラまで余さず使う船場汁は、経済的かつ時間をかけずに作れることから、忙しい商家で重宝され、日常食として定着したのだそう。

現在、船場汁は大阪市内を中心に、家庭から料亭まで様々な場所で口にすることができますが、その際は昆布や鰹節、サバ節などからダシを取り、サバの身も加えて、味わい深さと食べ応えのある料理として提供されています。

船場汁の作り方

船場汁は、塩サバのアラを使ったとてもシンプルな料理です。そのため主役は、サバから出るうま味と、他は大根や葉ねぎ、水、塩のみ。

サバのアラを水から煮だしてじっくりとうま味を引き出し、5mm程度の短冊切りにした大根をだし汁に加えてさらに煮ます。大根に火が通ったら塩で味を調え、葉ねぎを加えて完成です。

調味は塩のみで手軽な上、素材1つ1つの良さを感じることのできる一品です。塩サバの代替として、塩鮭や塩ぶりを使って作られることもあるそうです。

船場汁でとれる栄養とは

サバには必須脂肪酸のひとつ、DHAやEPAが含まれます。DHAは脳の機能を助ける働きがあり、EPAには血管の健康維持や悪玉コレステロールや中性脂肪を抑える働きがあるとされています。最近の船場汁は身を使うこともあるため、必須脂肪酸に加えてたんぱく質も摂ることができます。

また、大根の白い部分(皮なし)は、100gあたり15kcalととても低エネルギーな食材です。葉ねぎにはβ-カロテンが含まれ、強力な抗酸化作用があります。抗酸化作用を持つ栄養素や成分は、細胞を傷つける活性酸素の発生を抑える役割があるため、健康と美容のどちらにも嬉しい効果が期待できます。

そして調味の決め手の塩は、精製塩ではなく海塩などの天然塩にすれば、数種類のミネラルを摂ることができます。

大阪グルメを堪能して!

画像:公益財団法人 大阪府学校給食会

画像:公益財団法人 大阪府学校給食会

食い倒れの街としてよく知られる大阪にはお好み焼きやタコ焼きの粉物はもちろん、郷土料理の中には船場汁のように、本来ならば捨てられてしまう食材を美味しく変身させた料理がいくつもあります。

例えば、かば焼きにしたうなぎの頭(半助)を豆腐やネギと一緒にだしで煮込んだ半助豆腐や、かまぼこを作った後に残る鱧の皮を炙って、きゅうりなどと一緒に甘酢で和えた鱧皮ザクザク。定番のグルメに加え、新たな一面を持つ大阪グルメを味わってみてはいかがでしょうか。

記事情報

引用・参考文献

1.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/osaka.html)
2.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/39_16_osaka.html)
3.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/39_9_osaka.html)
4.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/39_11_osaka.html)
5.公益社団法⼈ 大阪府学校給食 会おおさかの郷土料理集(https://www.oskz.com/recipe/kyodo.pdf)
6.日本食品標準成分表2020年版(八訂)

著者プロフィール

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磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家 
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

制作

文:磯村優貴恵

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