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2022.05.20

新型コロナワクチン接種後には帯状疱疹が増える?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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コロナワクチンの副反応として発熱や頭痛などが多く見られますが、帯状疱疹が起きる場合もあるようです。

今回ご紹介するのは、Vaccines誌に、2021年9月11日発表されたレビューですが、新型コロナワクチンの接種後の有害事象として、報告されることのある帯状疱疹についてまとめたものです。

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ワクチン接種後に起きる帯状疱疹とは?

新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が、日本では2種のmRNAワクチンによって進められていて、今後4回目接種も対象を限定して準備されているようです。この2種類のmRNAワクチンに関しては、その短期の有効性はブースター接種を含めて確認されていて、その安全性についても現状大きな問題は生じていません。

ただ、他のワクチンではあまり報告のない有害事象が、新型コロナワクチン接種後には多いのでは、というような報告も散見され、そのうちの1つが今回ご紹介する帯状疱疹の発症です。

クリニックに関して言いますと、ワクチン接種からそれほど時間の経たない時期に、帯状疱疹を発症したケースが3例ほどありました。

ただ、帯状疱疹の発症自体最近増えているという印象はあり、当然ワクチン接種前に発症することも多いので、ワクチン接種後に増えているのかどうかと言う点については、クリニックレベルの事例では何とも言えないというのが実際です。

ある患者さんはワクチン接種後1週間程度で帯状疱疹を発症し、皮膚科を受診したところ「ああ、ワクチンを打ってから出たんでしょ。最近多いのよね」と言われたとのことでした。ただ、その皮膚科の先生がどのくらいの実証的なデータを元にして、そうした発言をされたのかは分かりません。

有意な帯状疱疹事例の増加は見られるか

今回のレビューは2021年の時点で、それまでの主だった臨床報告をまとめて解説したものです。解析の時点で12編の論文が発表されていて、91名の患者が新型コロナワクチン接種後に帯状疱疹を発症しています。

このうち13%に当たる12名は、関節リウマチなどの自己免疫疾患に罹患していて、10%に当たる9名は免疫抑制剤を使用していました。ワクチン接種後平均で5.8日で帯状疱疹は発症していました。

現状大規模な疫学データや臨床試験のレベルでは、有意な帯状疱疹事例の増加は見られていません。そうしたことはあり得るのですが、そのリスクを議論するほどの頻度ではないようです。

mRNAワクチンなど特定のワクチンのみで増加している、ということであればその意味合いは変わってきますが、今のところそうではなく、不活化ワクチンやウイルスベクターワクチンでも、同じように報告が見られています。

ただ、インフルエンザなど他のワクチンでは、殆どそうした報告は見られませんから、何らか新型コロナウイルスワクチンに関連する可能性はありそうです。

新型コロナワクチン接種により水痘ウイルスが再活性化?

それでは、仮にこうした現象があるとして、そのメカニズムはどのように考えられるのでしょうか?

通常帯状疱疹は、水痘ウイルスの再活性化により起こる、というように説明されます。そのため、ウイルスに対する細胞性免疫が、低下したり、免疫系全体が抑制されているような状況で、生じやすいと考えられます。

しかし、新型コロナウイルスワクチンを接種すると、細胞性免疫は賦活される筈ですから、それで帯状疱疹が増えるのは矛盾しているように思われます。

ここで1つの解釈としては、新型コロナワクチンで誘導される免疫は、帯状疱疹を抑制しているものとは異なるので、新型コロナウイルスに関わる免疫系は賦活化される一方で、それ以外の免疫系は一時的に抑制されるのではないか、という推論も成り立たないではありません。

ワクチン接種後1週間程度で生じるという経過は、その時点ではまだ免疫系の刺激は完成されておらず、一時的に細胞性免疫の低下が起こるのではという推測も出来ます。

ただ、いずれにしてもそれらの説明は推測の域を出ず、それを証明するようなデータが、基礎的なものであれ存在するということもないようです。

ワクチン接種後1週間は要注意

従って、現状この問題を重視する必要はないのですが、ワクチン接種後1週間程度の間に帯状疱疹が発症しやすいという可能性はあるので、ワクチンを接種される方は、その間には大事な予定を入れないなど注意はしておいた方が安心、という言い方は出来そうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36