メニュー

2023.04.28

短時間でも症状改善!変形性膝関節症には運動療法が効果的【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

変形性膝関節症とは、加齢などが原因で膝関節の炎症が起きる病気。ひどくなると日常生活にも影響を及ぼすので早めに対処しておきましょう。

今回ご紹介するのは、Annals of Internal Medicine誌に、2023年1月24日ウェブ掲載された、変形性膝関節症の運動療法についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、加齢や体重の負荷などによって、関節でクッションのような働きをしている半月板がすり減り、膝関節の炎症を起こして膝の痛みが生じる病気で、進行すれば歩行が困難となって、ADLの低下にも結び付く、一般的で身近な病気である共に、怖い病気でもあります。

進行すれば手術などの治療が行われますが、初期の段階では鎮痛剤で痛みや炎症をコントロールしたり、ヒアルロン酸の関節への注入が行われるなどの、一定の有効性のデータも存在しています。そして、同じように有効性の確認されている治療法が、膝に軽い負荷を掛けて動かし、周辺の筋肉を強化する運動療法です。

運動療法に効果のあることは確認されていますが、それでは実際にどのくらいの運動量が適切であるのか、やればやるだけの効果があるのか、それともやり過ぎれば却ってよくないのか、というような点については、あまり科学的な検証がされていないのが実際です。

どの程度の運動療法が有効かを比較検証

そこで今回の研究ではスウェーデンとノルウェーにおいて、変形性膝関節症と診断されて痛みの既往のある189名に患者を、くじ引きで2つの群に分けると、一方は週に3回、1回70から90分の運動プログラムを施行し、もう一方は回数は同じですが、1回20から30分の比較的軽い運動プログラムを施行して、治療を12週間継続し、その効果を比較しています。

その結果、どちらの運動プログラムも症状の改善効果が認められ、その有効性にはスポーツでの症状など、一部の項目を除いては、明確な違いは認められませんでした。

短時間の運動でも有効

つまり、変形性膝関節症の治療として行う運動療法は、比較的短時間でその有効性は認められ、それ以上負荷を増加させても、より治療として有効ということはないようです。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36