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2022.12.07

具沢山でインパクト大!宮城県の「仙台雑煮」の魅力とは【ニッポン地元メシ#34】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

東北地方の南東部に位置する宮城県。

東側は太平洋に面しており、そこからの海風によって平野部では夏はさほど暑さが厳しくなく、冬場は海流の影響で雪が少ないといわれています。県内には「石巻」「気仙沼」「女川」といった大きな漁港があり、海産物も豊富に獲れることで有名です。

宮城県といえば、仙台藩初代藩主の伊達政宗公を思い浮かべる方も多いはず。実は、食通でもあったともいわれています。ひとめぼれやササニシキといったお米の生産も盛んで、耕地面積の中で水田率が82.4%(全国平均は54.4%、令和元年)を誇る穀倉地帯となっているのは、江戸時代初期に伊達政宗が推進した、新田開拓と河川改修に起源があるといわれています。(※参考1)

今回は食材豊かな宮城県の中でも、仙台の郷土料理である「仙台雑煮」を紹介します。

地域で異なる「雑煮」

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sendai_zouni_miyagi.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sendai_zouni_miyagi.html)

おもに正月などのハレの日に供される「雑煮」。出汁は何でとるのか、味噌ベースなのか醤油ベースのお吸い物仕立てなのか、餅は丸か四角か、あんこ入りのお餅なのか、魚が入るのか肉が入るのかなど、各地域の食文化が色濃く出る料理です。

江戸時代の末期から食されている仙台雑煮もまた、唯一無二の、五感で楽しむことができる雑煮です。お椀からはみ出るほどの魚、ハゼが1尾乗っており、見た目にもインパクト抜群です。

ちなみに、戦国時代から江戸時代前期までを生きた伊達政宗公は、この仙台雑煮ではなく、干しアワビに干しナマコ、ニシンの出汁の雑煮を食していたそうですよ。

仙台雑煮にはどんな具材は入っているの?

仙台雑煮には、欠かせない食材がいくつかありますので詳しくみていきましょう。

まずは雑煮には欠かせない出汁。仙台雑煮では焼きハゼを水に浸けて、その後火にかけて出汁を取ります。焼きハゼというのは焼いたハゼを干したもので、かつては松島湾で大量に獲られていましたが、近年は不漁で激減したため、年々高価なものとなっているそう。そして出汁を取ったあとのハゼは、最後の盛り付け用にとっておきます。

そして、もうひとつ重要な具材が、おひきなです。あまり聞きなれない食材ですが、大根、にんじん、ごぼうを細切り(千切り)にしてさっと湯通しし、外気にあてて(現在では冷凍庫を使用して)凍らせたものです。こうすることで、味が染み込みやすくなるのだそう。
切った野菜を凍らせておけば使いたい時に使う分だけ調理でき、便利で無駄もないため、現代に生きる私たちの日常でも使える技ですね。

このおひきなを年末の28日から30日にかけて作り、大晦日に焼きハゼを水に浸けてだしを取ります。正月の三が日はこの雑煮を食べるのが一般的と言われています。

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この他にも、凍み豆腐やずいき(※)、紅白かまぼこ、餅を使います。凍み豆腐やずいきは、水で戻してから切って雑煮の具材となります。醤油や塩で味をつけた出汁に、凍み豆腐とずいきを加え、煮立ったらおひきなを加え、最後に餅を加えて火を止めます。

盛り付けの際は、お椀の底におひきなを敷き、餅、ハゼ、かまぼこ、いくらを乗せ、うま味が詰まった出汁をたっぷりと注いで、仙台せりなどの青みを添えます。具沢山でどれから食べるか迷ってしまいそうなほど豪華な雑煮には、宮城県の食がぎゅっと詰まっています。

(※ずいきとは、八つ頭や唐芋など里芋の茎(葉柄)の部分のこと。芋がらと呼ぶこともある。生と乾物があり、本記事では乾物をさす)

仙台雑煮はどのような栄養がとれるの?

雑煮の良いところはたくさんありますが、普通の汁物と違うのはお餅が入っていること。これにより、ひとつのお椀で効率の良いエネルギー源となる糖質も一緒に摂ることができます。

そして仙台雑煮は具沢山であるため、しっかりと栄養を摂ることができます。まずはたんぱく源となるのが焼きハゼとかまぼこ。かまぼこは魚のすり身ですので、たんぱく質を多く含みながらも脂質が少な目なのも嬉しい点です。凍み豆腐も大豆の加工品ですので、植物性のたんぱく質を摂ることができます。

続きて、おひきなやずいき、仙台せりなどからは、食物繊維をはじめ、ビタミンやミネラルを摂ることができます。特に食物繊維は、腸内環境を整えるのに役立つため、不足しないようにしっかり摂りたい栄養素。お正月はどうしても味の濃いものやエネルギーの高いものを多く食べ、野菜不足になりがちなので、雑煮で補えるのは嬉しいですね。

最後に乗せるいくらは、色鮮やかで見た目にも美しく、とろりと濃厚な味わいで豊かな気持ちになる食材です。いくらの鮮やかな色味は、アスタキサンチンと呼ばれる成分によるもので、抗酸化作用があります。

これだけたくさんの食材と栄養が詰まったお雑煮をいただけば、新たな1年を元気にスタートできるのではないでしょうか。

「はらこ飯」に「ずんだもち」も必食です!

宮城県の名物と言えば、仙台雑煮のほかにも、鮭といくらを使用した「はらこ飯」という料理や、枝豆をつぶして作る美しい鶯色のあんを白玉団子などのお餅に絡ませた「ずんだもち」を思い浮かべる方も多いでしょう。

なんでもずんだもちは、食通といわれた伊達政宗が、好んで食べていたのだとか。甘さや枝豆のつぶし加減は、家庭やお店によって異なるので、食べ比べてみるのも良いですね。

宮城県に行かれる際は、ぜひ海の幸と山の幸の双方を存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。

記事情報

引用・参考文献

1.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/miyagi.html)
2.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sendai_zouni_miyagi.html)
3.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/miyagi.html)
4.全国学校栄養士協議会 宮城県 仙台雑煮(https://www.zengakuei.or.jp/kyodosyoku/pref/miyagi_02.html)

著者プロフィール

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磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家 
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

制作

文:磯村 優貴恵
写真:農林水産省Webサイト、全国学校栄養士協議会 宮城県 仙台雑煮

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