メニュー

2023.02.23

春の訪れを告げる食材。富山県のホタルイカの酢味噌和え【ニッポン地元メシ#39】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

本州の本州中央部に位置し、日本海に面する富山県。三方を山に囲まれ、その中には標高3,000メートル級の北アルプスの立山連峰が存在します。

また、”天然のいけす”と呼ばれる富山湾は、海産物の宝庫。ひとつの湾の中で3種類の海水が層をなしており、それぞれ塩分濃度や海水温の違いによって異なる種類の魚が集まります。海底は複数の谷が入り組んでおり、藍がめと呼ばれ、これも多くの魚介類が集まる理由。そこに集まる魚介類の数は、なんと日本海に分布する800種類のうち、500種類にもなるといわれています。

その中でも富山湾の王者と呼ばれるブリ、富山湾の宝石と呼ばれるシロエビ、富山湾の神秘と呼ばれるホタルイカは、富山県推奨とやまブランドにも認定され、多くの郷土料理に登場します。

このような様々な地形を持つ富山県には豊かな食文化が存在しますが、今回は富山湾の神秘とも呼ばれるホタルイカを使った郷土料理を紹介します。

富山県とホタルイカ、その歴史は江戸時代から

写真提供:(公社)とやま観光推進機構

写真提供:(公社)とやま観光推進機構

富山の春を代表するホタルイカ。その歴史は古く、富山屈指のホタルイカ漁獲量を誇る滑川漁港では、江戸時代にすでに漁が行われていたという史料も残っているほど。水深の深いところで生息するホタルイカは、3月頃になると富山湾沿岸に集まり、漁が解禁されると6月頃まで行われます。

ホタルイカが”富山湾の神秘”と言われる所以は、その姿にあります。全身が青白く光り、群れで浅瀬を漂う幻想的な様子は、ホタルイカ群遊海面として国の特別天然記念物に指定。保護のために、水田の水を海に流さないという取り組みもされています。

このように、生態系や環境への配慮を怠らない取り組みが、美しい富山のホタルイカを守り続けています。

ホタルイカの酢味噌和えの作り方

写真提供:(公社)とやま観光推進機構

写真提供:(公社)とやま観光推進機構

富山湾で獲れるホタルイカは、定置網を使い漁場と漁港が近いことから、傷がつきにくく鮮度が抜群。数ある料理の中でもポピュラーなのが、ホタルイカの酢味噌和えではないでしょうか。

魚介類は下処理が難しいイメージがありますが、ホタルイカはサイズも小さいため下処理も簡単。水を沸騰させて塩を加え、さっと茹で、茹で上がったら目を取るだけで完了です。(茹でる前に目を取る場合もあり)
あとは酢、味噌、砂糖、辛子を混ぜ合わせた酢味噌を作り、お好みで茹でたワケギと共に盛り付けます。

薬味はお好みですが、みょうがや生姜をプラスすると、スッキリとした味わいになりオススメです。この他、春が旬のワカメを添えるのもよいでしょう。
甘みとうま味を兼ね備えたホタルイカは、お酒のあてとしても人気です。

小さくても栄養たっぷり!

ホタルイカは、可食部100gあたり74kcalです。亜鉛、ナトリウムやカリウムが含まれ、特に亜鉛は、細胞の生まれ変わりを助ける働きがあり、食生活が偏ると不足しやすいミネラルです。

その他には、粘膜の潤いを保つビタミンAや貧血予防に欠かせないビタミンB12といったビタミン類も含まれます。

また、イカ類には、タウリンというアミノ酸に似た物質も含まれています。タウリンには、
・コレステロールを減らす
・心臓や肝臓の機能を高める
・視力の回復
・インスリン分泌促進
・高血圧の予防
など、さまざまな効果があると言われています。

小さなホタルイカの中に、私たちの身体にとって嬉しいパワーがぎゅっと詰まっています。旬のものを美味しくいただき、その季節を元気に乗り切るために必要な栄養素をしっかり補っていきましょう。

釜揚げに沖漬け、アレンジ自在のホタルイカ

写真提供:(公社)とやま観光推進機構

写真提供:(公社)とやま観光推進機構

小ぶりで調理も簡単なだけでなく、うま味もあるホタルイカ。生食用なら刺身で食べられることはもちろん、釜揚げ、姿煮、酒、しょうゆ、みりんなどに漬け込んだホタルイカの沖漬けなど、様々な方法で調理されます。

この春、富山に行かれた際はホタルイカはもちろんのこと、その季節ごとの海の幸を楽しんでみてはいかがでしょうか。

(2023年2月28日:内容を一部修正しました)

記事情報

引用・参考文献

1.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/toyama.html)
2.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/37_1_toyama.html)
3.厚生労働省Webサイト(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-017.html)
4.富山県滑川市ホームページ(https://www.city.namerikawa.toyama.jp/soshiki/35/introduction/485.html)
5.日本食品標準成分表2020年版(八訂)(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html)
6.生食用ホタルイカの取扱いについて(https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/g_kenko/busitu/pdf/hotaru_ika.pdf)

著者プロフィール

記事画像

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家 
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

制作

文:磯村 優貴恵

あわせて読みたい

この記事に関連するキーワード