2022.07.01
ドラッグストアで買った市販薬で得する!セルフメディケーション税制とは?
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以前からある医療費控除制度。この制度の特例として2017年から設けられた「セルフメディケーション税制」をご存じですか?従来の医療費控除制度を利用するには、年間の医療費負担が10万円超であることが条件なのに対し、セルフメディケーション税制は、医療費控除制度よりハードルがグッと下がります。
健康が何よりですが、病院に行くほどではなくても薬のお世話になることは誰しもあります。この制度を利用すれば、薬の購入費がかさんだ場合に負担を軽くすることができますので、この機会に知っておいてくださいね。
セルフメディケーション税制とは?
セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進および病気予防のために一定の取り組みをおこなった人が、対象となる医薬品(OTC医薬品といいます)を、年間で12,000円を超えて購入した際に、超えた分の金額(上限88,000円)をその年の総所得金額等から控除できるという制度です。その結果として、所得税および住民税が節税されるというメリットがあります。
また、本人だけではなく、生計を一緒にする家族のために購入したものも対象で、実際に支払った税込み後の価格が控除対象となります。
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例であり、通常の医療費控除との併用はできません。いずれか一方を選択することになります。
2022年1月から対象となる医薬品が増え、かぜ薬や解熱鎮痛薬などのOTC医薬品も対象となったため、より利用しやすい制度となりました。
対象となる人は?
1月~12月の1年間に対象医薬品を12,000円を超えて購入した人、かつ「健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取り組み」をおこなっている人が対象となります。
具体的には以下のうちの1つでも受けていれば「取り組み」と認められます。
① 保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
② 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
③ 予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
④ 勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
⑤ 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
⑥ 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診
なお「一定の取り組み」にかかった費用は対象にはなりません。
どれくらい節税できる?
ではセルフメディケーション税制を使うと、実際どのくらいの節税になるのかを所得別にシミュレーションしてみましょう。
今回は、セルフメディケーション税制の対象医薬品を
1年間で40,000円分購入した場合
と、想定します。
※実際の節税額は、その他の所得控除額によって個人差があります。シミュレーションはあくまでも目安金額です。
所得から控除される金額
40,000円(対象医薬品の購入額)から12,000円を引いた残りの28,000円が所得から控除されます。
所得別の所得税節税額の目安
所得税は、所得により税率が異なるため、節税額も変わってきます。
所得とは、給与収入から給与所得控除やその他の所得控除を引いた後の金額となります。
住民税節税額は一律
一方住民税については、所得に関わらず税率10%です。
28,000円 × 10%(一律)= 2,800円(住民税節税額)
所得税と住民税を計算したものを足すと、節税合計額の目安は以下の通りになります。
節税合計額(所得税 + 住民税)の目安
40,000円のOTC医薬品を購入した場合、年収400〜600万円の方であれば、セルフメディケーション税制で8,400円程度の節税が受けられる想定です。
医療費控除とセルフメディケーション税制との使い分け
① 医療費控除の対象金額が10万円未満 ➡ セルフメディケーション税制
② 医療費控除の対象金額が10万円以上〜18万8,000円以下 ➡ 医療費控除とセルフメディケーションそれぞれで計算して控除額が大きくなる方を選択
③ 医療費控除の対象金額が18万8,000円超 ➡ 医療費控除
上記はあくまでも目安ですので、医療費が10万円を超えたら、どちらの制度を利用した方がいいかシミュレーションしてみるのがおすすめです。
また、個人では、医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらかしか選ぶことはできませんが、同一世帯の中に、従来の医療費控除を利用する人と、セルフメディケーション税制を利用する人がいてもOKです。
対象となるOTC医薬品の探し方
対象となる医薬品には、基本的に共通識別マーク(※)が商品パッケージに表示されていますので、まずはマークがついているか確認しましょう。
共通識別マーク
マークの色は、上記の青色以外もありますので、パッケージをよくチェックしてみましょう。また、全ての対象商品に表示されている訳ではありませんので注意が必要です。
もう一つの確認方法としては、購入レシートのチェックがあります。税制対象医薬品についてはレシート(領収書)上に税制対象医薬品であることが文章で明記されたり、該当商品名の横に★マークなどがついていますので、こちらも確認するようにしましょう。
セルフメディケーション税制の利用には確定申告が必要
©️Rino
セルフメディケーション税制を実際に利用する際には、確定申告により申請する必要があります。
申請するために必要な手順をお伝えします。
1. 対象購入品のレシートの保管
対象商品を購入したレシートを保管しておきましょう。通信販売等で対象の医薬品を購入した場合、自宅のプリンター等で出力した領収書等は証明書類の原本として認められないため、通信販売会社に対し、証明書類の発行依頼をしておきましょう。
2. 「一定の取り組み」を証明する領収書や診断結果を保管
健康診断等受診をした際に受け取る領収書や診断結果を保管しておきましょう。
3. 翌年の所得税の確定申告にて申請(例年2月中旬~3月中旬)
国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」にて、申告書を作成して税務署に提出します。現在はわざわざ税務署に足を運ばなくても、「e-Tax」を利用して、オンラインでも確定申告ができます。
提出書類は、①セルフメディケーション税制を適用し計算した確定申告書、②セルフメディケーション税制の明細書です。
4. 確定申告後の書類の取り扱い
1.および2.で保管していただく書類は、確定申告時の提出は不要ですが、明細書の記入内容の確認や、「一定の取り組み」を証明するため、確定申告期限等から5年間は、税務署から書類の提示または提出を求められる場合があるので保管が必要です。
意外と簡単!お得な制度を活用しよう
一見複雑で手続きも煩雑に見える、セルフメディケーション税制。しかし2022年からは、対象医薬品が増え、確定申告の手続きも従来より簡単になっています。
薬のお世話にならないに越したことはありませんが、もし1年間の対象医薬品購入額が12,000円を超えた場合には、ぜひ制度を活用していただければと思います。また医療費が10万円を超えた場合には、医療費控除とどちらを使うのがより効果的なのかをシミュレーションしてからご活用くださいね。
※本記事は2022年7月1日時点での情報です。
※制度は変更する場合がありますので、利用する際には、最新情報の確認をお願いいたします。
記事情報
引用・参考文献
著者プロフィール
山本美紀(やまもと・みき)
ライフデザインオフィス【想-創】代表
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、家計整理アドバイザー。家計相談やライフプラン作成の他、ママ向けのセミナーや講座を通じて、暮らしを豊かにするための情報発信をおこなっている。正社員、派遣社員、専業主婦、そして個人事業主とライフステージに合わせて働き方を変えてきた経験からのお金とキャリアプランのアドバイスが好評。
制作
文:山本美紀
イラスト:Rino