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2024.04.04

血液をサラサラにして病気予防。常備野菜の定番玉ねぎを徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

4月の旬野菜は“玉ねぎ”です。関連記事では、玉ねぎを美味しくいただくレシピもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

1年中手に入る玉ねぎのうち春のものが新玉ねぎ

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玉ねぎは、年間を通してスーパーなどで手に入りやすい身近な野菜。日持ちもするので食卓では欠かせない存在です。2月上旬の九州産が出回り始めてから産地が北へと移動していき、8月上旬から翌年の5月まで主な生産地は北海道です。黄玉ねぎと呼ばれる普通の玉ねぎは収穫後に乾燥させますが、新玉ねぎは収穫後すぐに出荷します。新玉ねぎは春先だけ出回る早生種のことで、やわらかく辛みが弱いので生食にも向いているとされています。

【栄養】刻む時に涙を流させるあの成分が血液をサラサラにしてくれる

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硫化アリル

玉ねぎを刻むと独特のツンとする香りがします。これは辛み成分の硫化アリルという硫黄化合物によるものです。硫化アリルは、ビタミンB1の吸収を高め、疲労回復などの効果を持続させる働きがあることがわかっています。ビタミンB1が不足すると、疲れやすくなったりイライラしやすくなったりします。硫化アリルとビタミンB1が結合し、長時間作用することで糖質が効率よくエネルギーに変えられるため、疲労回復やスタミナ増強につながります。

また、硫化アリルは血栓をできにくくして、血液をサラサラにする効果があると考えられています。動脈硬化予防、血流改善も期待できます。

硫化アリルは水溶性なので水にさらさずそのまま食べましょう。新玉ねぎは辛み成分が少ないので、水にさらさなくても美味しく食べられます。

ケルセチン

玉ねぎの薄い黄色の色素はケルセチンと呼ばれているもので、ビタミン様物質のビタミンPに含まれるポリフェノールの一種です。ケルセチンには抗酸化作用があり、細胞の酸化防止をしてくれるため老化防止に役立つと考えられています。

ケルセチンは玉ねぎの皮や、皮の近い部分に多く含まれています。茶色い皮をむいたあとに現れる緑色の部分は、食べにくい硬い部分だけを取り除いて調理することで、ケルセチンを捨てずに効率よく摂ることができます。

ケルセチンも水溶性なので水にさらすと成分が水に溶けてしまいます。生のまま食べるのがおすすめです。

カリウム

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。特筆すべきはナトリウムの排出を促す作用。日本人のカリウム摂取量は不足傾向にあります。積極的に摂ってほしい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。健康な人の場合、摂取量を増やすことによって血圧低下、脳卒中予防につながることが様々な実験や疫学調査によりわかってきています。

カリウムの1日の摂取の目安量は18歳以上の成人男性で2,500mg、成人女性で2,000mg、目標量は18歳以上の成人男性で3,000mg以上、成人女性で2,600mg以上です。玉ねぎにはカリウムが100gあたり150mg含まれています。豊富といえる量ではありませんが、使い勝手の良い食材ですので、毎食少しずつ取り入れることが可能です。

なお、カリウムもまた水溶性のため、塩もみしたり、水にさらしたりすると栄養が損なわれてしまいます。水にさらさなくても、切ってから15分ほどおくと辛みが抜けますので、そのままいただきましょう。

カルシウム

カルシウムは日本人に不足しがちな栄養素。体内への吸収率が悪い栄養素であることに加え、日本の伝統的な食事にはカルシウムを多く含む乳製品を使ったメニューが少ないことも不足の要因です。

玉ねぎには100gあたり17mgのカルシウムが含まれています。1日のカルシウム摂取の推奨量は、成人男性が700〜800mg、成人女性が600〜650mg。こちらも豊富といえる量ではありませんが、カルシウムのように不足しやすい栄養素は毎日少しずつ摂ることが大切です。カルシウムが多く含まれる他食材も摂りながら、レシピに取り入れやすい玉ねぎのカルシウムも上手に摂取していきましょう。

【選び方】ずっしりと重いものを選んで早めに食べ切る

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【美味しい玉ねぎの特徴】
・みずみずしく表面につやがある
・全体がかたくしまっている
・ずっしりと重く嫌なにおいがしない

カビなどがついておらず、重みのあるものが良質とされています。

新玉ねぎは、収穫後すぐに出荷します。そのため水分量が多く、傷むスピードも早いのが悪い点です。反面、水分が豊富なものが新鮮で美味とされていますので、購入後は早めに食べきりましょう。

