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2023.02.09

鮎の季節が待ち遠しくなる、岐阜県の鮎雑炊【ニッポン地元メシ#38】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

日本の人口重心にあたる岐阜県。海に面していない内陸県で、7つの県に囲まれており、面積の8割以上を山林が占めています。

岐阜県は大きく2つのエリアに分けられ、ひとつは3,000m級の山々に囲まれた山間高冷地である飛騨エリア。もうひとつは、東の山間地と西の長良川・木曽川・揖斐川の有名河川をもつ温暖な美濃エリアです。

また、岐阜県といえば、戦国時代の天下分け目の戦いでも有名な、関ケ原の所在地として知られています。

東西の食文化が交わり、分け目の地ともいわれる岐阜県には様々なグルメがありますが、今回はその中でも清流の女王とも呼ばれる”鮎”を使った郷土料理を紹介します。

清流のシンボル鮎と、岐阜県との関係

内陸県でもあるこの土地は、多くの山と川に恵まれています。岐阜県には、高知県の四万十川、静岡県の柿田川と並んで日本三大清流のひとつ、長良川が存在します。ここでは清流のシンボルともいわれる鮎が育ち、食や伝統文化と深く結びついています。

鮎は、古事記や万葉集にも記述が出てくるほど古来より日本人に愛されてきた魚のひとつ。1300年の歴史を誇る鵜飼は、今でも多くの人を魅了する観光イベントとして残り、御料鵜飼で獲れた鮎は皇室や伊勢神宮へ奉納されています。このように地域の歴史や食文化と深く結びついた『清流長良川の鮎』は、2015年12月に世界農業遺産に認定されました。

鮎の香ばしさを引き立つ、鮎雑炊の作り方と栄養

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/38_4_gifu.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/38_4_gifu.html)

あっさりとした味わいに、独特な香りを持ち合わせた鮎。別名、香魚(こうぎょ)とも呼ばれることもあり、これは清流で獲れる鮎がスイカのような爽やかな香りがすることに由来するという説があります。

岐阜県には様々な鮎を使った郷土料理がありますが、そのひとつが『鮎雑炊』。鮎雑炊の始まりは、捕獲の際に傷つきそのままでは市場価値が低くなってしまった鮎を、おいしく食べるための方法のひとつだったといわれています。

材料は鮎、炊いたご飯、だし汁、醤油、塩、ねぎや柚子など、材料作り方ともにシンプルです。

鮎は腹わたを抜いて素焼きした後、頭と骨を取り除きます。(頭と骨は後から除く場合もあり)ご飯は水で洗い、ぬめりを取っておきます。鍋にだし汁と塩少々を加えて沸騰させ、鮎と洗ったご飯を加えてひと煮たちさせ、仕上げに醤油で風味を足し、千切りのねぎと柚子の皮を添えて完成。味付けを最小限にすることで鮎の香ばしい風味が引き立ちます。

天然の鮎(生)可食部100gあたりのエネルギーは93kcalで、たんぱく質が15g含まれます。脂質は1.9gと少なめですが、その中には私たちの健康維持に必要なn-3系脂肪酸も含まれています。

そしてお米には、脳と体のエネルギー源として欠かせない糖質はもちろん、およそ3g程度のたんぱく質(茶碗1杯分のご飯)も。たっぷりのだし汁はうま味を多く含み、塩分を控えめでも十分においしくいただくことができます。鮎やだし汁に含まれたミネラルを補給できる点も嬉しいポイントです。

鮎雑炊では内臓を取り除いてしまいますが、シンプルな塩焼きの場合は内臓を残したままの場合もあります。鮎の内臓は、ほんのりと苦味があり好き嫌いが分かれるところですが、実は貧血予防やお肌の血色アップに欠かせない鉄や、免疫力アップや粘膜の潤い保持、目の健康に欠かせないビタミンAなどを含みます。

ただ鮎の旬は夏~初秋と限られた期間。夏の味わいのひとつとして、ぜひ覚えておいてください。

塩焼きに天ぷら、鮎の季節が待ち遠しくなる

ご紹介した鮎雑炊や塩焼きはもちろん、6~7月に獲れるあっさりとした若鮎はてんぷらにして供されることもあります。また、夏の終わりから初秋にかけては卵を持っていることもあり、甘露煮や田楽にしていただくこともあります。

この他にも、鮎を模した和菓子も人気です。岐阜県に行かれる際はぜひ美しい川と共に、鮎を堪能してみてはいかがでしょうか。

参考文献

1.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/gifu.html)
2.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kantai/giahs_3_060.html)
3.岐阜県観光連盟Webサイト(https://www.kankou-gifu.jp/article/ayu/top/)
4.世界農業遺産 清流長良川の鮎Webサイト(https://giahs-ayu.jp/about-nagaragawa)
5.日本食品標準成分表2020年版(八訂)(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html)

著者プロフィール

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磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家 
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

制作

文:磯村 優貴恵

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