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2021.06.17

モデルナ社ワクチン接種後におこる副反応とは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ファイザー社に並び、日本でも集団接種で使用されているモデルナ社の新型コロナウイルスワクチン。こちらに副反応はあるのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Dermatology誌に、2021年5月12被ウェブ掲載された、モデルナ社のインフルエンザワクチンに特徴的な、皮膚症状についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

モデルナ社ワクチンの特徴的な副反応とは?

モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンは、ファイザー・ビオンテック社と同じmRNAワクチンで、日本でも国主導の集団接種において、その使用が開始されています。

このワクチンの有効性や安全性は、ファイザー・ビオンテック社製ワクチンと、ほぼ同等と考えられていますが、モデルナのワクチンに比較的特徴的な副反応として、接種後少し遅れてから生じる、アレルギー性の皮膚反応が報告されています。

これは以前2021年3月のthe New England Journal of Medicine誌に、解説記事が発表されていて(※2)、それについては発表の時点でブログ記事にしています(※3)。

そこでは、こうした遅延性アレルギー反応は、初回接種の0.8%で報告されていて、そのうちの12例が解説されていました。

1週間程度経ってから、接種部周辺に皮疹が出る場合がある

今回の論文では、前述とは異なるアメリカの単独施設において、報告された16事例がまとめられています。

16事例のうち、81%に当たる13例は女性で、14名は白人種で2名はアジア人種です。16名のうち13名は医療従事者です。今回のモデルナワクチン接種以前にも、ワクチン接種後の皮疹が認められたのは1名のみでした。15名は初回接種時に病変が出現しています。

初回ワクチン接種後、中間値で7日後に、接種部位周辺にかゆみや痛みを伴う、限局性の皮疹が出現し、皮疹は中間値で5日間持続して改善しました。ただ、3週間持続したケースも認められました。

16名中2回目の接種後に同様の皮疹が出現したのは12名で、接種後中間値で2日で症状は出現していました。

つまり、1回目の接種では1週間ほどしてから皮疹が出現していますが、2回目の接種ではそれよりずっと早く症状が出現しています。皮膚の生検を施行すると、血管周囲に強いリンパ球と好酸球主体の炎症が認められ、遅延性過敏症反応に合致した所見でした。

典型的な事例の画像をお示しします。

副反応があるという認識は持っておくべき

このように、モデルナ社の新型コロナウイルスワクチン接種後に、初回接種後1週間程度経ってから、かゆみや痛みを伴うアレルギー性の湿疹が出現し、それが5日程度持続することがあります。
通常軽症であるので大きな問題はありませんが、時に3週間持続するような事例もあるので、そうした現象があるという認識は持っておく必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36