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2020.03.27

新型コロナウイルス感染者には使わないほうがいい薬がある?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルス感染者には、解熱鎮痛剤イブプロフェンを使わないほうがいいという報道がありました。これは医学的に信憑性があるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Lancet Respiratory Medicine誌に2020年3月11日ウェブ掲載された、高血圧と糖尿病の患者さんが、新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは何故なのか、という点を考察した解説記事です。
まとまった論文というものではなく、1人の専門医の見解を示したものである、という点には注意が必要です。

これは僕自身はスルーしていたのですが、フランスの大臣が「イブプロフェンを新型コロナに使うのは良くない」という趣旨の発言をして、それに追随する内容をWHOでも示したことによって、注目を集めている内容の元ネタなので、改めて読んでみました。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナウイルスは、人間のACE2という受容体に結合して感染する

新型コロナウイルス(SARS-CoV2)は、その名の通りSARSの原因ウイルス(SARS-CoV)と似通っていて、遺伝子自体も非常に高い相同性があります。

この2つのウイルスは、いずれもACE2という受容体に結合して、人間に感染するという特徴を持っています。

ACE2受容体は人間の身体では、下気道の上皮細胞、腸管、腎臓、そして血管上皮細胞に、主に発現しています。

高血圧の患者さんに使用される、ACE阻害剤やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は、結果としてACE2受容体を増やす作用があります。
ACE2受容体はまた、サイアザイド系利尿剤と解熱鎮痛剤のイブプロフェンによっても、増加することが報告されています。

糖尿病や高血圧の方はACE2受容体が増える薬を使うため、重症化する可能性が

ここで上記論考の著者は、糖尿病の患者さんや高血圧の患者さんは、上記のACE2受容体を増やすような薬剤を使用していることが多く、そのために新型コロナウイルスの感染を、より受けやすいのではないか、という推論を行なっています。

ただ、他方でACE2には炎症を抑制するような働きもあり、その点はむしろ上記の推論に反するものです。
ACE2発現に関わる遺伝子多型が、その重症化に関連しているのではないか、という仮説もあり、今後の検証を要する事項だとしています。

今のところ、薬と重症化の関係は推論に過ぎない

シンプルに考えると、ACE阻害剤やARBの方が継続的に使用されている方が多く、ACE2の誘導も高いと想定されるので、仮にそうした薬剤の使用と、新型コロナウイルスの重症化との間に、関連があるとすればこれは大きな問題ですが、今のところ本当に推論に過ぎないので、当該の薬をお飲みの方は、あまり無用の心配はされない方が良いように思います。

これは今の時点で、実臨床的な根拠はない推論ですし、個人的には差はあっても、大勢には影響しないレベルであるように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36