嫌なにおいがするものは中が腐敗している可能性があり、注意が必要です。

【保存法】冷凍玉ねぎは使い勝手抜群

冷蔵保存する

玉ねぎは常温でも保存できますが、新玉ねぎは常温保存には向いていません。新玉ねぎは冷蔵もしくは冷凍保存がおすすめです。

そのまま冷蔵

保存の前に水洗いをする必要はありません。下記の手順で、野菜室に保存しましょう。

1. 汚れがひどい場合、ついている泥などを手で払うなどして落としてきれいにする。
2. 水気がある場合は乾燥させてペーパータオルや新聞紙で包む。
3. 袋に入れ、野菜室で保存する。

また、新玉ねぎは水分が多い野菜ですが、水分が抜けないようにと湿らせて保存すると、傷みやすくなってしまいます。ペーパータオルや新聞紙で包みましょう。水分を適度に吸収してくれるため、蒸れを防ぎ長持ちさせてくれる効果が期待できます。

切って冷蔵

新玉ねぎは辛みが少ないため、水にさらさなくても食べられます。水にさらすとカリウムやカルシウム、水溶性のビタミンが失われてしまいます。さらさないで食べるのが断然おすすめです。しかし、それでも辛さを感じる場合があるかもしれません。

玉ねぎは切ってから15分程すると辛み成分の一部がとんで食べやすくなります。生のまま食べる場合は、スライスして保存容器に入れておくとよいでしょう。ただし、傷みやすいので、できればその日のうちに食べ切ってください。

冷凍保存する

新玉ねぎを冷蔵庫で保存する場合も美味しさを保てるのは1週間ほどと考えましょう。それ以上長い期間保存したい場合は冷凍がおすすめです。

使い方が決まっていない場合は、冷凍庫にしまいやすい大きさに切ってラップをし、密閉容器に入れましょう。調理に使うときは、凍ったままでも包丁で切ることができます。

カットして冷凍

炒めもの、煮びたし、味噌汁、あえ物など、さまざまな料理に便利なのは薄切り。冷凍保存しておくと、使い勝手が抜群です。

薄切りにする際、繊維に沿って切るか、断ち切りにするか迷うこともあるかもしれません。繊維に沿って切ると、形が崩れにくく食感が残せます。断ち切りにすると繊維が壊れて柔らかな食感になります。

左:断ち切りにした玉ねぎ 右:繊維に沿って切った玉ねぎ

左:断ち切りにした玉ねぎ 右:繊維に沿って切った玉ねぎ

冷凍する場合、切り方によって、解凍のしやすさ、辛み、甘味に違いは出るのでしょうか。比較したところ、
大差はなく、調理状態もほぼ同じでした。玉ねぎの大きさにもよりますが、繊維を断つ切り方のほうが
・大きさがばらばらになる
・切りにくい
というデメリットがあるため、繊維に沿う切り方のほうが手軽で良いと感じました。

丸ごと冷凍

冷凍保存は長期間保存できるメリットがありますが、切って小分けにする手間が面倒だと感じる方もいらっしゃるでしょう。そこで小さな玉ねぎなら、まるごと冷凍しても大丈夫なのではないかと考えて試してみました。

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直径5〜6センチの小ぶりな玉ねぎをパックに詰め、冷凍庫に入れました。

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48時間冷凍してから半分に切ってみました。

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予想よりもサクサクと切ることができました。

あらかじめ切る手間がないこと、大きさをその時に決められること。使いたい分だけ切れること等のメリットがありました。

しかし、包丁や玉ねぎの大きさ、霜の付き具合などから滑って手を切る可能性も否定できません。切るときにすわりが良いように

・皮をむいてから天地を落としておく
・霜がついている場合は流水で少し解凍して滑らないようにする

などの工夫をすると切りやすくなるでしょう。

しかし、よく切れる包丁を使っていなかったり、料理慣れしていなかったりすると、思わぬけがにつながりかねません。便利でしたが、残念ながら初心者の方にはおすすめできない方法です。

【豆知識】冷凍玉ねぎを活用して栄養満点のもう1品

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薄切りした冷凍玉ねぎで、食卓にもう1品ほしい時にささっとできるレシピを紹介します。

【玉ねぎとわかめのポン酢あえ】
1. 乾燥わかめを水で戻す。
2. スライスした冷凍玉ねぎを流水で洗う。
3. 戻したわかめと玉ねぎを器に入れ、ポン酢をかけてあえる。ポン酢の量はお好みで。

玉ねぎは冷凍の状態によりますが、生で食べるため、食べる前に流水で玉ねぎを1回流すほうが衛生的です。

このレシピでは玉ねぎの栄養に加え、わかめを入れたことで食物繊維が含まれますし、食前に食べると血糖値上昇を緩やかにする効果も期待できます。あっという間にできるのでぜひお試しください。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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