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2022.10.19

カリカリ食感で見た目も華やか!山口県の「瓦そば」【ニッポン地元メシ#31】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

本州の最西端に位置する中国地方のひとつ、山口県。日本の初代総理大臣・伊藤博文の出身地としても有名です。

萩の松下村塾(しょうかそんじゅく)、日本三名橋のひとつ錦帯橋(きんたいきょう)やカルスト台地として知られる秋吉台、日本三大鍾乳洞である秋芳洞、国宝・瑠璃光寺五重塔など歴史や伝統、絶景が多く存在する観光地としてもよく知られています。

山口県は大きく分けて瀬戸内海沿岸地域、内陸山間地域、日本海沿岸地域の3つに分けられます。
中国山脈が走る山間部のように冬場に雪が降る地域もあれば、瀬戸内海沿岸のように温暖な気候でとても過ごしやすい地域もあって、同じ県でも違った顔を持つ自然に恵まれた土地です。

今回はそんな山口県で老若男女に愛される、普通とは少し違ったそば料理「瓦そば」を紹介します。

瓦そばは古老の昔話から生まれた!?

山口県で瓦そばが誕生したのは昭和36年の川棚温泉(下関の温泉地)。古老から聞いた「西南戦争の際に熊本で薩摩兵が瓦を用いて肉や野菜を焼いて食べた」という話にヒントを得たとされています。

ちなみに川棚温泉は江戸時代に「御殿湯」となり、周辺の神社参詣と合わせた湯治場として栄えた場所。多くの旅人が訪れるようになったことから、治安を守るためにも庶民でも特別に「瓦」と「土塀」を使うことを許された、という歴史的背景があります。

瓦を使える場所であったということに古老から聞いた話が掛け合わされて誕生した、まさにこの土地ならではの郷土料理といえますね。

具沢山で老若男女に愛される郷土料理

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_30_yamaguchi.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_30_yamaguchi.html)

郷土料理というと、ハレの日に作られるもの以外はシンプルで色味が少ないイメージがありますが、瓦そばは日常的に食べられる料理にも関わらず色味がとてもきれいなのも特徴のひとつです。

材料は茶そば、牛肉、卵、小ネギ、海苔、レモンと紅葉おろしです。
茶そばとはそば粉に抹茶を練り込んだもので、深い緑色が特徴的な代わりそばの一種です。

基本的な作り方を紹介します。
まず瓦には油を塗って直火にかけておきます。その間に錦糸卵をつくっておきましょう。
牛肉(切り落とし)は醤油、砂糖、みりんなどで甘辛く炒めておきます。小ネギは小口に切り、レモンはスライスに。
熱々になった瓦に茹でた茶そばを広げるように乗せ、その上に牛肉や錦糸卵をバランスよく盛り付けます。
小ネギと手でちぎった海苔をちりばめたら、最後にレモンスライスと紅葉おろしをのせて完成です!

食べ方は麺つゆにつけていただきます。

カリッと香ばしいおそばが絶品

瓦そばの魅力は茶そばの食感です。

茹でたそばはツルツルとした食感が楽しめますが、アツアツの瓦で焼くことで焼き目はカリっと香ばしい仕上がりに。
そして甘辛く煮た牛肉が麺つゆと絡まって、コクのあるそばを楽しめます。

材料自体は特段手に入れにくいものはないのですが、料理用に瓦を使うご家庭はとても少ないと思います。
その場合はホットプレートやフライパンでも代用ができますが、山口県に行かれた際はぜひ本場の熱した瓦でいただく瓦そばを体験してみてくださいね。

瓦そばの栄養は?

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_30_yamaguchi.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_30_yamaguchi.html)

まずそばからは効率の良いエネルギー源である糖質を摂ることができますし、卵や牛肉からはタンパク質を摂取できます。
また茶そばに含まれている抹茶には、抗酸化作用を持つβ-カロテンやカテキンが含まれます。

たっぷりとのせた小ネギにはβ-カロテン、食物繊維などが含まれますし、さっぱりとした酸味を持つレモンにはエネルギー代謝に役立つクエン酸も含まれます。
そして何よりアツアツの瓦の上に乗っていることで食材の香りも立ちやすく、最後まで温かい状態でいただけるのも嬉しいところ。

五感をフルに使って楽しめる郷土料理といえるでしょう。

海の幸やブランド野菜にも注目

山口県には瓦そば以外にも名物がたくさんあります!

まず山口県といえばフグの名産地。山口県ではフグを「福」とかけて「ふく」と呼び、縁起物とされています。
その他にもクジラや甘鯛など鮮度の良い魚介も豊富に獲れます。

また、岩国蓮根もブランド野菜として有名です。
一般的に食べられているれんこんは、シャキシャキとして歯ざわりがよくあっさりとしたイメージですが、岩国蓮根はシャキシャキ感がありつつも糸を引くほどもっちりと濃厚な味わいが特徴です。

郷土菓子では外郎(ういろう)も人気です。
外郎といえば名古屋を思い浮かべますが、こちらは米粉を使って蒸したものでずっしりとした食感。一方山口県のものは、わらび粉を加えることでブルブルとした弾力ともちもちの食感が楽しめます。

観光にグルメにと魅力が詰まった山口県、観光に行かれる際はぜひ様々な角度から山口県を堪能してみてくださいね!

出典:農林水産省Webサイト 中国地方 山口県(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/yamaguchi.html)
出典:農林水産省Webサイト 瓦そば 山口県(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_30_yamaguchi.html)
出典:農林水産省Webサイト 外郎 山口県(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_25_yamaguchi.html)

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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